「特に激しい運動をしたわけでもないのに、学校に行くだけで疲れてしまう」
「学校に行くまでは元気だけど、登校した途端に疲れてしまって勉強に集中できない」
何か心当たりがあるわけでもないのに、学校に行くだけで疲労を感じてしまう人がいます。
明確な理由がある人も中にはいますが、思い当たることがなく、自分は病気なのではないかと思い込んでしまう人も少なくありません。
学校に登校するだけで疲れてしまう原因の中には、病気とは違う特性の問題が絡んでいる可能性があります。
それらを理解するだけで、もしかすると疲れの理由がはっきりするかもしれません。
この記事では、学校に行くだけで疲れてしまう原因を行動・感情の面と特性の2つから解説し、それらの対処法についても解説します。
体が限界を示している際の特徴についても紹介しますので、ぜひ参考にして、無理をしないようにしましょう。
目次
学校に行くだけで疲れてしまう行動・環境面での原因と理由
学校に行くだけで疲れてしまう理由は、大きく分けて行動・環境によるものと個人の特性によるものの2つに分類できます。
まずは、行動と環境による原因と理由を見ていきましょう。
代表的なものは次の6つです。
- 勉強が苦手・嫌い
- 人付き合いが苦手
- 寝不足や体力不足
- 目標がない
- 新学期疲れ
- 集団行動が苦手
それぞれ具体的にどのようなものを指すのか、詳しく見ていきましょう。
勉強が苦手・嫌い
勉強に対して強い苦手意識を持っていたり、嫌いだという感情を持っていたりすると、学校に行くだけで疲れを感じてしまいやすくなるでしょう。
疲れてしまう程の苦手意識は相当なもので、友達との会話でよく出てくる「苦手」「得意ではない」とは次元が違います。
彼らの本心としては、苦手としている科目や勉強そのものに向き合いたいと思っておらず、可能であればしたくないという場合がほとんどです。
要するに、勉強という行為に対して強いストレスを感じてしまうため、それが疲れるという状態につながります。
また、途中から勉強に対して強い苦手意識を抱く人もいます。
真面目に授業を聞いてノートを取っているにもかかわらず、定期テストで点数が取れないと、徐々にモチベーションが下がってしまうでしょう。
その結果、授業を受けることに苦痛を感じるようになり、学校に行くだけで疲れてしまうのです。
人付き合いが苦手
クラスメイトや先輩・後輩、先生などの人との関わりが苦手と感じるのも、学校に行って疲れを感じる人の特徴です。
仲の良い友人がいれば解決する問題ではなく、周囲を取り巻く環境の問題です。
クラスメイトは自分の意志で選ぶことができません。
担任の先生や先輩・後輩も同様です。
当然仲の良い人はできるかもしれませんが、どうしても気が合わない人や苦手意識を持ってしまう人は出てくるでしょう。
そんな人たちと一緒に生活していて、ストレスがたまらないはずはありません。
また、友達との関係を良好に保つために、自分を表に出せず我慢する場面が多いと気疲れをしてしまう原因になります。
自分の中では行動したい思いがあっても、周囲の友達やクラスメイトからどう思われるのかが怖くなってついつい我慢してしまうため、気疲れに繋がってしまうのです。
寝不足や体力不足
学校に行く、学校で授業を受けるというのは意外にも体力を使うものです。
部活動や放課後の活動があれば、なおさら体力の消耗は激しいでしょう。
これらの問題は寝不足に関係していると言われており、睡眠不足の状態が続くと体力も低下していきます。
寝不足の状態が続いていくと、授業中である昼間でも眠気を感じ、体力だけではなく集中力も落ちてしまいます。
体が万全な状態ではないため疲れを感じやすく、結果として学校に行くだけで疲れるという現象に陥ってしまうのです。
理想的な睡眠時間は人によって異なるものの、一般的には1日7~8時間の睡眠が必要とされています。
予習や復習、部活動で十分な睡眠時間は確保できないかもしれませんが、ひどく疲れを感じてしまう前に十分な休養を取っておくことが重要です。
もし睡眠時間を確保しても疲れが取れない場合は、慢性疲労症候群と呼ばれる病気の可能性があります。
「寝ても寝ても疲れが取れない」という状態が続くのであれば、病院を受診することをおすすめします。
目標がない
将来の夢がなかったり、何で学校に行くのかが曖昧だったりすると、漠然と毎日を過ごすことになってしまいます。
学校へは「しんどい」「だるい」「何で行くのか意味がわからない」といったマイナスの感情を抱えたまま行くことになるため、結果として疲れてしまうケースも考えられます。
目標があれば、100%疲れないというわけではありません。
