不登校にまつわるお悩みで多いのが、昼夜逆転です。
夜中にゲームなどに熱中し、朝方に寝て昼や夕方に起きる、そんな生活が続くと不登校も長期化しがちになります。
朝起きられないということで、学校はおろか、家族や他人とのコミュニケーションも希薄になってしまうことも心配です。
なんとか改善したいとは思っていても、なかなか治せないのが正直なところではないでしょうか。
この記事では、不登校の高校生における昼夜逆転生活の原因と治し方について、具体的にご紹介します。
親ができる対応にも触れていますので、生活リズムの改善に、ぜひできることから試してみてください。
目次
昼夜逆転の原因
昼夜逆転を引き起こしている原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
解決へ導くには、まずは原因を把握することが大切です。
- 学校へ行かないため規則正しい生活が送れない
- 不登校への罪悪感
- 環境変化などのストレス
- ゲーム・スマホ依存
- 起立性調節障害や睡眠障害、うつ病など、心身の病気の可能性
5つの原因をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
学校へ行かないため規則正しい生活が送れない
「学校に行く」という予定があれば、嫌でも朝起きて準備をし、勉強・運動・食事をある程度決まった時間にすることになります。
不登校となると、その縛りがなくなるため食事や睡眠のバランスも崩れてしまいがちです。
仮に大人だとしても、平日に仕事がなくなったとして、毎日規則正しい生活リズムを貫ける人は多くないでしょう。
縛りがない中での自己管理は、不登校で不安定な状態の高校生には難しいといえます。
不登校への罪悪感
子どもは、学校へ行かなくてはいけないと頭では理解しています。
行かなくてはいけないのに登校できない自分に対して、罪悪感と嫌悪感を感じてしまうのは否めません。
特に、朝や昼間の時間帯は、自分と同年代の子たちが活動する姿を目にする機会もあるでしょう。
「今は授業中だな」「登下校の声が外から聞こえるのは嫌だな」と無意識に感じ、そこから外れている自分を責めてしまいます。
家族の生活音を聞いて「自分がいることで家族に迷惑をかけている」と感じることがあるかもしれません。
昼間は心が休まらないため、寝ることで時間を過ごし、自分のペースで過ごせる静かな夜中に好きなことをするようになります。
環境変化などのストレス
新生活になって環境が変わると、子供だけでなく大人でも生活リズムが乱れてしまうものです。
- 高校が家から遠いため、朝は早くて帰りは夜遅い
- 塾や部活動で家に帰ってくる時間が遅くなった
朝が早い、あるいは勉強などで夜寝るのが遅くなり、睡眠不足に陥ることは少なくありません。
睡眠不足が慢性化すると、朝起きられなくなり昼夜逆転のような生活リズムになってしまいます。
疲労が溜まるのはもちろん、メンタル的にも不安定になるでしょう。
ゲーム・スマホ依存
テレビゲーム、あるいはスマートフォンでのゲームや動画視聴で夜更かししてしまうケースは少なくありません。
特に不登校の場合、学校生活からの逃避としてゲームの世界に没頭することも多いです。
たいていのゲームは長時間プレイし続けられるように作られているため、自分で辞めどきを決めなくてはなりません。
オンラインで他者とつながるタイプのゲームの場合、学校や仕事が終わる夕方〜深夜の時間帯にどうしてもユーザーが増える傾向があります。
また、ディスプレイからの光は、強い刺激となって寝付きや翌朝の目覚めを悪くしてしまいます。
うまく自分で制御できない子は、毎日深夜帯にゲームをやめられないという悪循環に陥ってしまうでしょう。
起立性調節障害や睡眠障害、うつ病など、心身の病気の可能性
起立性調節障害や睡眠障害のため朝起きられないという生徒も多く見受けられます。
思春期前後の小児にみられることが多く、起立時に立ちくらみやめまい、動悸などの症状に見舞われます。自律神経の機能失調が原因といわれ朝なかなか起きられず、午前中の調子が悪い、また頭痛がするなどの症状があります。
通信制高校に進学する生徒の中でもこの起立性調節障害が理由で通信制高校を選んだという方が多くいます。
割合としては少ないものの、病気によって昼夜逆転が引き起こされていることもあります。
そのひとつが、就寝時間がどんどん遅くなり、比例して朝も起きられなくなるという「睡眠相後退症候群(すいみんそうこうたいしょうこうぐん)」という病気です。
朝起きられないため毎日の登校が難しくなり、不登校となってしまいます。
この場合は、睡眠外来で治療をおこないながら同時に生活リズムの改善も目指していきます。
気分がひどく落ち込みやすい、疲れているのに眠れないといった症状がある場合は「うつ病」の可能性もあります。
