「通信制高校の卒業率ってどのくらい?」
真剣に高校卒業を目指す生徒なら誰でも不安になりますよね。
仕事をしながらでも、大人でも通うことができる通信制高校。
勉強が得意じゃなくても卒業できるのか、自分でも大丈夫なのか気になるのではないでしょうか。
今回は、通信制高校の卒業率に着目しながら、卒業が難しい場合の理由についても掘り下げていきます。入学前に不安を少しでも取り除いておきましょう!
目次
- 通信制高校の卒業率について
- 全日制高校と通信制高校の卒業率の違い
- 通信制高校の公立と私立でも卒業率に違いがある
- 通信制高校を卒業できない理由
- 通信制高校のネットコースは卒業率が高い
- 通信制高校の卒業率のまとめ
通信制高校の卒業率について
通信制高校は、転入生や編入生を含め毎年多くの生徒が入学してきます。
卒業までは3〜4年が一般的であるものの、一定年数在籍すれば卒業できるというわけではありません。
そのため、全日制同様の卒業率を出すのが難しいといわれています。
通信制高校においては、「在籍卒業率(在籍している生徒数に対する卒業生の割合)」という考え方を元に、比較する方法があります。
仮に在籍卒業率が33.3%なら、全生徒の約3分の1 =3年生の大半が卒業したと考えられるのです。
全日制高校と通信制高校の卒業率の違い
全日制に比べ通学日数が少ない通信制では、卒業しやすい印象があるかもしれません。
全日制と通信制では学び方も評価の仕方も異なるため、同じ尺度で卒業の難易度をはかることはできませんが、いずれもコツコツ学習を進めていれば卒業できるのは同じです。
実際の卒業率と傾向を見ていきましょう。
全日制
文部科学省による「学校基本調査」をもとに、2018年4月入学、2021年3月卒業の場合において計算すると、全日制高校の卒業率は約94.3%でした。
過去の年度から比較的安定して高い卒業率となっています。
全日制では学年ごとに決められたカリキュラムがあります。
ただし、出席日数と試験の成績が基準を満たせなければ留年となってしまい、もう1年同じ学習をやり直す必要があるという部分が通信制とは大きく異なります。
通信制
では、通信制高校ではどうでしょうか。
2020年度のデータをもとに在籍卒業率を計算してみます。
2020年度 | 通信制高校全体 | 公立 | 私立 |
在籍者数 | 206,948人 | 55,427人 | 151,521人 |
年度間卒業者数 | 64,893人 | 8,709人 | 56,184人 |
在籍卒業率 | 31.3% | 15.7% | 37.0% |
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00003.htm
通信制での在籍卒業率は33.1%で、在籍者数全体の3分の1程度です。
3年以上の在籍年数の生徒を含むとしても、全日制同様に高い割合で卒業できていると考えられます。
通信制高校の公立と私立でも卒業率に違いがある
通信制高校にも公立と私立があり、卒業においても実は大きな差があります。
先に説明した通信制全体の在籍卒
業率は31.3%でしたが、さらに細かく公立と私立に分けると数字に開きが出てきます。私立の在籍卒業率が37.0%であるのに対し、公立ではわずか15.7%です。
2020年度 | 通信制高校全体 | 公立 | 私立 |
退学者数 | 10,220人 | 4,350人 | 5,870人 |
年度間退学率 | 4.9% | 7.8% | 3.8% |
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00003.htm
さらに、年度間での退学者数に焦点を当てると、私立の退学率は3.8%であるのに対し、公立では7.8%とやや高い割合です。
公立の通信制高校へ入学しても、退学者数が私立より多く、卒業率も低いという背景には何があるのでしょうか。
公立の通信制高校は地方自治体が運営しているため学費が安く、その地域の生徒に限定して受け入れています。
学校に頼らずに、自分のことは自分でするという仕組みなため、より自主性が求められる環境だと理解しておきましょう。
