お子様から「学校に行きたくない」と聞かされると、心配や不安が押し寄せてくることでしょう。急に学校へ行きたがらなくなった理由は何なのか、もしかしてイジメに遭っているのではないか、そもそも親としてどのように対応すべきなのか。
これらの問題に正面から取り組むことは、多くの保護者様にとって大きな挑戦かと思います。本記事では、そんな悩める親御さんを支援するために、学校に行きたがらない子供への適切な接し方や、考えられる原因を詳しく解説し、子供が抱えるかもしれない問題への理解を深めます。さらに、子供の心に寄り添いながらも効果的な対応をしていくための具体的な方法をご紹介することで、家庭内での信頼関係を保ちつつ、問題解決へと導く手助けをします。
目次
学校に行きたがらない子供の現状
現状、日本に「不登校の生徒」はどれほどいるのでしょうか。文部科学省による報告書を参考にその数を分析した後に、「学校に行きたがらない児童生徒」の数を推定していきます。
令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
図1
図2
図1は文部科学省により発行されている、令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果についてより引用した、不登校児童生徒数の推移のグラフです。
日本の不登校状態にある児童生徒数は10年連続で増加しており、令和4年度の調査では過去最多人数が不登校の状態にあると記録されました。
令和2年から4年(2020年~2022年)で爆発的に不登校の生徒数が増加していることが分かるかと思います。小中学校における不登校生の割合は32人に1人と、1クラスに1人はいる計算になります。
不登校生の割合を30年前と比較すると、小学校で0.2%から3.2%と、16倍に、中学校で1%から6.0%と6倍に増えていることが分かります。
コロナ禍による一斉休校など生活環境の変化で、多くの子どもが心身に不調をきたしたことが大きな要因と言われています。
ここまでで紹介したのは、あくまで「不登校の児童生徒」であるため、「学校に行きたがらない児童生徒」はそれよりも多くなると思われます。我慢しながら通学しているお子様もいたり、サポート団体が対応してくれたりするためです。
学校に行きたがらないこと自体は悪いことではありません。以下では、お子様から「学校に行きたくない」と伝えられた親御様向けに、これだけは避けるべき対応を紹介していきます。
親が避けるべき5つの対応
学校に行かないことを責める
学校に行きたくないという子供の声に対し、「学校に行かないことを責める」行動は、親として避けるべきです。子供が学校に行きたがらないとき、それはただの「わがまま」や「甘え」とは異なります。多くの場合、子供は言葉では表現しづらいほどのストレスや不安を抱えています。彼らは、その重圧の下で行動することが困難になっているのです。
「みんなはちゃんと行っているのに、なぜ君は行かないの?」というような言葉は、子供にとってさらなるストレスをもたらす可能性があります。このように頭ごなしに責め立てることは、子供が抱える問題をさらに複雑にし、彼らの心に深い傷を残すことにもなりかねません。また、親に対する不信感を生み出し、「親は自分のことを理解してくれない」と感じさせてしまうことで、親子関係の断絶を招く原因ともなります。
子供が学校に行きたくないと訴えるときは、まずはその気持ちを受け止め、安心できる環境を提供することが重要です。無理に学校に行かせようとするのではなく、子供の感情に耳を傾け、その背景にある問題や感情を理解しようとする姿勢が求められます。
理由をしつこく聞く
親が「理由をしつこく聞く」ことは、学校に行きたくない子供にとって、さらなるプレッシャーとなる行為です。多くの子供は、なぜ学校に行きたくないのかを明確に説明できない場合があります。子供自身も理由がわからないため、しつこく理由を問い詰められると、困惑し、ストレスを感じるようになってしまいます。
このような状況で親が不機嫌になったり、失望した様子を見せたりすると、子供は「自分が悪いのかもしれない」と自己責任を感じてしまいます。これは子供の自尊心を損ね、心理的な負担を増大させる結果につながります。また、親が怒ったり落胆したりする姿を見ることで、子供は親を失望させてしまったと感じ、さらに自己否定の感情に苛まれることになります。
そのため、子供が学校に行きたくないと言ったときは、彼らが自らの感情や状況を理解し、整理するために時間を与えることが重要です。親は、子供が話したいと感じるまで待つことが求められます。話を聞く準備ができていることを伝え、安心感を提供することで、子供は自分の感情を開示しやすくなるでしょう。
問題が明らかになった際には、子供が自分のペースで解決策を見つけられるようサポートする姿勢が大切になります。問題の根本的な解決を急がず、子供が自信を持って再び学校生活を送れるよう温かく見守ることが、最終的には子供の自立と成長に繋がることでしょう。
軽く聞き流す
軽く聞き流して、真剣に受け止めようとしないことも、お子様を深く傷つけてしまう行動です。仕事があったり他の兄弟の世話で忙しいと、保護者の方も面倒に思ってしまうことがあるかもしれません。お子様が勇気をもって気持ちを一生懸命訴えているのに、本気で取り合ってもらえないと、絶望的な気持ちになってしまうことでしょう。
無理やり学校に連れていく
