義務教育である小学校・中学校と違い、高校で不登校になると、留年や退学などによって卒業が難しくなることがあります。
高校の卒業資格を得られない場合、大学進学や将来の進路に影響を及ぼします。
その結果、自分のやりたいことや就きたい職業の選択肢を狭める可能性が高くなってしまうのです。
この記事では、不登校の高校生の実態と高校生ならではの不登校の特徴から、不登校でも高校を卒業するための方法について解説します。
不登校でも、高校を卒業することができます。
しかし、卒業することだけを目的にして無理に学校に通い続けると、体や心に大きな負担をかけてしまいます。
そのため、不登校の原因を究明して解決を目指すとともに、高校卒業資格を得るための自分に合った方法を選択することが大切です。
辛さを乗り越え、卒業への道を切り開くために、ぜひ参考にしてくださいね。
目次
不登校の高校生の実態
不登校児童生徒とは、学校を長期に欠席している子どものことを指します。
不登校児童生徒とは何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるために、年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
学業不振や、学校生活に適応できない、経済的理由、家庭の事情など、さまざまな理由によって年間30日以上学校を欠席すると、不登校に該当することになります。
不登校の生徒は年々増加しており、今も多くの高校生が学校へ行けない悩みを抱えています。
不登校の人数や割合
令和3年に年間30日以上登校しなかった生徒の人数は以下のとおりです。
長期欠席の理由 | 人数 |
病気 | 22,864人 |
経済的理由 | 385人 |
不登校 | 50,985人 |
その他 | 12,388人 |
合計 | 118,232人 |
令和3年の高校における不登校生徒数は50,985人で、1,000人あたり16.9人、100人あたり約2人の子どもが不登校であるとされています。
不登校生徒数は、現在不登校である子どもの数なので、不登校が原因で中退してしまった子どもは含まれません。
そのため、不登校によって悩んでいる子どもは調査結果よりも多くいると考えられるでしょう。
不登校は高校卒業に大きく影響を及ぼすため、不登校が原因で留年や中退する子どもが一定数存在します。
高校での留年について
高校で留年となる基準は、地域や学校ごとに異なります。
一般的な基準は以下のとおりです。
- 単位の不足
- 出席日数の不足
- 再試験に合格できない
- 補修を履修しない
- 一定の成績基準を満たさない
- 規則違反や重大な校則違反
など
不登校によって出席日数が基準に満たない場合は、高校を留年する可能性があります。
以下は、令和3年の不登校児童50,985人のうち、中途退学や留年した子どもの数と割合です。
人数 | 不登校児童に対する割合 | |
中途退学になった子ども | 8,940人 | 17.5% |
留年になった子ども | 3,006人 | 5.9% |
不登校の子どものうち、100人に約6人が留年、100人に約17人が高校を退学しているのが現状です。
このように、不登校は高校卒業を困難にする原因のひとつになっています。
高校生の不登校の特徴
不登校の原因はひとつではありません。
- 学業への圧力と不安
- 対人関係の問題
- 精神的・心理的な問題
- 家庭環境
- 学校環境への不適応
- 健康の問題
このようなさまざまな要因が絡み合って、学校に行けないという苦しい状況を生み出しています。
小学校・中学校でも不登校になる子どもはいますが、高校で不登校になる場合は、10代後半である高校生ならではの悩みや辛さが原因になることがあります。
高校生の不登校に多い原因
小学生・中学生・高校生に共通して多い不登校の原因は、無気力と不安です。
その他の主な不登校の原因として、小学生・中学生では「親子の関わり方」が挙げられる一方、高校生では「入学・転編入学・進級時の不適応」が挙げられています。
令和3年の高校生の不登校生徒数50,985人のうち、おもな不登校の要因ごとの人数を見てみましょう。
要因 | 無気力・不安 | 生活リズムの乱れ・あそび・非行 | 入学・転編入学・進級時の不適応 | いじめを除く友人関係をめぐる問題 | その他 |
人数 | 19,977人 | 7,610人 | 4,777人 | 4,623人 | 3,890人 |
割合 | 39.2% | 14.9% | 9.4% | 9.1% | 7.6% |
高校は進学や将来への第一歩として大変重要な時期です。
学業による負担が増え、勉強へのプレッシャーも大きくなります。
そのため、新しい学習内容や学校環境に適応することが難しくなることがあります。
