不登校のお悩みとしてよく挙げられるのが昼夜逆転です。
「夜中にゲームばかりやっていて、子どもの今後が心配」
「夜に活動して朝起きられず、昼夜逆転の治し方がわからない」
このような思いを抱える保護者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不登校における昼夜逆転にスポットを当て、その原因と改善方法をご紹介します。
目次
不登校での昼夜逆転はよくあること
不登校になると、生活リズムが乱れて昼夜逆転がよく起こります。
実際、文部科学省の調査で「小中学校時の不登校で生活リズムが乱れたために、生活の中で苦労や不安があったか」という趣旨の質問に対し、次のような結果が得られています。
不登校中に生活リズムが乱れ苦労したか
おおいにあった | 33.8% |
少しあった | 34.0% |
まったくなかった | 32.2% |
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1349956.htm
「おおいにあった」「少しあった」の回答をあわせると、67.8%が生活リズムの乱れに悩まされていたということになります。
この結果からわかるように、不登校における昼夜逆転は珍しいことではないと認識し、冷静に対応していきましょう。
不登校で昼夜逆転する5つの理由
では、なぜ不登校と昼夜逆転生活が関係しているのでしょうか。
理由としてよく挙げられる5つをご紹介します。
周囲が活動的な日中には起きていたくない
登校できないことへの罪悪感を抱えている子どもは少なくありません。
一般的な登下校時間である朝や日中は、周囲の学生の声が聞こえてくることもあり、自分の不登校を再認識してしまう時間帯です。
その気持ちから逃げ出すために、昼間ではなく周囲が寝静まる夜中に活動して心を落ち着かせます。
夜に活動することによって昼間の時間を寝て過ごせるため、昼夜逆転の方が精神的に安定して過ごしやすいという子も多いでしょう。
生活環境の変化
子どもたちは、進学や進級のタイミングで生活環境が大きく変わることがあります。
- 自宅から遠い高校へ進学したため、朝は早く帰宅は夜遅いという生活になった
- 部活動で帰宅時間が遅くなった
- 塾の授業が終わる時間が遅く、寝る時間も遅くなる
- 新しいクラスの先生や友達となかなか馴染めず常に不安がつきまとう
- 転校によって毎日学校へ行くのがつらい
以上のような例が考えられます。
まとまった睡眠時間が確保できていないと、毎日の疲れがとれないだけでなく精神的にも余裕がなくなってしまいます。
学校へ行けていたとしても、夜に寝られない分、学校で寝ているというケースも少なくないでしょう。
昼夜逆転に近い状態で心身ともに疲労とストレスが溜まっていった結果、不安要素がどんどん大きくなり不登校へつながってしまいます。
自己管理の難しさ
自己管理は子どもだけでなく大人でも難しいものです。私たちは皆、学校や仕事に遅れないように朝決まった時間に起き、次の日の朝寝坊しないように夜更かしせず寝ているはずです。
不登校になると学校という縛りがなくなるため、朝起きて決まった時間に何かをする規則正しさが乱れてしまいます。
ゲームなどによる睡眠不足
ゲームなどによる睡眠不足は現代の中高生に増えてきている傾向があります。延々とゲームをしていたり、スマートフォンで動画を観たりして気がつくと朝方という子どもは少なくありません。
これは不登校でなくても十分あり得るのですが、学校生活から逃げ出したい気持ちが強い不登校の子の場合、現実とは異なるゲームなどの世界に熱中しやすい傾向があります。
人の体は本来、日光を浴びると昼間だと感じ、暗くなると夜だと感じて眠くなるようにリズムができています。
しかし、スマートフォン・パソコン・タブレットなどから発される強い光を受け続けると、脳は昼間だと勘違いして覚醒し、眠りが浅くなったり疲れが取れなかったりする可能性があるのです。
夜中までゲームをしていて寝るのが遅くなり、さらに体内時計の乱れから寝付きが悪く疲れが取れない状況だと、朝起きるのはますます難しくなるでしょう。
病気や障害が隠れている可能性も
不登校や昼夜逆転にはさまざまな原因がありますが、病気や障害が関わっている場合があります。
不登校の要因となる病気や障害の一例
うつ病 | 気分が落ち込みやすく悲観的になる。 疲れやすいのに眠れないなどの症状が出る |
起立性調節障害 | 自律神経の異常により、めまい・頭痛・倦怠感・寝付けない・朝起きられないという症状が出る。 |
睡眠相後退症候群 | 本来眠るべき時間に寝付けず、朝方になってやっと眠れるという症状のため、朝起きることができない。 |
ケガなどの外的な不調と違い、心の不調は周囲の人はもちろん本人でも気付かないことが多いのが特徴です。
