文部科学省では不登校の定義を、「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因により、登校しないあるいはしたくともできない状況にある年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの」としています。
引用元:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
実際に不登校をきっかけに通信制高校へ転入/編入される生徒さんもたくさんいらっしゃいますが、通信制高校であっても卒業するためには、学習計画と自己管理が大切です。
自分のペースで学習を進められる反面、学習を怠っても咎められることはないため、モチベーションが下がった際には気持ちを立て直すのが大変なことも事実です。
卒業まで挫折せずにコツコツ学習を続けられるか不安な生徒も多いのではないでしょうか。
Yahoo!知恵袋などのインターネット掲示板でも、通信制高校に通えない悩みがいくつも投稿されています。
この記事では、不登校から通信制高校への転編入と、転編入後も挫折せずに卒業するまでの方法を紹介しています。
目次
不登校から通信制高校への転入
通信制高校は、一般的に全日制・定時制高校などと区別され、毎日決められた時間に登校する必要のない高校です。登校日数は学校によって様々で、週5日登校できる通信制高校もあれば、年に数回のスクーリングのみ参加で良い場合などもあります。
登校しなくてはいけないと言っても、全日制高校からみると少ない登校日数で卒業できることが多いので、全日制高校で登校が登校が難しかった方でも通いやすい仕組みになっているといっていいでしょう。
不登校の編入・転入割合
引用元:https://www.mext.go.jp/content/20200115-mxt_koukou01-000004175_5.pdf
文部科学省の調査によると、通信制高校に途中入学する生徒は全体のおよそ3割ほどというデータがあります。途中入学者はほとんどの場合、元々在籍していた高校を不登校など何らかの理由で退学し、編入・転入する生徒になるため、通信制高校側も受け入れの体制を整えています。
不登校だった生徒への心理的サポートはもちろん、編入・転入以前の高校で取得していた単位を引き継ぐことができる場合もあります。また、出席日数の多い通信制高校から、比較的登校の少ない通信制高校に移るケースもあります。
令和4年度の全国の高校生の人数は一学年およそ100万人ほどで、通信制高校への編入者は平成29年からの3年間で毎年2万人以上います。飽くまでも平均の数値にはなりますが、高校の1学年につき1人か2人は通信制高校への途中入学をしたと計算することができます。
通信制高校にも通えない悩みの理由とは
通信制高校に在籍する生徒たちは、一人ひとりさまざまな理由によって全日制ではなく通信制を選択しています。
中には不登校や心身の不調などで、中学校時代から学校にうまく通えなかったという生徒もいます。
【令和2年度 中途退学者数】
全日制高校普通科 | 通信制高校 | |
中途退学者数 | 14,946人 | 7,621人 |
中途退学者数 | 0.7% | 3.7% |
https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
文部科学省の調査によると、2020年度における通信制高校を中退した割合は3.7%。
この数字は全日制普通科の中退率の約5倍にも上ります。
通信制高校は学校によって特色が異なり、卒業率にも大きな幅があります。
そのため、卒業率50%以下という学校がある一方で、手厚いサポートにより卒業率90%という学校も存在するのが実情です。
自分なりに考えた末の通信制への進学ですが、通信制高校でも過ごしにくさ、通いにくさという問題点を抱える生徒は少なくありません。
そこにはどんな理由があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
学校生活・学業不適応
挫折理由で多いのは、学校に馴染めなかった、というものです。
原因の一つとして、通信制高校選びの際に親に任せてしまったり、学校見学に行かなかったりということが挙げられます。
それでは入学してから「思っていた学校と違った」と感じても仕方ありません。
通信制高校でせっかく再スタートを切ろうとしているのに、モチベーションが低下してしまうでしょう。
通信制高校にはさまざまな事情を抱えた生徒が多く通っており、全日制に比べ学校側も生徒の特性を理解しようとしてくれています。
しかし、幅広い年齢層や個性溢れる生徒の中で、これまでとの環境の変化に過ごしにくさを感じてしまう可能性もあります。