不登校生徒のうち約10人に1人は、将来や進路への不安が影響し、入学・進学時に学校生活に負担を感じて不登校になることが多いと考えられます。
小学校・中学校で不登校だった場合
小学校・中学校で不登校だった場合、高校生になるまでに、さまざまな経験が蓄積されます。
長い期間をかけてネガティブな出来事が積み重なり、それが解決していない場合、高校でも続けて不登校になりえます。
小学校・中学校で不登校を経験し、さらに高校で不登校になる原因はおもに3つ挙げられます。
- 親との関係
- 対人関係のトラウマ
- 勉強に対するあきらめ
小学校・中学校のおもな不登校の原因には「親子の関わり方」が挙げられています。
小さい頃から親に要望を伝えられなかったり、悩みを打ち明けられなかったりする場合、親との関係性が変わらなければ、不登校になる原因は取り除かれません。
また、小学校・中学校の不登校がいじめなどの対人関係が原因だった場合、新しい友人や先生との関係を築くことへの不安が不登校に繋がることもありえます。
さらに、小学校や中学校で不登校になれば、学校へ通えず学べない期間が少なからずあるでしょう。
勉強の遅れが取り戻せていない場合、高校で高度な学習内容を求められることが負担になってしまいます。
その結果、頑張っても他の人に追いつけるはずがないと諦めてしまうことも、不登校が継続する原因だと考えられます。
高校から不登校になった場合
高校生から初めて不登校になった場合、反抗期や思春期がきっかけになることが特徴として挙げられます。
反抗期は、子どもの成長過程で自立したい気持ちが芽生えることで起こるものです。
今まで自然と受け入れてきた、親や学校の先生の言動に反論する気持ちが大きくなり、自分の感情をコントロールしにくくなります。
小学生・中学生の間、親の言うことをきちんと聞いて、いい子に育ってきた場合、反抗心をどう表現していいか分からなくなることが多いです。
親への反論や言いつけへの逆らい方が分からず、反抗の方法として不登校を選択をしてしまうことがあります。
また、自分の思いややりたいことを我慢してきた子どもは、反動で非行に走ることもあります。
夜遊びなどによって生活リズムが乱れることから、学校を休みがちになる可能性もあるでしょう。
校則違反や暴力的な行動を注意されたことがきっかけで、学校へ行きたくなくなることもありえます。
さらに、思春期は友人との関係に敏感になります。
思春期特有の身体的な変化を人と比較して自分に自信が持てなくなったり、いじめなどの対人関係のトラブルによって強い精神的ダメージを受けたりしやすい時期です。
小学校・中学校ではうまくいっていた学校生活が、高校生になって辛くなってしまい、不登校になるパターンも少なくありません。
不登校の高校生の進路は?
高校生で不登校になった場合、その先の進路はどうなるのでしょうか。
不登校の高校生が選ぶ進路は、高校を卒業できるか、できないかによって変わってきます。
大学や短大、専門学校に入学するためには、高校卒業資格が必要です。
高校卒業資格が得られなければ、一般的には就職という進路に進むことになるでしょう。
大学・短大・専門学校
不登校の高校生でも、大学・短大・専門学校へ進学できる可能性があります。
しかし、大学や短大の入学資格を得るため、大学入試を受けるためには、学校教育法によって決められた基準を満たす必要があります。
- 高等学校または中等教育学校を卒業した者
- 特別支援学校の高等部または高等専門学校の3年次を修了した者
- 指定された専修学校の高等課程を修了した者
この他、外国において指定された年数以上の課程を修了した者などが、基準として挙げられています。
日本の大学・短大・専門学校では、高校を卒業することが大学の入学資格を得るための前提条件です。
高等課程を併せ持っている専門学校であれば、高校卒業資格がなくても入学が可能ですが、多くの専門学校が大学や短大と同様に高卒と同等の資格を必要としています。
そのため、不登校でも高校を卒業するか、高校卒業と同等の資格を得られれば、進学は可能でしょう。
もし、不登校が原因で高校を中退した場合は、高等課程を持つ専門学校を選ぶか、高卒認定試験を受けて高校卒業と同等の資格を得なければ、大学・短大・専門学校への進路へ進むことができません。
就職
不登校で高校に行けなくなった場合、高校を卒業せずに就職するという道もあります。
若いうちに社会に出ることで、同級生よりも早くに仕事や職場環境に慣れ、専門的なスキルを身に付けることが可能です。
また、就職して一定の収入が得られるようになれば、高校に通うための金銭的な負担が軽減されます。
家計の支援や、自立した生活を目指すことができるでしょう。