お子様が「学校行きたくない」と言ったら、無理に学校に連れて行くのは避けましょう。無理強いは子どもの心を傷つけ、回復を遅らせる可能性があります。子どもが学校に行けない理由をはっきり口にできない場合でも、無理に送り出すのはやめましょう。
学校に復帰することに固執する
また、どうにかして学校に復帰させようとこだわりすぎるのもNGです。心身が不安定な状態で学校に行ったとしても、かえって心理的に追い込まれたり、体調が悪化したりしかねません。
最も重要なのは、お子様を学校に通わせることではなく、お子様の心身の健康であることを忘れないでください。
近年は、フリースクールなど、少人数のクラスで、不登校のお子様でも安心して通える学習環境も整ってきています。現在の学校に固執する必要はないかもしれません。
学校に行きたがらない子供に対する親の5つの建設的な対応
ここでは、学校に行きたがらない子供に対して、親が取ると良い行動を5つ紹介します。お子様の状況に応じて是非取り入れてみてください。
感謝を伝える
子どもが学校に行きたくないときは、まずはその気持ちをしっかり受け止めてあげましょう。その理由が何であれ、子どもが自分の気持ちを伝えてくれたことに感謝し、「ありがとう」と伝えることで、子どもは少し安心するでしょう。そこからさらに奥深くにある根本的な悩みの理由も聞き出せるかもしれません。お子様が本心で話せるように、まずは「ありがとう」を忘れずに言いましょう。
「休んでもいい」と安心感を与える
子どもの気持ちを理解し、彼らが抱える不安や心配を重く受け止めることが大切です。勇気を持って、「今日は休んでもいいよ」と伝えることが必要です。学校に行きたくない理由は様々で、人間関係や先生との関係、いじめや健康問題などが挙げられます。子どもが学校に行きたくないほど追い詰められているなら、まずはしっかりと休息を与えることが肝要です。
コミュニケーションをとる
子どもがどんなことでも親に相談できる環境が一番大切です。これによって、問題が早期に見つかり、解決できる可能性が高まります。日頃からのコミュニケーションが肝心で、学校に行きたくないと言ったときも、子どもの気持ちを尊重し、子どものペースで会話を進めましょう。
子供の気持ちを受け入れるコミュニケーションは非常に重要です。「学校に行きたくない」「勉強したくない」という気持ちを否定せずに受け止めることが大切です。これは甘やかしではなく、子供が親に受け入れられていると感じることで、次の一歩に進むための気力が湧いてきます。家庭が安心できる場所であり、親が理解してくれる存在であることから、子供は外の世界に向かっていける勇気を持つことができます。
コミュニケーションの例としては、
「学校に行きたくないなら、お母さんと料理をしようか?」
「勉強したくないなら、お父さんと一緒に本を読むことはできるかな?」
などです。子供を否定せず、前向きな会話を心がけましょう。ただし、子供が話したくない場合は無理に会話をする必要はありません。そんなときも、親子のコミュニケーションの取り方についてはサポート団体などに相談してください。
少しずつ原因に対処していく
上で紹介した3つの対応を取り、状態が落ち着いてきたら、必要に応じて少しずつ原因に対処していきましょう。
前述の章では、「子供が学校に行きたくない理由に囚われすぎない方がいい」と述べましたが、時にはその原因に対処する必要があります。
具体的な対処例は以下の通りです。
- いじめが関係している場合は、まずは学校に対処を求める必要があります(場合によっては転校も考慮されます)。
- 発達障害や精神疾患が関与している場合、本人に自覚がないこともあります。このような場合は医療機関での相談が不可欠です。
- 家庭内の問題が子供の心に影響を与えている場合、親自身が自覚していないこともあります。このような場合もあります。ただし、この情報を受け取っているあなたが子供を傷つけているとは限りません。子供の心に影響を与える要因は様々であり、「一般的には問題ない行動」でも子供を傷つけることがあるかもしれません。
サポート団体に相談する
学校に行きたがらない子供を支援する団体は数多く存在しています。こうした団体を活用することで、子供や親の不安やストレスを軽減するだけでなく、具体的な解決策を得ることも可能です。
公共団体としては、
- 市区町村の子育て相談窓口や児童相談所
- ひきこもり地域支援センター
- 教育支援センター
- 小児科や児童精神科
が挙げられます。民間団体としては、
- フリースクール
- 不登校に対応した塾や家庭教師
- 心療内科やクリニックのカウンセラー
などがあります。
これらの支援団体を利用することで、専門知識や経験に基づいた具体的な解決策を得ることができます。また、話をするだけでも、親子の不安やストレスを和らげる効果があります。そして、学校に行きたがらない原因に対して直接的な対応が必要かどうかを判断する手助けもしてもらえます。
まとめ
本記事では、子供が学校に行きたくないと言った場合に、親が避けるべき行動と、とるべき行動を解説してきました。一人一人状況は異なりますがぜひ参考にしていただけると幸いです。
親が避けるべき5つの対応
- 学校に行かないことを責める
- 理由をしつこく聞く
- 軽く聞き流す
- 無理やり学校に連れていく
- 学校に復帰することに固執する
学校に行きたがらない子供に対する親の5つの建設的な対応
- 感謝を伝える
- 「休んでもいい」と安心感を与える
- コミュニケーションをとる
- 少しずつ原因に対処していく
- サポート団体に相談する