学歴偏重の社会から、徐々に個人の人間性やスキル重視に変わりつつあることから、高校や大学に固執する必要もないでしょう。
しかし、何らかの目標がなければ、日常生活にメリハリができないのも事実です。
無理やり目標を設定する必要はありませんが、やはり何かしらの目的は作ったうえで生活したほうが良いといえます。
新学期疲れ
新学期疲れとは、その名の通り新学期になって環境が大きく変化し、新生活に適応できず疲れてしまう状態のことです。
同じ学校内で新学期を迎えると、クラス替えや後輩のお世話が生じ、上の学校に進学するとそれらに加えて環境の変化が起きます。
すぐに対応できる人もいますが、なかなか環境に慣れることができず、緊張状態が解けないまま学校に行く人もいるでしょう。
学校にいる間は終始気が張っているため、帰宅後などに疲れを感じるのです。
特に高校生は、同じ学校に通う人ががらりと変わり、環境も大幅に変わってしまうことがあります。
小学校から中学校に進学したときと同じように考えていると、思ったよりも大きな環境の変化に戸惑ってしまうかもしれません。
特に新学期疲れが起きやすいのは5月と9月といわれています。
どちらも大きな休みをはさむことで、再び緊張してしまうことがあるようです。
力を抜くのは難しいかもしれませんが、過度に身構えずに学校に通うようにしましょう。
集団行動が苦手
学校生活は、基本的に集団行動の連続です。
小さなものは友人関係、大きなものだと部活動やクラスがあります。
この集団生活を送る中で、自分の意思とは無関係に周囲が動いていく感覚に疲れを感じてしまう人も少なくありません。
社会に出てからも、基本的には集団で行動することが多いため、その練習だと割り切っている人もいます。
しかし、中には集団行動が苦手な、いわゆる一匹狼もいるでしょう。
そのような人は集団行動をしていると、人一倍疲れを感じてしまうのです。
また、集団でいることで周囲から良く評価されたいと思って飾ってしまい、ストレスが溜まっていく人もいます。
良く見られること自体は悪いことではありませんが、自分の思いにウソを付き続けることになり、結果的に演じていることに疲れを感じてしまうのです。
学校生活において集団行動を完全にシャットアウトするのは難しいものの、休み時間などにひとりの時間を作ることはできるかもしれません。
また、周囲の目線が気になって本当の自分が出せない人も、ひとりの時間を作ることで心の負担が軽くなる可能性があります。
学校に行くだけで疲れる「個人の特性」による原因・理由
学校に行くと疲れてしまう原因の中には、個人的な特性によるものがあります。細かく分けるといくつか存在していますが、代表的なものは次の2種類です。
- HSP
- 発達障害のグレーゾーン
それぞれどのような特性を持っているのか、各章で詳しく解説します。
HSP
HSP(Highly Sensitive Person)とは、視覚や聴覚などの感覚が敏感で、周囲からの刺激を受けやすい特性を持っている人のことです。
アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が提唱した心理学的概念であり、別名「繊細さん」とも呼ばれています。
アーロン博士の研究によると、約5人に1人はHSPの特性を持っているといわれています。
近年急激に注目されるようになった言葉で、背景にはインターネットの普及であらゆる刺激を周囲から受けるようになり、気疲れや生きづらさを感じるようになりやすくなったことがあると考えられているのです。
HSPは病気ではない
勘違いされがちですが、HSPは病気ではなく特性です。
同じ人間でも慎重に差があるのと同じように、感受性も人それぞれ違います。
HSPは、特に刺激を強く受ける高い感受性の持ち主を指す言葉であり、病気でないことを理解しておきましょう。
アーロン博士によると、HSPの人にはDOES(ダズ)と呼ばれる性質があるとされています。
- D:Depth of Processing
深く考えて物事を処理すること。周囲の人からすれば簡単に結論が出せるような物事に対しても深く考えてしまう思考のクセを指す。
- O:Overstimulation
周囲から受ける刺激に対する反応が強く現れやすいこと。過剰に刺激を受け取ってしまうため、それらの刺激に精神と身体が耐えられずに疲れてしまう。
- E:Emotional response and empathy
他人と自分の心の距離感がほとんどなく、感情移入しやすい。共感力が高いとも言われ、感情の反応を強く受ける。
- S:Sensitivity to Subtleties
他の人が気が付かないような些細な刺激に気が付くこと。五感が鋭いためわずかなことでも敏感に反応する。