私立では学習サポート、進路サポートなどの手厚さに加え、サポート校との連携など生徒一人ひとりが卒業できるよう対応してくれる環境が整えられています。
費用は私立の方がかかるものの、その分受けられるサポートも大きいです。
無理なく卒業するために自分には何が必要かをよく考えて学校選びをしましょう。
通信制高校を卒業できない理由
通信制高校では新入学の他に、編入や他校からの転入を数多く受け入れています。
さまざまな事情を持つ生徒に高校卒業資格を取ってもらいたいという学校の思いとは裏腹に、残念ながら卒業できず中途退学してしまう生徒もいるということです。
自宅学習を計画通りにできない
スクーリングに行けない
レポートを提出できない
学習計画を組めないとなかなか卒業できない
以上の4つが、卒業のネックとなり得る主な理由です。
それぞれ詳しく説明していきます。
自宅学習を計画通りにできない
通信制高校では、毎日通学する必要がないため自宅学習が基本です。
自分で時間割を組み、学習スケジュールと目指すべきゴールを設定するのが大切で、その通りにコツコツと学習を続けていく継続性が求められます。
自宅で学習できるのは自由度が高い反面、プライベートとのメリハリがつけにくくもあります。
学習に集中できる環境づくりと生活リズムを整える意識が必要です。
「今日は疲れたから明日やろう」「今度まとめてやれば大丈夫」という甘えが続くと、レポートをいくつも溜める危険性があり、結果として卒業が遠のいてしまいます。
スクーリングに行けない
スクーリングは全日制のように週5日、週1回通学というところもあれば、年に1回宿泊型や通学型で数日参加すればよいという場合もあり、学校によってさまざまです。
通学に抵抗があり、通信制を選んだという生徒も多いでしょう。
実際、オンライン中心で普段通学しなくてもよい学校の場合でも、規定時間数分のスクーリングへの参加が単位修得の必須条件です。
スクーリングを避けていては卒業することはできません。
学校選びの時点でスクーリングの回数やタイプを把握し、自分が参加できそうか見極めておくことが大切です。
レポートを提出できない
レポートは通信制高校での学習において、重要なウエイトを占めます。
各教科で決められた回数のレポート提出が義務づけられており、設けられた期限を守るのは必須です。
レポートといっても、教科書を見ながら取り組めば解ける難易度で、論文のような形式ではなく穴埋め問題のようなものが一般的です。
単位の修得には「単位認定試験」というテストでの合格が必要ですが、レポート提出に不備があったりスクーリングに参加できていないとそもそもテストを受けられず、単位を落としてしまいます。
学習計画を組めないと卒業できない
学校側がカリキュラムも時間割も決めてくれる全日制とは異なり、通信制では自分で組んだ学習計画が卒業への大切な道筋となります。
無理なく受けられる授業を選んでいるか、参加可能なスクーリングか、履修科目は適切か、
自分自身にかかる責任は大きくなります。
履修者科目や修得単位数の計算を学校側が行ってくれる学校もあるため、年間スケジュールを考える時点で挫折してしまう場合があります。
通信制高校のネットコースは卒業率が高い
通信制高校には大きく分けて週1日からの通学コースと、通学は極力少なくオンライン中心のネットコースが設けられています。
ネットコースでは3年間で卒業できるよう事前にカリキュラムが組まれている学校があり、生徒にとっては取り組みやすい環境といえます。卒業率90%以上という場合も少なくありません。
ネットコースでもスクーリングへの参加は必要なため、まったく通学がないわけではありませんが、自宅学習がほとんどです。
自分のペースで学習できるという面ではとても魅力的といえるでしょう。
オンライン中心だからこそのメリットをいくつかご紹介します。
授業の動画配信で自分のタイミングで学習できる
オンラインでの授業は動画配信されることが多く、決まった授業時間以外でも自分の好きなときに視聴できます。
タイミングを選べるだけでなく何度でも授業を受けられるというのが、苦手の克服やレポート作成の大きな助けとなるはずです。