専門家への相談によって、家庭では気付けないアドバイスを得られることもあります。
気になる症状があれば一度相談してみましょう。
不登校での昼夜逆転の治し方
ここからは、昼夜逆転を克服するために家庭でできる方法を6つご紹介します。
- 日光を遮らないカーテンにする
- 不登校への罪悪感をなくす
- 小さな目標から始める
- 午前中に予定を入れる
- 運動をする
- 眠りたい2時間前に入浴する
どの方法が合うかは人それぞれですが、まずはできそうなものから順に試してみましょう。
日光を遮らないカーテンにする
昼夜逆転している子どもの部屋は、昼間に寝ているためカーテンが常に閉めたままになりがちです。
人は、朝日を浴びることで体内時計を正常化し、一日の活力を得られるといわれています。
遮光カーテンではなく、日光を通すものに変えるだけでも朝起きやすくなります。
朝起きたい時間にタイマーをかけて窓の近くで眠り、予定時刻にカーテンだけでも開ける、というルーティンを続けてみてください。
たとえその後二度寝したとしても、目覚めの良さは変わってくるでしょう。
不登校への罪悪感をなくす
「みんなは学校へ行っているのに」
「自分はダメなんだ」
「家族にもきっと迷惑をかけている」
毎日学校へ行くべきであるとわかっているからこそ、不登校である自分を責める気持ちがわいてくるものです。
しかし、不登校は珍しいものでも自分のせいでもありません。
優等生も人気者も、誰でも些細なきっかけで不登校になり得ます。
学校に行きたくても行けないとき、それは心が休息を求めているときです。
「今は休んで充電するときなんだ」と自分の今を認め、心を軽くしてあげましょう。
小さな目標から始める
寝る時間や起きる時間を早めようとするときは、できそうな範囲の目標から始めるようにします。
例えば、正午に毎日起きる子が「明日から朝7時に起きる!」という目標を掲げても成功は難しいでしょう。
目標を達成できないと、そのぶん落胆も大きくなってしまいます。
午前中に予定を入れる
生活リズムを整えるためには、学校に行くこと自体が目的だとモチベーションが上がらないかもしれません。
自分の興味のあることで昼間、特に午前中に予定を入れると、朝起きるためのきっかけになります。
カフェで勉強する予定でも、図書館で本を読むでも、散歩に行くでもよいでしょう。
自分都合の予定だけでなく、人との約束だと特に守ろうと頑張れるかもしれません。
週に何度かでもそのために起きられたら、成功体験とともに「またやってみよう!」という前向きな感情も蓄積されるはずです。
運動をする
スムーズに眠りにつくには、適度に体を疲れさせ、体温を上げることも必要です。
トレーニング系の運動が苦手であれば、夕方から夜にかけて30分程度散歩をするのがよいでしょう。
「今日はこれができた」という小さな成功体験にもなります。
寝る前の読書もおすすめです。
体を動かす場合は、睡眠への刺激となってしまうため、寝る直前は避けるようにしましょう。
眠りたい2時間前に入浴する
手軽さから、毎日シャワーのみで入浴を済ませるという方も多いのではないでしょうか。
しかし、入るだけでもそれなりの体力を消耗する入浴は、睡眠にも影響を与えます。
熱くない40度程度の湯船に浸かって体を温めると、質の良い眠りが得られるといわれているのです。
ひとつ注意点としては、寝るときには体温が下がっていた方が良いため、入浴は寝たい時間の2時間前までに済ませるということ。
多少面倒かもしれませんが、シャワーだけでなく湯船に浸かる日を増やすと、スムーズに入眠でき、翌日スッキリ起きられるかもしれません。
昼夜逆転を克服するために親ができること
不登校で家にいることが多い子どもに対し、家族のサポートは欠かせません。
叱りつけるのは逆効果で、さらに子どもを追い詰め、1人になれる夜の時間に落ち着きを求めるようになる危険性があります。
親が意識したいのは次の5つです。
- 子どもの自己肯定感を高める
- 子どものストレスを軽減する
- 目標を達成できなくても責めない
- 子どもが安心できる場所にする
- 専門家に相談する
すべてを網羅する必要はありません。
子どもの性格や状況に合わせて、少しずつでもコミュニケーション量を増やしていきましょう。
子どもの自己肯定感を高める
「不登校の自分はダメなんだ」と思っている子どもの自己肯定感を上げるためには、家庭内で役割を与えたり小さな成功体験をさせたりするのが効果的です。
家事の手伝いや買い物の付き添いでもよいでしょう。
肯定的な言葉がけをすることで、「家族の役に立てた」「うまくできた」という感覚を得ることができ、次へのやる気につながります。
子どものストレスを軽減する
昼夜逆転を早く治したい焦りから、つい強く言ってしまったりスマホやゲームを取り上げてしまったりしていませんか?