繰り返しますが、HSPは病気ではないため、病院に行っても明確にHSPであると断定することはできません。
もちろん治療することもできず、うまくHSPと付き合っていくしか方法はないのです。
刺激を物理的に緩和する方法として、耳栓をしたり、刺激の少ない環境を選んだりすることが重要です。
HSPの人の特徴
もっと身近なことでHSPの人の特徴を表すと、次のような悩みを抱えていることが多いようです。
- 周囲の人から敏感と言われることが多い
- 「内気な性格だね」と言われる
- 急な変化に対応するのが遅く、動揺してしまう
- タスクが増えてくると頭が混乱してしまう
- 大きな音や強い光が苦手
- 小さなことでも深く考えすぎる癖がある
- 忙しくなると一人で静かに過ごせる場所に逃げたくなる
- 他人の顔色を伺いがち
- 小さな音や匂いが気になる など
HSPの特性を持っている人は、これらの悩みを抱えている傾向にあります。
もちろん、なにかが当てはまったからといって、必ずHSPであるというわけではありません。
ただ、上記のことを言われることが多かったり、思い当たる節があったりするのであれば、HSPの特性を持っている可能性は高いと考えられるでしょう。
発達障害のグレーゾーン
発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の診断基準をいくつか満たすものの、全ての項目に当てはまるわけではないため、発達障害と判定されない人のことです。
最近では「大人の発達障害」と呼ばれることも増えましたが、多くの場合は子どものころに判定を受けています。
脳の機能の発達に偏りが生じ、かつ育った環境が合っていないために起こるとされています。
発達障害グレーゾーンの人は、対人関係や勉強の一部に強い苦手意識を持っている場合も多いようです。
学校に行くと疲れてしまうという原因のひとつとして挙げられることもあります。
グレーゾーンも病気ではない
発達障害という名前から病気だと思っている人もいますが、HSP同様グレーゾーンも病気ではありません。
発達障害は脳の特性が関係しているため、病院で発達障害かどうかを判断してもらうことはできます。
しかし、治療法などがあるわけではないため、こちらもうまく付き合っていく必要があるのです。
それに伴って、発達障害の可能性があると言われるグレーゾーンも病気という扱いにはなりません。
医師のサポートが受けられる分、HSPよりも相談の間口は広いものの、自分自身の力や周囲の協力を得て付き合っていかなければならない点ではHSPと同じです。
グレーゾーンの特徴
グレーゾーンといわれる人たちは、同じ発達障害を持っている人と比べて症状が軽いというわけではありません。
調子が良い日とそうでない日によって出てくる症状は異なりますし、その症状の重さも変わります。
曖昧な存在という意味を指しているように感じるグレーという言葉に惑わされないようにしましょう。
条件に当てはまらないとは言え、発達障害のグレーゾーンの人にも発達障害と診断された人と同じ種類の特徴が見られます。
- ASD
自閉症スペクトラムと呼ばれるもの。対人関係に難しさを感じたり、興味関心が限定的、同じ行動を繰り返すなどの特徴がある。
- ADHD
多動性障害や注意欠如と呼ばれるもの。衝動的に動いたり、じっとしているのが苦手だったりするタイプを指す。
- LD
学習障害や限局性学習症と呼ばれるもの。「読む」「書く」「計算する」などの学習の領域で特定の部分だけを苦手としている。
グレーゾーンの場合は、病院で診断される際には「ADHDの気配がある」などとぼかされて言われることがあります。
自分がどの型に当てはまるのかは、グレーゾーンであっても病院で判断してもらうことができます。
気になる場合は心療内科や精神科を受診すると良いでしょう。
学校で疲れて限界なときに出るサイン
無理をして学校に行った結果、疲れが限界に達して体に何らかの症状となって出てくる場合があります。
具体的には次の3つです。
- 朝が起きられない、つらい
- 頭痛がする
- 腹痛に襲われる
このような症状が現れると、そもそも学校自体に行けなくなってしまう可能性もあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
朝が起きられない、つらい
睡眠時間はしっかり確保できているはずなのに、起きた段階で体にしんどさやだるさを感じている場合、脳や体が十分に休めていない可能性があります。
基本的には寝ることで疲れた脳や身体が整えられるのですが、休まらない場合は自分の体調優先で行動したほうが良いでしょう。
朝起きた段階でつらいと感じたり、起きられなかったりするのはこれらのせいである可能性があります。