また、授業をライブ配信している学校もあるため、通学型の生徒と同じタイムスケジュールを希望する生徒は対応している学校を選ぶとより安心して学習が進められます。
レポートがオンラインで提出できる
通信制高校のレポートは、紙の問題に書き込んで郵送するスタイルが一般的でした。
郵送することが手間となり、レポートの提出が滞ってしまったという方もいるのではないでしょうか。
レポートの提出スタイルについても学校選びの際に意識して調べておくと、入学してから焦らずに済むでしょう。
オンラインだと気楽に授業に参加できる
オンラインの場合、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットでも授業参加が可能です。
教室で大勢のクラスメイトとともに受ける授業はどうしても落ち着かないという生徒も多いはず。
仕事や育児の空いた時間に集中して授業が受けられるのは、学習の効率化につながります。
スポーツや芸能活動で忙しい、あるいは夢に向かって打ち込みたいという場合でも、通学に縛られないコースなら無理なく両立できます。
学校からのサポートが受けやすい
時間割を組んで効率よく単位を修得できるよう学習計画を立てるといっても、なかなか一人でいきなりはできないものです。
その不安を解消すべく、通学コースでなくても経験豊富な先生が生徒一人ひとりにあわせて計画時点からサポートしてくれます。ぜひ積極的に相談してみましょう。
私立の通信制高校であれば、学習サポートおよび進学サポートをオンラインでも受けられる場合が多いです。
授業で不明点があっても、チャットなどのオンラインツールですぐに質問できるのが嬉しいところ。
自宅でも授業に遅れをとらずに理解を深められます。
オンライン自習などを使って友達と交流しながら自習ができる
「オンラインばかりだと、同じ学校の仲間達との交流がないのでは?」「孤独じゃないの?」と思うかもしれません。
学校によっては、チャットなどを通じて生徒同士が交流できることがあります。
ここでは、ID学園高等学校の「通信型 オンライン学習コース」のサポートの一部を例としてご紹介します。
オンラインホームルーム
通信型でも、毎日オンラインでホームルームが行われています。
参加は自由ですが、朝のホームルームに参加することで一日の生活リズムが整うという声が多く得られています。
オンライン上で友達に会えるので、学習のモチベーションも上がります。
オンラインカウンセリング
担任はもちろん、スクールカウンセラーや養護教諭が生徒の不安解消のためカウンセリングをおこなっています。
学習面以外でも気軽に話せる心の支えとして、力強い存在です。
Webサービスを使った自主学習
自主学習型のWebサービス「スタディサプリ」「スタディサプリEnglish」や「NHK高校講座」、ソーシャル経済メディアアプリケーションツール「NewsPicks」を活用しています。
自分のペースで学習を進めると同時に、オンライン上で他者との交流も生まれるため、学習意欲を高め合いながら自習できます。
通信制高校の卒業率のまとめ
通信制高校の卒業率は一概に言えず、公立・私立、もっと言えば学校によって大きく異なる部分です。
自主学習を継続できず、残念ながら退学してしまう生徒もいます。
数字だけに一喜一憂せず、自分だったら無理なく続けられそうかどうか考えることが大切です。
高校卒業を実現するためには、次のようなポイントを事前に意識しておくとよいでしょう。
- 自宅学習を進められる環境、生活リズムを整える
- 自分に合ったスクーリングの学校を選択する
- レポートは期限までに確実に提出する
- 無理のない学習スケジュールを組む
- 学習計画やレポート作成に対してのサポートしてくれる学校もある
通信制に通いたい生徒たちは、自宅学習が得意だったり、全日制のように毎日通った方が学習に集中できたりと一人ひとり異なる個性を持っています。
そのため、卒業への鍵となるのは学校選びです。
将来の希望や譲れない部分を前提としながら、学校見学などへ足を運び、できる限り自分で学校の雰囲気を体感することをおすすめします。