「全日制・通信制・定時制はわかるけど、単位制や学年制って?」似たような用語が多くて混乱する方も少なくないでしょう。単位制高校とはどんな学校を指すのでしょうか。今回は、単位制と学年制の違い、単位制の仕組み、メリットなどについて解説します。単位制と学年制、自分にはどちらが合っているのかをこの機会に考えてみましょう。
単位制高校とはどんな学校?
多くの通信制高校では「単位制」を採用しています。「単位制」は、学年の区分が無く、学習指導要領に定められた「必修科目」以外は、生徒が自らの興味・関心や進路希望に応じて履修する科目を選択でき、決められた単位数を修得すれば卒業できるというものです。近年では、一部の全日制や定時制の高校にも単位制が導入されてきています。
履修の自由度が高く、通信制高校では場所の制約もなく自分のペースで学習が進められるため、仕事がある・芸能活動をしている・スポーツ選手・海外との行き来が必要・不登校など、さまざまな事情により毎日学校へ通って夕方まで過ごすことが難しい生徒でも、無理なく卒業を目指せる環境です。
学年制高校とはどんな学校?
全日制高校で主に取り入れられているのが「学年制」です。1年生、2年生、3年生と学年ごとで区切られていて、年度初めに1つずつ進級します。中学校でも学年制がとられているため、学校のスタンダードなスタイルとして違和感なく想像できることでしょう。得られる高校卒業資格は学年制でも単位制でも同じです。
単位制高校のしくみについて
単位制の高校は、学年による縛りがなく、時間割の作成も授業の選択も自分でおこなうことができます
- 3年で卒業が可能
- 単位の積み重ねによって卒業資格を得られる
- 他の高校で修得した単位も、一定の条件下であれば卒業単位に加えることができる
学年制から単位制への転入・編入の場合、年度が終了していれば前の学校の単位をある程度引き継ぐことができます。学年制では出席日数と試験の点数などで進級が決まりますが、1年間の単位は学年末に付与されるため、年度途中で退学した場合は単位が修得できていません。したがって、転編入先にも引き継がれない点に注意が必要です。もし転入・編入を考えているのであれば、時期や引き継ぎできる単位数を計算し、学校側にも事前に問い合わせておくとよいでしょう。
(例)全日制高校を1年生の途中で退学した場合……単位は修得できていないため、通信制高校では1年次からの入学扱いとなります。
学年制高校のしくみについて
学年制では、出席日数とテストでの成績が判断基準となり、クリアできれば次の学年に進級、3年生の課程を修了すると卒業できます。各科目のカリキュラムには対面授業、長期休みでの課題、試験が組み込まれています。テストの点だけよくても、欠時数が多いと単位は与えられません。対面での授業が基本であるため、規定されている出席日数を満たすことが大切です。
単位制高校と学年制高校の違いとは?