不登校時の昼夜逆転には、少なからず学校生活や家庭、そして自分に対するストレスが関係しています。
スマホを取り上げても、状況がよくなるどころか子どものストレスを増やしてしまうでしょう。
「学校にいかなくてはいけない」という不安要素と闘っている子どもは、朝起きることが毎日のつらさの始まりとなっています。
その際に「早く起きて絶対に行かないとダメ!」といった追い打ちをかけるような声かけをすると、朝の起床がますます怖くなってしまうでしょう。
ストレスを軽減し、朝の起床に苦痛を感じさせないためには、登校の強要は控えるようにします。
目標を達成できなくても責めない
「明日は○時に起きる!」と言った子どもが、結局いつもどおり午後に起きてくるとします。
自分で言ったのだから守ってほしいという気持ちはどうにか押しとどめ、起きられなかったことを問い詰めるのはやめましょう。
約束を守れなくて落胆し、悔しいのは子ども自身です。
子どもが安心できる場所にする
思春期の高校生だとしても、家庭は落ち着ける空間であってほしいものです。
学校でのストレスをうまく家庭で発散できると、エネルギーをチャージして次の日また頑張れるようになります。
しかし、家に帰っても誰もいない、叱られる、家族が常にイライラしているというような状況だと、子どものストレスはさらに積み重なってしまうでしょう。
自分の部屋で、静かな夜中にしか居場所がなくなるのも無理はありません。
引きこもりや昼夜逆転生活は家庭のサポートも必要だと意識しておきましょう。
専門家に相談する
学校がある平日の朝はなかなか起きられなくても、遠足の日、友達と予定がある日、旅行の日など楽しみな予定があると自然と起きられるものです。
本人が楽しみにしている予定の際にも起きられないようであれば、何か病気が隠れているかもしれません。
睡眠外来などの医療機関に一度相談してみるのもよいでしょう。
不登校や昼夜逆転はそれ自体が病気ではないため、なんとか家庭だけで解決したいと思いがちです。
あまり大ごとにしたくないという気持ちもあるでしょう。
しかし、親だけで解決するのは難しいものです。
第三者を頼るのは何も恥ずかしいことではありません。
親が疲弊してしまう前に、学校の先生やスクールカウンセラーなどに相談し、力を貸してもらうのも解決への重要なステップです。
高校生の昼夜逆転克服には家族のサポートが大切
不登校の昼夜逆転生活は、簡単に短期間で治せるものではありません。
子どもが自室にこもらず、リビングに滞在したくなる雰囲気づくりには家族のサポートが欠かせないものです。
まずは親が子どもの昼夜逆転を受け入れ、応援する姿勢を見せながらどうしていくか一緒に考えていきましょう。
子どもとのコミュニケーションの中で、30分、1時間ずつでも寝る時間、起きる時間を早められるようルールを考えるのもおすすめです。
もし、目標を達成できなくても叱らない、追い詰めないよう心がけましょう。
家族のサポートのもと、前向きな会話が増えてエネルギーを蓄えられれば、いずれ気持ちが外へ、学校へと向いていくはずです。
不登校も昼夜逆転も、決して特別なものではなく、どんな子にも起こりうる問題です。
焦らず長い目で克服を目指していきましょう。