義務教育の中学校を卒業すると、世界は大きく広がります。
しかし、不登校が続いている状態だと、自分の将来について先が見えなくなっているのではないでしょうか。
不登校の中学生でも、高校進学をはじめ、希望する将来の夢を叶えることはできます。
今回は、不登校だった中学生が実際にどんな進路を選択しているのか、気をつけるべき点はどんなことかを取り上げていきます。
不登校によって生じる問題に負けず、目指す進路を勝ち取っていきましょう!
目次
不登校中学生の進学と就職について
文部科学省が中学生時代に不登校だった生徒を対象に、5年後の実態を追跡した調査によると、次のような結果が得られました。
中学校卒業後の高校進学状況 | |
高校進学率 | 85.1% |
高校中退率 | 14.0% |
20歳現在の就学・就業状況 | |
就業のみ | 34.5% |
就学のみ | 27.8% |
就学・就業 | 19.6% |
非就学・非就業 | 18.1% |
20歳現在の就学先 | |
大学・短大・高専 | 22.8% |
高等学校 | 9.0% |
専門学校・各種学校等 | 14.9% |
20歳現在の就業状況 | |
正社員 | 9.3% |
パート・アルバイト | 32.2% |
家業手伝い・会社経営 | 3.4% |
参考:「不登校に関する実態調査」 〜平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書〜(概要版).文部科学省初等中等教育局児童生徒課.2014-07-09
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1349956.htm
中学生の頃に不登校だった生徒の約80%が、20歳の時点で働いているか学校に通っているかの状態にあるということがわかります。
不登校が継続状態にあったり仕事にもついていない人が一定数いるのも事実ですが、この調査は20歳時点であるため、今後進学や就職に進むことも大いに考えられます。
このことから、「たとえ不登校で中学校へ行けていなくても、進学や就職ができないわけではない」と希望が持てるのではないでしょうか。
不登校中学生は高校に行けないの?進路の選択肢
不登校だと高校生になれないのでは?という不安がありますよね。
実際は、高校進学も叶えられるので心配はありません。
中学生時代に不登校だったとしても、高校進学をきっかけとして学校に通えるようになるケースも少なくありません。
不登校の中学生の進路として現実的な選択肢は次の4つです。
- 高校進学(全日制・定時制・通信制)
- 高校以外の学校への進学
- 高卒認定をとる
- 就職
それぞれ掘り下げていきましょう。
高校進学
まずは、高校進学です。
高校には、大きく分けて全日制・定時制・通信制があります。
全日制高校に向いている生徒タイプ
環境の変化によって不登校の原因が解消されるという場合は、全日制高校が向いているでしょう。
全日制は、学力試験と合わせ、出席日数・授業態度などを記載した内申書を合否の判断基準としています。
しかし、公立ではなく私立の全日制であれば、内申書の影響力が少なく、学力試験に重きをおいていることが多いです。
不登校でも全日制を目指したい場合は、本番で力を発揮できるように学力の積み重ねをしっかりおこないましょう。
定時制高校に向いている生徒タイプ
定時制に通う生徒は働いている人も多く、年齢層も幅広いです。
定時制は毎日の通学が基本ですが、一日の授業時間が4時間程度と全日制よりも短いのが特徴です。
学校には行きたいものの、長時間は自信がないという場合は定時制が向いていると言えるでしょう。
通信制高校に向いている生徒タイプ
通信制高校は、学校によりスクーリング日数が大きく異なるため、全日制のように週5日登校したい場合もできる限り登校したくないという場合にも対応が可能です。
集団生活が苦手で、同級生とあまり顔を合わせたくないという生徒でも、オンラインベースの通信制なら無理なく高校生活を過ごせます。
高校以外の学校へ進学
高等専修学校や高等専門学校に進学し、技術者を目指すという方法もあります。
工学系・技術系・医療系・教育系・服飾系などの専門分野を学びます。専門的な職種の求人は多く、就職率は100%とも言われています。
手に職をつけて早く働きたいという生徒には向いているでしょう。
高卒認定をとる
高校進学はしたくないけれど大学受験は希望する、という場合には、高卒認定試験の合格を目指すのがおすすめです。
高卒認定は高卒と同程度の学力を有すると認められるもので、高校を卒業していなくても大学受験資格を得ることができます。
高校卒業資格ではないので、大学や専門学校を卒業しなかった場合の最終学歴は中卒となってしまう点に注意が必要です。
就職する
最後は、進学ではなく就職するという選択です。
早く社会に出ることは自立につながり、お金の大切さも学ぶことができます。しかし、中卒での就職は職選びと収入面において厳しいというのが現実です。
肉体労働や一部の業種でしか仕事を選べなかったり、高卒・大卒に比べて生涯年収が大きく下回る可能性が高くなります。
どうしても就職を希望するのであれば、一度働いてみてから、あるいは働きながら高校卒業や高卒認定合格を目指すという方法もあります。
高校受験で避けられない4つのハードル
不登校の生徒が高校進学を希望するとき、受験にはどうしても避けられないいくつかの壁があります。
- 出席日数
- 学力
- モチベーション
- 情報
それぞれどのようなものか、そしてどう乗り越えていくべきかご説明します。
出席日数
出席日数は、学校へ登校し授業に参加している日数のことを指します。
不登校の場合、出席日数が足りなくなるというのが最も起こりやすい問題です。
