親世代が学生だった頃に比べて珍しくなくなった「不登校」。
朝起きて、学校に行きたくない日はどんな生徒にもあるでしょう。
その原因は実にさまざまで、休みがちになった結果、不登校につながってしまうケースも少なくありません。
気まぐれなのか、数日休めば行けるのか、どうしても行けない理由があるのか……親としては不安が大きいものです。
今回は、不登校の6つのタイプについて解説し、不登校の子どもへの接し方や解決事例もご紹介します。
目次
不登校のタイプは6分類される
不登校と聞くと学校に行けていない生徒のことをイメージしますが、文部科学省の調査では次のように定義されています。
“「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、心身的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。”
引用:「不登校の現状に関する認識」.文部科学省.https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
不登校の状態や特徴には共通点があり、大きく6つのタイプに分類できます。
しかし、不登校になってしまう原因は生徒の数だけ存在するため、どれかにはっきり該当しなかったり2つ以上にまたがっていたりすることも考えられます。
分類は参考程度と捉えながら、それぞれ見ていきましょう。
「不安など情緒混乱」型
「不安など情緒混乱」型は、学校に行く気はあるのに登校時間になると気分の落ち込みが大きく、頭痛や腹痛といった身体症状が出るタイプです。
真面目な子、頑張り屋さんな子に多く、勉強も生活も模範的に頑張る反動で、気持ちの落ち込み方、混乱も大きくなってしまいます。
朝は体調が悪いのに、休むと午後には元気になっているというサイクルが多いため、仮病を使っているのではないかと思われがちです。
本人は学校を休んでしまうことへの罪悪感が強く、精神的に大きな負担がかかっており、外へ出ずに引きこもってしまう傾向があります。
体調不良を伴うため、無理に登校させようとすれば悪化してしまい、放っておいても見放されたと不安を感じてしまいます。
対処法としては、ここまで駆け抜けてきた子どもに対し、さらなる気合いを要求するのは酷であるため、まずはゆっくりと休める環境を作ってあげましょう。
何事にも一生懸命取り組んできた経緯を認めて褒めつつ、本人がこれからどうしたいかを尊重して心を軽くすることが大切です。
回復に時間がかかるタイプと考えられていますが、小さな目標を立ててクリアしていくことで少しずつ進んでいけるでしょう。
「無気力」型
いじめや勉強の遅れなど、明確な理由はないものの「なんとなく行きたくない」と感じてしまうのが、この「無気力」タイプです。
学校を休む原因が本人にもわからないため、怠けているように見えてしまい、家族も登校を強く進めることが多いです。
このタイプの子どもは怠けているわけではなく、本人の自己肯定感が著しく低かったり、幼少期の何らかの経験により意欲がわかなくなってしまったりしている可能性があります。
無理に登校を促しても結局は長続きせず不登校を繰り返してしまうため、漠然と「学校へ行かなくてはいけない」「自分のためだから」と押しつけず、興味を持てることから少しずつ自主性をつけていくとよいでしょう。
家族が一緒に体を動かしたり、家庭内での役割を与えたり、外の人との関わりを持ったりと、子どもの変化を「待つ」対処より「積極的に関わる」ことで経験値を増やすのがおすすめです。
「学校生活上の影響」型
先生との関係がうまくいっていなかったり、いじめを受けていたり、勉強についていけなかったりという、学校での問題が原因で登校できなくなるのが「学校生活上の影響」型です。
先生と相性が悪い場合、不登校となってしまっていても、クラスや担任が変わるタイミングで心機一転登校できるようになることがあります。
いじめや嫌がらせがある場合は、できる限り問題をクリアにする必要があります。
被害者側が学校に行けないのでは何も解決せず、不登校も長引いてしまうでしょう。
親と学校が連携して、再び笑顔で登校できる日が来るよう対処しなくてはなりません。
勉強についていけない場合は、学力アップにより自信がつけば不安が解消され、登校につながると考えられます。
勉強時間の確保は自宅でもできることなので、本人にとってよりよい形で勉強を進められるよう配慮が必要です。
本人に勉強したい意思があっても、発達障害などが原因で周りと同じように勉強に集中できない、あるいは教室で大人数とともに過ごすことが苦痛であるとも考えられるため、まずは保健室など緊張しない空間から登校を慣らしていくのもよいでしょう。
教師だけでなくカウンセラーなどの専門家にも相談することで、違う解決策が見えてくるかもしれません。
この学校生活での問題が長期化すると、「不安など情緒混乱」型へ移行する可能性があるといわれています。
「あそび・非行」型
遊びが優先されたり、非行グループとの付き合いが増えたりという原因で登校しなくなるのが「あそび・非行」型です。
このタイプは小学生には少なく、中学生・高校生で多く見られます。
学校へは行かないものの自分の部屋に引きこもるわけではなく、昼夜問わず遊び歩く例が大半です。