しかし、高校を卒業していない場合、一部の職種や企業では採用の条件を満たせないことがあります。
また、高卒以上の学歴を持つ人と比べると、初任給の金額が低かったり、昇給や昇進が難しかったりというデメリットが存在します。
高校で学ぶ基礎的な学力や一般教養が身についていなければ、就職後の社会生活に支障が出ることもありえるでしょう。
不登校を乗り越えて学校に通い、高校を卒業するのは困難な道に思えるかもしれません。
しかし、できるだけ高校卒業を視野に入れた進路を目指すことが、将来の選択肢を広げる手助けになることを知っておきましょう。
不登校でも高校を卒業するためには
学校へ行くことが辛い時に、高校に行くのはおろか、卒業するまで通い続けることは想像しにくいかもしれません。
しかし、大学・短大・専門学校への進学や、就職後の昇給やキャリアアップの面でも、高校を卒業することは大変重要なステップです。
不登校でも高校を卒業するための方法はひとつではありません。
自分に合った方法を探すためにも、高校卒業を目指せるさまざまな道について知っておきましょう。
今の学校に復帰する
もし、不登校の背景になっている出来事を解決できるのであれば、今の学校に復帰することが高校を卒業するための最も効率的な方法です。
一般的に、以下のステップを踏んで復帰に向けて動き出す必要があります。
- 学校と家庭が連携し、不登校の原因を共有する
- 子どもが安心して学べる環境を整える
- カウンセリングなどを活用して子どもの心をサポートする
- 不登校期間の遅れを取り戻す学習計画を立案する
まずは学校と連絡を取り、今後の具体的な対応について、納得いくまで話し合いましょう。
保健室登校や、登校時間をずらすなど、安心して学校へ通えるように工夫することも大切です。
先生との話し合いだけでなく、スクールカウンセラーや信頼できる第三者機関に間に入ってもらい、子どもの心を支えながら復帰を目指しましょう。
親と学校の中だけで解決したと思わず、子どもの気持ちを第一に考え、希望に沿った方法を考えることが最も大切です。
不登校になった原因をしっかりと調査し、親や学校が一丸となって解決に向けて取り組むことが、今の学校に復帰して高校を卒業するための第一歩になるでしょう。
高卒認定試験を受ける
高卒認定試験は、高校を卒業できなくても「高校卒業と同等以上の学力があることを認定するための試験」です。
自宅で学習を続け、高校卒業レベルの学力を身に付けられれば、3年間学校に通わなくても高卒認定試験を受けられます。
試験に合格することで、大学・短大・専門学校への進学に必要な資格を取得することが可能です。
しかし、学校で定期テストを受けるなどの学習経験がない場合や、基礎的な学力や一般教養が足りない場合、試験の難易度に対応できない可能性があります。
また、高卒認定試験に合格しても、高校卒業と同等の資格が得られるだけで、最終学歴は高卒にはなりません。
一部の企業や職種では、就職の際に高校卒業以上の学歴が求められる場合があります。
高卒認定試験の合格は、一般的な高校卒業とは異なる学歴であることを知っておく必要があるでしょう。
別の学校へ転校・編入する
今通っている学校に合わない友達がいる、学校自体が合わないことが不登校の原因になっている場合は、別の学校へ転校・編入することで不登校から抜け出せる可能性があります。
高校を転校・編入するためには、いくつかの条件があります。
- 転校したい高校に欠員がある
- 転校に必要な試験に合格する
- 志望校が指定する都道府県内に居住地がある
- 転校前の高校に籍がある
- タイミングは学期が変わる時
行きたい高校に欠員があり、試験に合格できれば、転校が可能です。
しかし、全日制高校への転校には、高校によるカリキュラムの進め方や、欠席日数も影響してきます。
転校前の学校と転校先の学校の授業内容や進め方が極端に異なる場合や、欠席日数が多く卒業のための条件を満たせない場合は、転校や編入ができないこともあります。
条件をクリアできれば、転校・編入は不登校の高校生が高校卒業を目指すための方法のひとつになるでしょう。
通信制高校へ転校する
もとの学校へ通うのが難しい場合や、別の高校への転校・編入が難しい場合は、通信制高校へ転校するのも、不登校でも高校を卒業するための方法のひとつです。
通信制高校は学校に通いながら学ぶ高校とは異なり、インターネットや郵送などを通して教材を受け取り、自宅などで自主的に学習を進める高校です。
通信制高校には、不登校の高校生が学生生活を続け、卒業を目指しやすいさまざまなポイントがあります。
自分のペースで勉強できる
通信制高校では、通常の高校よりも臨機応変な学習スケジュールを組むことができます。
全日制高校は学年制ですが、通信制高校は単位制という学習方法を取り入れています。