自分の体調としっかり向き合うことをおすすめします。
頭痛がする
朝起きてから学校に到着するまでの間に頭痛に襲われるのであれば、学校に対して強いストレスを感じている証拠です。
この頭痛の特徴は、頭が痛いと思いながら学校に行くと、着いた途端におさまってしまうことです。
一応個人での判断もできなくはありませんが、本当に学校が原因かどうかという点は、個人の判断だけではわかりません。
起床してから学校に行くまでの間に頭痛が出るものの、学校に着いた途端に良くなる場合は、一度病院で見てもらうようにすると良いでしょう。
腹痛に襲われる
頭痛と同じように、朝起きてから学校に行くまでに腹痛を感じるようであれば、こちらも学校がストレスになっている可能性が高いでしょう。
頭痛との大きな違いは、腹痛だけでは学校が休みにくいという点です。
こちらも頭痛と同じように、一度医療機関で見てもらうようにしましょう。
学校で疲れないようにするための対処法
学校に行って疲れないようにするためには、いくつかの対処法があります。
人によって何が適しているのかは違いますが、代表的なものは次の通りです。
- 十分な休養を取る
- ひとりの時間を確保する
- 人との距離を決めてそれを保つ
- 自分のペースを優先する
- 学校を休む
これらの方法を実践したからといって、必ず改善するというわけではありません。
しかし、実践しないよりは心理的にも楽になる可能性もあります。
それぞれどのようなことなのか解説します。
十分な休養を取る
睡眠時間をしっかり確保すると、学校に行って疲れるという症状を緩和できるかもしれません。
学校に行って疲れてしまう理由の中に睡眠不足があるため、きちんと寝る時間を確保することが重要です。
ポイントは、寝る前にスマートフォンやゲームなどに触らないことです。
デバイスから発せられるブルーライトが脳への強い刺激となって、休んでいるつもりでも脳がしっかりと休まっていない状態になってしまいます。
何もせずに早めに体を休めるようにしましょう。
ひとりの時間を確保する
ひとりの時間を確保することで、学校で疲れを感じにくくなるかもしれません。
集団行動や友達付き合いなどで難しいかもしれませんが、休み時間などを活用してひとりでいる時間を作るようにすると、気持ちが楽になる可能性があります。
ポイントは、スマートフォンなどでSNSを見ないことです。
周囲からの刺激に疲れている状態でSNSを目にすると、余計疲れを増やしてしまう可能性があります。
可能な限りひとりの時間ではスマートフォンなどを触らないようにしましょう。
人との距離感を決めて保つ
人と自分の心の距離感を事前に決めておいて、それ以上は踏み込まないようにするのも有効な方法といえるでしょう。
学校で疲れを感じやすい人は、周囲の人とうまく距離をとるのが苦手な人が少なくありません。
事前にこの領域までは人に開示してもOKという領域を決めておくと、心が軽くなります。
自分のペースを優先する
周囲の人の反応を気にして疲れてしまっている場合は、それを気にしないように意識すると心の疲れが減ってくるでしょう。
何か一つのことをするにしても、周囲のペースに合わせるのではなく、自分には自分のペースがあると考えて行動することが重要です。
背景には自分のことをよく見せようとする気持ちが存在しています。
周りの目を気にしないようにすれば、自分を飾らずに表現できるようになるでしょう。
学校を休む
どうしてもダメな時は、学校を休むことも視野に入れてください。
授業についていけなくなる、ずる休みだと思われないかなど、不安に思うことはたくさんあるでしょう。
しかし学校に行って何も手がつかないほど疲れてしまっている状態を我慢する必要はありません。
むしろ「休むタイミングなんだ」と考えて、1日しっかり休んでみると良いでしょう。
まとめ
学校に行って疲れてしまうのは誰にでもあることです。
しかしそれが日常生活に支障をきたすようなレベルなのであれば、十分な対策を取る必要があるでしょう。
自分の日常生活が原因なのか、特性ゆえの問題なのかは分かりませんが、あまりにも疲れすぎている場合は学校を休むことも選択肢に入れることをおすすめします。
もし今の学校に通うのが難しいほど疲れているのであれば、通信制高校への転入をおすすめします。
ID学園高等学校では、通学パターンが選べる方式を採用しており、完全オンラインから登校して学ぶスタイルまで選択できる仕組みです。また、その時の状況に応じてコース変更も可能です。
自分のペースで無理なく高校生活を送れるため、学校に行って疲れるということが少なくなるかもしれません。
ぜひ一度検討してみてください。