オンライン中心のコースであれば、あまり人間関係を気にしながら過ごす必要はありませんが、通学コースにおいては登校が苦痛となる場合があるかもしれません。
就職を希望
通信制高校は、全日制のように朝から夕方まで学校で授業を受ける必要はありません。
通学しても午前だけ、あるいは午後だけの授業を増せるという調整も可能です。
そのため、空いた時間にアルバイトをしている生徒もいます。
アルバイトは経済的な余裕を生むのと同時に社会経験としても大切な機会ですが、アルバイトで実績を残すうちにそのまま就職した方よいと判断し、高校卒業資格の必要性を感じなくなるという場合もあるようです。
別の高校への入学を希望
通信制高校から別の通信制高校へ転入を希望するケースもありますが、実際なんの問題もありません。
転入の理由は個人によって異なり、最初に通信制高校を調べたときと実際に入学してからでは、見える景色も得られる情報も違ってきます。
「こんな学校もあるんだ」「あの学校なら、就職に有利になる資格が取れるんだ」などと後から他校に興味を持つこともあるでしょう。
その気持ちが大きくなれば、今の学校で続けるモチベーションは低くなります。
ただし、転入を何度も繰り返しては時間のロスと経済的な負担が大きくなっていきます。
転入を考えるならば、次こそ自分の納得いく学校選びが大切です。
病気・けが
起立性調節障害などで学校への通学が困難になり、不登校となってしまう方も少なくないでしょう。
持病を抱えていたり、心身の不調で長期療養が必要になったりする場合、通信制であってもなかなか通学できず、学習時間を確保できないという問題が生じます。
無理をしないのが一番ですが、休養していると卒業が遠のいてしまうため、対策が必要です。
経済的理由
経済的な理由で通信制高校を中退する生徒もいます。
通信制高校の学費は一律で高額というわけではありませんが、学校によって幅がある部分であり、公立と私立でも大きく異なります。
また、自主学習がベースとなる通信制では、学習を効率よく進めるために学校と並行してサポート校へ通う生徒もいます。
その場合、サポート校分の学費が上乗せとなるため、経済的な負担は膨らむこととなるのです。
通信制高校では、単位修得のペースによっては3年で卒業できず、4年・5年と卒業時期が延びることもあり得ます。
留年がないため自分のペースで無理なく卒業を目指せるのはメリットですが、費用面では在籍する年数分の負担が増えてしまいます。
学業不振
自分で学習を進められずに卒業が遠のいてしまうこともあるでしょう。
- 学習意欲がわかない
- 仕事と学校を両立させられない
- 体調不良により思ったように学習できない
これらの問題が解決できなければ、学習を続けるのは難しいです。
通信制高校の勉強の難易度は、全日制に比べ高くありません。
レポートも、教科書を見ながらであれば解けるものがほとんどです。
しかし、レポートには提出期限があり、各教科のレポートを継続して提出していないと、単位修得の要となる単位認定試験を受けることができません。
レポート作成を計画的に進められずに溜めてしまった、提出期限を守れなかったという場合は、通信制高校を続けるためのモチベーションがなくなる可能性があります。
通信制高校が辛いと感じた時の対処法
通信制高校に通い続けることを挫折したくなる方もいるようですが、対処法はあります。
無理に今の学校に居続ける必要はありません。晴れ晴れした気持ちで自分らしい高校生活を送るには、心機一転環境を変える方がよいでしょう。
ただし、「つらい=辞める」だけでなく、卒業を諦めないためにもいくつかの選択肢を知っておくことが大切です。
他の通信制高校への転入を検討する
通信制高校といってもその特色は学校によって大きく異なります。
「どこへ行っても、どうせ同じことを学ぶんでしょ?」という考えは捨てましょう。
通信制高校は近年で大きく変化を遂げ、修得単位数こそ同じですが、専門コースを持つ学校が増えています。
スポーツ・声優・音楽・美容・調理・デザインなど幅広い分野のコースがあり、自分が興味ある分野を学ぶことと高校卒業を目指すことの両方が可能なのです。
専門学校で学ぶ内容と資格取得の準備を先取りでき、職種によっては全日制や他の通信制の生徒よりも早く社会に出られるメリットがあります。
学習計画を立ててその通り進めることが難しいなら、学習サポートのしっかりした学校を選ぶとよいでしょう。
自宅でやる気が出ないなら、全日制のように週に5日通学できる学校もあります。
大切なのは、学校の雰囲気を自分自身の目で確かめること。
今の学校が辛くても卒業自体を諦めず、転入を視野に入れて学校探しをしてみてはどうでしょうか。
休学する
とりあえずの手段として、まずは休学するのも一つの方法です。
具体的な結論を急がずに、ゆっくり休みながら自分の今後について考えることで見えてくるものがあるかもしれません。