病気や障害が原因で不登校になることもあれば、不登校や昼夜逆転がもとで病気になるということもあります。
楽しみな予定があっても起きられないなど少しでも気になる様子があれば、医療機関や専門家に相談してみましょう。
生活リズムを整える方法
昼夜逆転を改善していくには、生活リズムを整える必要があります。
いきなり全ては難しいですが、取り組みやすいところから実践してみてはどうでしょうか。
時間を意識して生活する
学校に行かず、時間的制約のない中で生活リズムを整えていくのは難しいものです。
24時間をどう過ごすか細かく決めるのは現実的ではないため、まずは「起床時間」「就寝時間」「食事の時間」のどれかからおおまかな時間を決めて、できる限り毎日続けるように意識するのがおすすめです。
- 夜は23時までに寝ることを最終目標に、一日30分ずつ早く寝てみる
- 朝は朝日を浴びられるような時間帯、午前中には起きる
- 食事は家族と同じ時間に食べる など
時間を意識しながら生活すると、そのリズムに合わせて自分の行動を決められるようになります。
「食事の時間だから一旦やめよう」「あと2時間くらいで寝ないと」と自然と思えるようになるのを目指しましょう。
守れなかったらダメ!とは考えず、週に数回でも達成できれば成功です。
昼間に体を使う
スムーズに眠りにつくには、適度に頭や体を使う必要があります。
夜の時間帯に寝るために、30分程度の散歩をしたり好きなスポーツで汗を流したりしてみましょう。
登下校時に遭遇したくない、周囲の目が気になるという場合は午前10時以降が外に出やすい時間帯です。
体を動かすと心地よい疲れとともにストレス解消にもなります。
頭を使うのも効果的で、読書やパズルなどは寝る前にもおすすめです。
タブレットやスマートフォンの光は脳を覚醒してしまうため、睡眠の妨げに。
寝る前には使わないよう注意しましょう。
昼夜逆転の改善には親のサポートが重要
子どもの昼夜逆転を改善させるには、家庭を安心できる場所にすることが大切です。
家庭での親のサポートが子どもにとって大きな力となります。
昼夜逆転の状態を治したい気持ちは、親だけでなく子どもも同じです。
一番身近にいられる親は、子どもに寄り添いながらサポートを続け、いつでも味方でいると伝えてあげましょう。
昼夜逆転を責めない
誰も昼夜逆転を望んでやっているわけではありません。
「夜更かしはやめなさい!」「早く起きて朝ご飯食べなさい!」と毎日親に言われる環境では子どもの心は休まらないでしょう。
まずは、昼夜逆転になってしまっている現実を受け入れ、子どもの話をいつでも聴けるように心の準備をしておいてください。
昼間に用事を作る
学校に復学するためには昼型の生活をしなくてはなりませんが、不登校の最中に「学校へ戻るために昼型にしないと」と目標を立ててもうまくはいかないでしょう。
学校からは少し離れ、子どもの興味があることに焦点を当ててみるのがおすすめです。
- 趣味に関するイベントがあるから行ってみる
- 新しいお店に行きたい
- みんなが学校へ行っている時間で自分は○○がしたい
どんなきっかけでもかまいません。
子どもの自己肯定感を高める
不登校であり昼夜逆転にもなってしまっている子どもは、自分はみんなと違う、ダメなんだと思いがちです。
状況の改善のためには、自己肯定感を上げる対応を心がけましょう。
- 子どもの得意なことを伸ばす
- 小さな役割を与えて存在意義を感じられるようにする
- 手伝いなどをしてくれたら褒める
- 常に子どもを肯定する声かけをする
周囲にも助けを求める
不登校の子どもに対して、親は自分だけ、あるいは家庭内だけで問題を解決させようと思う傾向にあります。
場合によっては「周りの人に不登校だと知られたくない」という心理がはたらくことも。
しかし、親だけでできることには限界があり、不登校や昼夜逆転に有効な対応を取りきれないかもしれません。
大切なのは、子どもの不安を取り除き、安心して生活できるようにすることです。
そのためには学校はもちろん、友達やカウンセラー、不登校の相談機関などの力を頼る必要があります。
「私が解決しなくては」よりも「解決のために親として何ができるか」を考えてみましょう。
不登校の昼夜逆転は改善できる!ゆっくり親子で取り組もう
不登校はどんな子どもでもなり得ますし、不登校状態での昼夜逆転も決して珍しいことではありません。
本人が時間を意識しながら過ごすのはもちろんですが、親にもできることはあります。
昼夜逆転の原因は何なのかを考え、常に子どもをサポートしながら解決を目指していきましょう。
親が味方になってくれるだけでも子どもの心は安らぎます。
焦らず、自分だけで解決させようとせず、周囲を頼りながらさまざまな方法を試していくことが大切です。
時間はかかっても、きっと明るい毎日を取り戻せるでしょう。