大人との関わりが増えることで犯罪に巻き込まれてしまう危険性もあります。
きっかけとしては、交友関係の広がりで徐々に付き合う仲間が変わっていくこともありますが、虐待などによって家庭に落ち着ける場所がなく、外に逃げ出すしかないケースもあると認識しておきましょう。
その場合、子ども本人へはもちろん、家族へのサポートも重要になります。
昨日まで元気に学校へ来ていた生徒がいきなり非行グループに入るとは考えにくいため、遅刻や無断欠席など、学校生活での些細な変化に気付けるかが初期対応のポイントです。
学校と親だけでなく、児童相談所や地域のサポート施設などにも相談して一緒に対処できるのが理想的です。
生活リズムを少しずつ昼型に整え、勉強に対するモチベーションのきっかけを何か与えられれば、不登校から抜け出す大きな一歩となり得ます。
「意図的な拒否」 型
学校へ通うという行為にそもそも必要性を見いだしていないのが、「意図的な拒否」 型
です。
- 集団行動が苦手
- 学校より自宅で勉強した方が効率がいい
- やりたいことがあるので学校に行っている時間が無駄
- 将来のための準備に時間を使いたい
- 親が学校に行く必要はないと言っている
このようなはっきりした理由と意思をもって、登校を拒否しているのが特徴です。
目的と理由があって前向きに過ごしているのであれば、無理に登校を促す必要はないでしょう。
親の意思で学校に行かせたい場合は、本人の気持ちを尊重した上で、話し合いをおこなうことが大切です。
「複合」型
「複合」型と呼ばれるタイプでは、例として次のような気持ち・状況の変化があり得ます。
- 最初は人間関係がきっかけとなり学校に行きたくなくなった
- 学校のことを考えると体調が悪くなるようになった
- こんなことを誰にも相談できない
- 学校に行っていないのに外に行くのも嫌だし、部屋から出なくなった
最初は1つの些細なきっかけでしたが、そこからどんどん派生して、立ち直るのが難しいほどの状況に陥ってしまうケースが少なくありません。
現在、不登校状態にあるのはどんな理由からなのか、それがわからないと対処の仕方も定まらず、解決が困難になってしまいます。
発達障害が原因の一端と考えられる場合は、専門の支援機関やカウンセラーに相談して、できることから対応していくのが先決です。
そして、本人が最も大きな悩みとして捉えている内的な部分について親子で、時には専門家を交えて向き合っていくことが大切です。
不登校を早く脱出させようと焦らず、周囲が気長に付き合っていくことが大きな支えとなります。
不登校になりやすい例
今は大丈夫でも、何かのきっかけで不登校になることは誰にでもあり得ます。
特に「不登校になりやすい」と考えられている3つの例をご紹介します。
家庭が原因
家庭環境による要因にも、いくつかのパターンがあります。
【環境の変化】
親の離婚や再婚、引っ越しや家庭内不和といった家庭の事情が、不登校の引き金となる場合があります。
新しい環境への適応には大きな不安がつきものです。
その不安が学校生活にも影響し、なんらかのタイミングで不登校へ発展してしまうことがあるのです。
お子さんへのサポートだけでなく、必要に応じて家庭へのサポートが解決への一歩となるでしょう。
【引き離される不安】
母親と離れたくないあまり、不安で不登校になることがありますが、その逆で母親が子どもと離れられずに不安を与えてしまうケースがあります。
いきなり引き離しては互いに逆効果であるため、少しずつ安心感を与えながら、離れて過ごしても大丈夫だと理解することが大切です。
【甘やかし】
家族や周囲から甘やかされすぎて育つと、必要な我慢ができなかったりコミュニケーションがうまくとれなかったりする可能性があります。
その結果、学校での集団生活に馴染めず、不登校となるケースが少なくありません。
成長とともに自分の身の回りのことができるようになる、他人の手伝いができるようになるのは、自分で身につけられることではなく、親との関わりで学ぶことが多いです。
「いつまでも子ども」と思ってなんでもやってあげたくなる気持ちもわかりますが、自立心は成長においてとても大切です。
- 甘やかしすぎていないか
- 過干渉になっていないか
- 先回りしてなんでもやってあげていないか
- 答えを与えすぎて、自分で考える機会を奪っていないか
これらのポイントに気をつけながら、子どもとの関わり方を見直してみるとよいでしょう。
自分のことは自分でできる、目標を立てて成し遂げられる人間になるために、家庭でも自立心を養う付き合い方が必要になります。
優等生の息切れ
勉強やスポーツなどを懸命に頑張り、周囲の期待に応えようとしてきた生徒が不登校となる場合があります。
真面目・几帳面・神経質・完璧主義といったいわゆる「優等生」が、あるきっかけで躓いてしまい、立ち直れなくなるというケースです。
頑張るのは決して悪いことではありませんが、過度な頑張りは自分の気力と体力を大きく消耗してしまいます。
日々の生活の中で子どもが無理をしていないか、頑張りすぎていないか、時々目を向けてあげるとよいでしょう。
立ち止まったときに「できなくても大丈夫」と言ってくれる心の拠り所があると、気持ちに大きな余裕ができるはずです。
無気力(怠け者)タイプ
無気力(怠け者)タイプとは、実際に怠け者なわけではありません。