病気やけがで長期間の休養が必要な場合は基本的には休学の選択肢になるでしょう。冒頭で述べたように、身体的なけがや病気での休養期間は不登校とは言わないことが一般的なので、焦らず回復を優先することがおすすめです。
もちろん、その他の理由でも休学を選択することもできますが、具体的な計画を立てて、休学の期間中に復学までのスケジュールや進路方針を固められるといいでしょう。
退学する
通信制高校でのコース変更・休学・他の学校への転入、これらの選択肢でも対処できない場合は退学するのも仕方ないでしょう。
学校へ通えない状態が続いているのに在籍だけしているのは、学費がかかり続けるという面でもおすすめできません。
高校をやめるのは取り返しのつかないことのように感じますが、いずれ他の通信制高校へ編入という形でまた再スタートを切ることも可能です。
編入時には修得した単位を引き継げるため、現状で可能な限り、単位は修得しておくとよいでしょう。
通学が辛いならオンラインの通信制高校に変える
私立の通信制高校はコース設定が豊富で、通学頻度を自分で選べる学校が多いです。
週1日〜5日で定期的な通学日を設定すると生活リズムを整えやすいですが、中には週1日の通学も苦痛という方がいるかもしれません。
スクーリングなしで通信制高校を卒業することはできませんが、月に何度も通学しなくとも、年に1回数日の宿泊型や通い型のスクーリングで済む学校もあります。
通学の必要がなくなれば、自宅でオンライン中心の学習を進められます。
他の生徒と頻繁に顔を合わせることもなく、自分のペースで過ごせるはずです。
在学中にコース変更ができる学校もあるので、まずは相談してみましょう。
高卒認定を受ける
高校卒業が難しい場合、進学を考えているならば高卒認定を受けるという選択肢があります。
高卒認定は、高校卒業と同等の学力があると認められる資格ですが、高校卒業資格ではありません。
大学や専門学校を受験するための資格であり、そのままだと最終学歴は中卒となります。
目の前の辛さや不安から逃げ出したい気持ちも理解できますが、高卒認定を取得した後に就職するのか、大学や専門学校への進学するのか、自分の目指す将来をできる限りイメージして決断しましょう。
挫折を予防するID学園高等学校の体制
ID学園高等学校では毎年多くの生徒を受け入れています。卒業までの過程で挫折しないようにどのようなサポートをおこなっているのか、ここでは一部をご紹介します。
進学のサポート体制もバッチリ
通信制高校へ通う目的は、高校卒業資格の取得だけでなく大学進学という場合も多いです。
ID学園では、進学のためのサポート体制を整えています。
学習面で不安がある場合は、中学校の復習授業もあるため、過去の振り返りから基礎学力を高めることが可能です。
それと同時に大学受験を意識したハイレベルな授業も展開しており、自分の学力と目標に合わせた学習ができます。
進路については、系列の全日制高校を持つ強みを活用し、各種進路情報の提供や面談を通して、生徒一人ひとりの個性が活きた進学指導をおこなっています。
希望者にはスクールカウンセラーによるカウンセリングもありメンタル面のサポートがあります。
通信制で考えがちな「自分ひとりで頑張らなくては」という孤独感を払拭し、先生と生徒が二人三脚で学習に取り組める環境です。
オンライン学習コースなら通学が少ない
ID学園高等学校は主に通学型と通信型に分かれています。
オンライン学習コースの場合、定期的に通学する必要はなく、いつでもどこでも自分のペースで学習可能です。
- 年6日程度のスクーリング
- 年6回のレポート提出
- 年1回の単位認定試験
- 年10単位時間の特別活動(行事参加)
以上を満たすことで単位を修得できます。
提出必須のレポートは解説動画が録画されておりいつでも視聴できます。
不登校経験があったり、学校での人間関係に問題を抱えていた生徒にとっては精神的にも負担の少ない高校生活を送ることができるはずです。
通信制高校にも通えないと思った時の対処法まとめ
通信制高校の特色は実にさまざまです。
自分のペースで通学頻度を決め、無理なく高校卒業を目指すことができるのが最大のメリットで、大学進学も不可能ではありません。
年齢層が幅広く、複雑な事情を持った生徒が多い分、他人と比べることなく、プレッシャーの少ない高校生活を送れるのも魅力の一つです。
通信制高校を選ぶ際、インターネットで多くの情報を得られますが、人気の学校が自分にとって魅力的とは限りません。
オープンキャンパスや学校説明会などにできるだけ参加し、学校の雰囲気を体感しておくのがおすすめです。
もし、現在通う通信制高校に不安があっても、自分に合った学校は必ず見つかるはずです。
目先の問題だけでなく、自分の目指す将来をイメージし、納得できる選択をしていきましょう。