学年制:授業を受け、テストを受けることや出席日数などの基準を満たすことで進級できる
単位制:レポートやテスト、スクーリングによって決められ単位を取得することで進級できる
通信制高校では単位を取得すれば進級できるため、学習方法や進み具合を自分のペースで調整することができます。
自分の学習の速度や、理解度に合わせて勉強ができるため、授業についていけずに困ることがなくなるでしょう。
また、不登校で学校へ行けない間に学べなかった科目や、授業内容を理解できていないものを学び直せるカリキュラムを提供している高校も多くあります。
自分のペースで学び深めることができ、勉強への苦手意識を克服できることは、自分に自信を持つことに繋がります。
不登校の高校生が前向きに学生生活を続ける手助けになるでしょう。
集団生活が苦手でも大丈夫
通信制高校は自宅や図書館など、自分が学習しやすい場所で学べる学校です。
学習に必要な教材や課題はオンラインを通じて提供され、コンピューターやタブレットを使って学習を進められます。
自分のペースで学習できれば、他の生徒と自分を比べることがないため、集団でいることによるプレッシャーを感じずに高校生活を送ることが可能です。
集団生活が苦手な人にとっては、大人数での授業や人前での発表の機会だけでなく、学校生活自体がストレスになることがあります。
通信制高校でもスクーリング(通学して受ける面接授業)はありますが、登校する回数は全日制高校に比べて少ないのが特徴的です。
人間関係で悩む機会を減らすことができるため、不登校の高校生でも高校卒業を目指しやすくなります。
コースの変更が可能
通信制高校にはさまざまな学習のためのコースが用意されています。
通学する日数や、学びたい分野、進学や進路に合わせた自分に合った学習方法を選ぶことが可能です。
さらに、一歩進んだコースに進めそうな時や、コースの内容が自分に合わない場合は、コースを変更することもできます。
自分が通学できる日数によってコースを選べるのが、通学コースです。
オンライン学習のみで通学日数を最低限に抑えたコースから、週1日のみ、週3日、週5日の登校など、学習スタイルはさまざまです。
体や心の状態に合わせて、登校頻度を増やしたり、減らしたりできるため、不登校の高校生でも自分のペースで無理なく学ぶことができるでしょう。
また、専門コースとして様々な分野に秀でたコースを展開している学校も多くあります。
文化・芸術スポーツ情報技術ビジネス・経済医療・看護教育語学・留学環境
この他にも、本格的に大学進学を目指すコースなども提供されています。
入学してから、コース内容が自分に合わないと感じた場合、1年ごとや学期ごとにコースを変更できる学校もあります。
今まで通っていた高校では学べなかった、興味のある分野について学べる可能性が高まり、卒業へ向けて学習のモチベーションを高めるきっかけになるかもしれません。
ID学園高等学校では、通信と通学あわせて全6コースを展開しています。
生徒一人ひとりの希望に合わせた学校生活を送ることが可能です。
受験や就職のサポートが受けられる
通信制高校には、大学受験や就職のためのサポートを受けられる学校も増えています。
進学を目指したい場合は、大学進学コースや、受験勉強のための個別指導に力を入れている学校を選びましょう。
また、大学進学実績などを参考にするのもおすすめです。
さらに、通信制高校によっては塾や予備校と提携している学校もあります。
大学受験のノウハウや受験勉強に特化した授業やシステムを導入している学校であれば、進学のための援助を惜しみなく学生に与えてくれるでしょう。
卒業したらすぐに就職したい場合は、就職後に役立つスキルを学べる専門コースを受講することもできます。
高校に在籍している間に資格やスキルを取得できれば、就職に有利になるでしょう。
また、就職に関してカウンセラーのサポートが受けられる学校や、企業の説明会に定期的に参加できる学校もあります。
不登校の高校生が将来の進路を見据えた目標を持てることは、高校卒業を目指す気持ちをより後押ししてくれるでしょう。
不登校の高校生でも高校卒業を目指せる!一歩ずつ進んでいこう
高校で不登校になり学校へ行けない日が増えてくると、卒業への不安や焦りを感じ、将来への希望や目標が見えなくなってしまうかもしれません。
しかし、不登校の高校生でも、今の学校に復帰する、別の学校へ転校する、通信制高校に転校するなど、自分に合った学習スタイルを選ぶことで、高校で学び続けることが可能です。
無理なく体や心の負担を軽減できる方法で、一歩ずつ前を向いて進んでみましょう。
立ち上がる力を信じて一歩を踏みだすことが、高校卒業を目指すとともに、卒業後の人生の可能性を広げることに繋がります。