ストレスを感じる場面に直面したくないがために回避したり、家ではゲームや動画を見ることで現実逃避し、無気力になる傾向がある子どものことを指します。
いろいろなことを考えて気持ちが沈んでしまうのを避けるため、ゲームなどに集中して余計なことを考えないようにしていると考えられています。
何かに熱中することで自分の心をガードしているのですが、学校生活では向き合うべき問題が多いため逃げ続けた結果、学校自体に行くことを避け、不登校につながってしまいます。
放っておくと長期化してしまうため、興味のある分野と結びつけて将来の目標を作るなど、外へと興味が向くような関わり方が必要です。
不登校のお子さんへの接し方
不登校の子どもに対して、家庭でどのように接したらいいのか悩むこともあるでしょう。
まずは、「どうしてうちの子だけが」と悲観的にならず、不登校はどんな子でもなり得るものとして捉えましょう。
「親である自分のせいで不登校になってしまった」と自分を責める必要はありません。
過去への執着と原因追及ばかりをおこなっても、現状が好転するわけではないのです。
前を向いて小さな一歩を探っていけば、どんな不登校にも解決につながる道はあるはずです。
不登校の問題は家族だけで抱え込まず、学校・地域の相談機関・医療機関・カウンセラーなどを積極的に頼りましょう。
第三者の、中でもこれまで多くの不登校事例に関わってきた専門家の目が入ることで、家族だけでは気付けないものが見えてきます。
何でも話せる親子の間柄でも、学校に関する些細な問題や気持ちの変化を言葉にできない子は多いです。
- いじめられているなんて親に相談できない
- 逃げ出したみたいで自分がかっこ悪い
- こんな小さなことで学校に行けないなんて言えない
これらの理由から、子どもなりに色々と考えて一人で抱え込んでいる可能性があります。
話してくれない状況であれば、まずは無理強いせず「どんな理由があっても家族は味方だよ」と受け入れる姿勢を示してあげましょう。
結果として、悩みを少しずつ話してくれることもあるでしょうし、安心感が支えとなって自分で踏み出せることもあります。
どの不登校タイプだとしても、子どもに安心感を与えること、寄り添う姿勢を見せることが解決への第一歩です。
不登校の解決事例
最後に、不登校の解決事例をご紹介します。
些細なきっかけで始まる不登校がどのように解決したのか、「こんなこともあるんだ」と前向きな事例を知っていただきたいと思います。
【事例1】登校時間になるとお腹が痛くなる
小学生のRさん。
友人関係での問題もなく、勉強も運動も頑張っていた真面目な子が、秋頃から登校時間になると腹痛を訴えるようになりました。
トイレに行って解決するわけでもなく、登校時間に間に合わないこともしばしば。
学校に行ってしまえば大丈夫ではないかと思っていたものの、運良く学校に行けた日でも、今度は昼食時になると決まって腹痛が起きるようになりました。
朝学校へ欠席の連絡をしても、いつも昼頃には別人のように元気になっています。
「学校でまたお腹が痛くなったらどうしよう」という不安感を常に口にしていたため、その思いが朝と学校での腹痛を招いてしまっていたようです。
親としては「学校でお腹が痛くなっても、それ以上のことは絶対ないから大丈夫だよ」「辛いなら無理をしなくていいよ」と励ますことしかできませんでしたが、数ヶ月後には嘘のように登校できるようになりました。
きっかけとして考えられるのは学校の大きな行事を終えたこと。
本人がやりたいと言って引き受けた役が、思った以上のプレッシャーとなって知らず知らずに重くのしかかっていたようです。
「お腹が痛くなっても別に大丈夫!」となんとか自分でも考えるように意識していたことで、気持ちも少し強くなれたのかもしれません。
周囲の環境は大きく変わらずとも、時間の経過と自分の気持ちの変化により行き辛さをどうにか克服できました。
【事例2】学力に自信がなく、学校に行きたくない
高校生のKさん。
苦しい受験勉強を経て希望する高校に入学したものの、早い時期に壁にぶつかってしまいました。
早速レベルの高い授業についていくのが精一杯で、わからないところを振り替える余裕もありません。
友達と過ごす時間は楽しいのですが、勉強に余裕を見せながら遊ぶ時間も確保している友達の姿に、徐々にコンプレックスと強い焦り・不安を感じるようになりました。
必死に毎日を過ごす中で、心身ともに追い込まれてしまい、逃げるように学校を休んだ結果、さらに授業についていけなくなるという悪循環に陥ってしまいました。
「大学進学を希望して進学校に入ったはずなのに、このままでは苦しいだけでついて行くことすら、学校に行くことすらできない」と感じたKさんは、意を決して家族に相談し、通信制高校への転入を決めました。
「大学進学は叶えたい」
「勉強する意思はあるが、今の学校では難しい」
「学校の友達と一緒にいるのが辛い」
この3つが心の奥につっかえていた気持ちです。
その後は自分のペースで勉強を進め、大学進学を目指して頑張っています。
進学コースのある通信制高校を選択したため、ハイレベルな授業を受けられたり、進学サポートが充実していたりと全日制に遜色ない受験勉強ができているようです。
逃げ出すことを肯定するわけではありませんが、自分の気持ちを優先した結果、転入という選択肢が最良となったケースです。