単位制と学年制は何が違うのでしょうか。高校卒業資格を得るために必要な単位数を修得することは同じですが、単位を修得するまでの経緯が異なります。
単位制は必要単位を取れば卒業できる
単位制では、各科目、決められた回数のレポート提出とスクーリングへの出席、テストの成績によって単位が修得でき、必要単位数を満たせば卒業できます。「この科目を1年目に履修しないと進級できない」という縛りはなく、3年間で74単位を修得できれば問題ありません。
学年制は1年で決められた単位を取得しないと進級、卒業ができない
学年制では、出席日数とテストの成績が単位に影響します。1年の中で履修すべき科目が決まっており、その単位を修得できなければ進級できない、すなわち留年してしまいます。何か1科目でも取りこぼしてしまうと、せっかく修得した科目も翌年度また全部やり直しとなるのです。
単位制高校のメリット
では、ここからは単位制のメリットについて見ていきましょう。魅力的だと感じる場合は、通信制高校への進学が向いているかもしれません。
留年がない
そもそも単位制を採用する高校には「学年」という概念がないため、留年することはありません。(転入してきた際に前の学校の学年を引き継いで使うなど、高校生活での便宜上で学年や年次という言葉を使うことはあります。)
単位を取りこぼした科目があっても、修得できている単位はそのまま生かすことが可能です。次の年度で再びチャレンジし、余裕を持って卒業条件をクリアできるようにしておきましょう。
目標に合わせて時間割を決められる
学年制の高校では、学習教科と時間割は学校で決められていることがほとんどです。一方の単位制では、学年の壁を越えて幅広い教科・科目を選択できます。どの科目から取らなくてはならないという順序が多くないため、好きなように自分の学習スケジュールを組めるのが魅力です。
卒業までの単位修得シミュレーション例
修得予定単位数(1年次/2年次/3年次)計74単位 | |
3年で卒業予定 | 25単位/25単位/24単位 |
体調などを考慮して3年で卒業予定 | 18単位/26単位/30単位 |
大学受験を重視 | 30単位/30単位/14単位 |
このように、卒業までの単位の取り方においても、さまざまな考え方ができます。1年間で修得できる単位数には上限があり、学校によって異なります。
ID学園では2年次、3年次の履修上限を40単位としています。仮に1年次に体調を崩し履修が0単位だったとしても、2年次、3年次で巻き返せば同学年の生徒と同様に3年間で卒業することが可能です。
3年でスムーズに卒業を目指すなら年間25単位程度をベースに、1年目からのスタートダッシュが難しそうなら後半で頑張り、受験勉強により多くの時間をかけたいなら、取れるだけの単位を先に取っておくというのもよいかもしれません。
毎日1時間目から6時間目まで授業を受ける必要はなく、苦手分野に多くの時間を割けるようにすることも可能です。自由に自分でスケジューリングできる分、目的をしっかり持ってコツコツ学習を進めていく意志の強さと継続性が必要でもあります。
進路に合わせて教科選択ができる
高校卒業後に希望する進路がある場合は、それに合わせて科目を選ぶとよいでしょう。理系大学への進学を考えているなら、受験に必要のない科目を減らし、理数科目の授業を多く取ることも可能です。興味がある分野を積極的に学んでおくと、結果として自分自身のスキルアップにつながります。大学や専門学校への進学を視野に入れた学校も多く、自分の目指す将来に向けて専門分野の勉強を先取りできるのが単位制の良いところです。
学校の授業といえば、一人の先生に対し教室でクラス全員で受けるのが一般的なイメージですが、単位制の高校では科目の選択肢が多いため、一つひとつの授業が少人数制になります。大人数で授業を受けるのが苦痛という生徒にとっては、少人数制のスタイルは質問もしやすく、授業に集中できるでしょう。
転入・編入から1~2年で卒業も可能
高校卒業資格を得る条件として「3年以上の在籍」があることから、高校に新入学して2年で卒業するのは不可能です。しかし、学年制から単位制へ転入した場合、引き継ぎ可能な単位数が一定数以上あれば、残る単位のみを修得し、転入から1~2年で同級生と同じタイミングで卒業できます。編入も同様、前籍校での在籍日数を踏まえて計算し3年以上、74単位に達せば卒業ができます。
単位制高校のまとめ
単位制は、自分のペースで学習できるのが大きなメリットです。学年制に比べて自由になる時間が多いため、学習と両立して仕事や趣味に打ち込めます。さまざまな理由で毎日の登校が難しいという生徒には魅力的でしょう。ただし、レポートの作成、単位計算まで自己管理しながら進めていく必要があります。登校しないからといって不規則な毎日にならないよう、生活リズムを意識しながら過ごしましょう。
私立の通信制高校では、学習面はもちろん進路やメンタル面に関するサポート体制が整っている学校が多いです。疑問や不安は一人で抱え込まず、先生やスクールカウンセラーに頼りながら充実した毎日を送ってくださいね。自分らしく過ごすため、そして将来の目標を実現させるための高校選びを応援しています!