どの程度の割合がボーダーラインとなっているかは地域によって異なるものの、欠席日数が多いと受験できない高校が出てくる可能性があります。
ひとつの目安となるのは1年間に30日で、これ以上の欠席があると受験に影響を及ぼすと考えられます。
しかし、出席日数のために不登校から脱出するのは簡単ではありません。
- 保健室登校
- スクールカウンセラーとの面談
- 学校と連携している適応指導教室に通う
- 学校と提携しているフリースクールに通う
以上のように、教室で授業を受ける以外にも出席とカウントされる方法があるため、うまく活用していきましょう。
学力
受験において大きなハードルとなるのが学力です。授業に参加できていないため、学力が足りていないのは否めません。
中学校の勉強は積み重ねが重要であり、序盤で苦手意識を持つとそれ以降の内容を理解するのは難しくなってしまいます。
全日制であれば、私立高校の受験科目は国語・数学・英語の3教科のみのことが多いです。
教科を絞って集中して受験勉強を進めていく、塾や家庭教師を利用して勉強に集中することは無理ではないはずです。
モチベーション
受験には「やる気」が必要です。
受験勉強は数ヶ月に及び、志望校合格の目標の下で勉強のモチベーションを維持し続けなくてはなりません。
受験生がいる家庭は、家族も気を遣ってピリピリした雰囲気になるという話は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
不登校の場合、気持ちもやる気も落ちている状態といえます。受験へ大きなエネルギーを向けるのは容易ではありません。
「高校へ行きたい」という意思があるのであれば、モチベーションを維持できるよう家族もサポートをおこないます。
受験に対する心が折れてしまった際は、無理はしなくても良いと逃げられる環境を提供するのも、心がパンクしないためには必要です。
情報
今の時代、中学生のほとんどは高校へ進学するようになりました。
学校の先生は高校入試の知識が豊富であり、その最新情報は生徒たちへ伝えられています。
不登校で学校へ行けていないということは、地域の高校の情報、高校入試に関する情報を得られないというデメリットが生じます。
ネットに溢れる情報の中から自分で取捨選択する必要があるのです。高校についての情報は、オープンキャンパスや学校説明会を通しても得られます。
学校の雰囲気を知って入学後のギャップを減らすには、実際に足を運び、自分の目で見ることが大切だと覚えておきましょう。
不登校中学生が高校進学するために親が意識したいこと
進路の話はナイーブで、子どもにとっては大切な反面、現実逃避したくなってしまうような話題です。親としても我が子の進路問題が気になって、話し合いが進まないとやきもきしてしまうことでしょう。
刻一刻と過ぎていく時間の中、親として意識したいことをピックアップしてみました。
子どもと正面から向き合う
不登校の子どもに対応するとき、親に必要なのは「見守る」ことです。
腫れ物に触れるような態度を取る、毎朝登校を強要する、何もしない、というのは見守りではありません。自分の感情抜きに子どもをよく観察し、つらさを受け止めてエネルギーを補給するのが親の役目。
子どもと正面から向き合う姿勢を見せ、ストレスを少しでも緩和してあげましょう。
志望校選びは真剣に
志望校、特に全日制高校を選ぶときにはついつい学力のみを見て選びがちです。
「進路はどうする?」と聞いても、莫大な情報量と自分の置かれている状況のギャップ、周囲からのプレッシャーにより、子どもがすんなり決められるわけがありません。
家からの近さや不登校でも通えそうということだけで安易に決めてしまうと、入学後に再び不登校につながる可能性が高くなります。
親子でわからないところから一緒に高校を深く調べ、学力・通いやすさ・興味分野・校風などについて少しずつ話合いを進めていくとよいでしょう。
子どもを追い詰めない
不登校は、残念ながら繰り返してしまうことが考えられます。
せっかく高校という新しい環境で、毎日通えるようになっても、何かのきっかけで再び不登校となってしまうかもしれません。
その場合は、無理に学校へ縛り付けることなく、パンクしてしまう前に心と体を休めてあげましょう。親は不登校と受験に対するイライラを子どもにぶつけることのないよう、注意が必要です。
全日制が合わなければ、通学日数が少なくてよい通信制で学ぶという選択肢もあります。
学校と密に連絡を取る
高校受験には学校との連携が大切です。
学校からの連絡を待つのではなく、家庭からもこまめに連絡して、必要な情報を得るようにします。定期的に面談をお願いするのも、スムーズな高校受験のためには効果的です。
不登校の問題は家庭だけで抱え込まず、スクールカウンセラー・医療機関・支援施設などに積極的に相談し、第三者にも手を貸してもらいましょう。
まとめ
中学を卒業すると、自分の進路は自分で決めなくてはならず、大きな不安に襲われるものです。
しかし、考え方を変えると、どんな進路も選ぶことができる自由な身だということ。
将来を見据えた学校選択は大切ですが、もし高校が合わなければやり直しが可能なのだと捉えておきましょう。
進学を考えた場合、高校だけでも全日制・定時制・通信制があります。不登校の生徒にもおすすめなのは、通学日数が少なくてもよい通信制です。
学校に長く拘束されず自由な時間ができる分、やりたいことや資格の勉強、アルバイトなどに時間を使えるのも魅力のひとつです。
受験は決して簡単な道ではありませんが、目標を決めて一歩ずつ進んでいけば必ず切り開くことができます。
学力だけで高校を決めるのではなく、高校卒業を見据えて3年間を過ごせるような学校選びを心がけましょう。