高校を卒業した、もしくは同程度の学力があることを証明するものに、高卒資格と高卒認定の2種類があります。名前だけ見ると非常によく似ていますが、意味は全く違います。では、この2つが進学や就職に与える影響に違いはあるのでしょうか。
今回は、高卒資格と高卒認定の違いと高卒認定を取得するまでの流れ、高卒資格より高卒認定のほうが進学や就職に不利と言われている理由について解説します。どちらかを取得したいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
高卒資格とは
高卒資格とは、次の3つのうちどれかの高校を卒業することで取得できます。
- 全日制
- 定時制
- 通信制
一般的に「高卒」と呼ばれる学歴の持ち主は、高卒資格を有しているという意味で使われています。言い換えれば、いずれかの高校を卒業している人のことです。
取得方法
高卒資格を取得するには、先に上げた3種類の高校のうちいずれか1つを卒業しなければなりません。学校によりやや違いはありますが、全日制と定時制を卒業するためには全出席日の7割以上の出席と必要な単位を取得することで取得できます。
通信制高校の場合は、認定単位試験で単位を取得する必要があります。最低で74単位が必要となる点は、全日制・定時制と同じです。
また、3年間高校に在籍していなければ、高卒資格は取得できません。仮に退学を経験していたとしても、それまで取得した単位は新たに通う学校でも引き継ぐことができます。ただし、専門科目や一定の記述を過ぎてしまった場合は単位が消滅してしまう可能性もあるため注意が必要です。
難しい決まりや数字をあげて説明しましたが、要するに高校に入学して卒業すれば取得できる資格のことです。人によっては留年や休学、復学などを経験する可能性もありますが、卒業できれば取得できると覚えておけばいいでしょう。
高卒認定とは
高卒認定とは、試験に合格した際に高校卒業者と同程度の学力があると認めてもらえる資格のことです。文部科学省が主催しており、正式名称は「高等学校卒業程度認定試験」と言います。
何らかの事情で一度は中学校卒業後に就職したり進学しなかった人や、入学した高校を卒業できなかった人が受験することが多いようです。
大検(大学入学資格検定)との違い
高卒認定によく似た言葉として「大検」というものがありました。正式名称を「大学入学資格検定」と言い、2005年度から高卒認定へと変更された試験です。
従来の大検と現行の高卒認定では、受験資格と試験科目に違いはあるものの、指している内容はほぼ同じです。受験資格が中学卒業(中学校卒業程度認定試験に合格している者を含む)だったものが、高校在学者や休学中の生徒でも受験できるようになりました。また、試験科目についても家庭科や選択科目であった簿記、保健がなくなった代わりに英語が必修となっています。
何よりも名称が変更になったことで、高卒の人と同程度の学力があることを強調する形へと変更されました。その関係で、多くの高校を卒業できなかった人、高校へ進学できなかった人に活用されているのです。
取得方法
高卒認定を取得するには、8月と11月の年2回開催されている認定試験に合格しなければなりません。何らかの事情で高校を卒業できなかったり、進学できなかった人だけが受けられるように思われますが、高校在学中でも受験はできます。
試験科目は合計で8~10科目で全てで合格点を取得しなければなりません。しかし、今まで受験して合格した科目については免除されるため、一発合格できなかったとしても諦める必要はないでしょう。早ければ一発で合格できる人もいるため、試験に向けてきっちり対策しておくようにしてください。
高卒資格と高卒認定の違い
非常によく似た高卒資格と高卒認定ですが、その性質は大きく異なります。もっとも大きな違いとして、取得にかかる期間と最終学歴があります。どのように違うのかを詳しく見ていきましょう。
取得するまでの期間
高卒資格は、原則として全日制・定時制・通信制のいずれかの学校を卒業しなければなりません。そのため、最低でも3年の年月は必要で、その間に必要な単位も取得する必要があります。単位数も74単位以上となっており、1年間では取得できないようになっているのです。
一方の高卒認定は、高校卒業と同程度の学力を有することを認定するものであるため、中学卒業から最速で4か月あれば合格できます。試験の費用は受験科目数によって異なりますが、7科目以上の受験でも8,500円であるため、3年間高校に通うよりは費用を抑えられるでしょう。
ただし、これはあくまでも最低の費用であり、予備校や専門学校に通って認定試験に備える場合は別です。自学自習で対策するにしても問題集や過去問は購入しなければならないため、それらの費用がかかることを覚えておく必要があるでしょう。ちなみに、高卒認定講座の相場は、安いものだと2万円前後、高いものは数十万円します。予備校などで勉強する場合は、受講料も事前に調べておくようにしてください。
ちなみに、高校に通う場合は就学支援金が受けられて経済的負担を減らすことができるかもしれません。世帯年収910万円以下の世帯が対象で、1単位当たりで支援金が支給される制度です。世帯年収によって支援金額は変動するため、詳しくは文部科学省のホームページを確認するようにしてください。
履歴書に書ける最終学歴
履歴書に書ける最終学歴も、高卒資格と高卒認定では違います。
高卒資格は、高校を卒業して初めて取得できるため、履歴書上の学歴も「高卒」と記載できます。一方の高卒認定はあくまでも学力的に高卒と同程度であるということを示すものであるため、履歴書上は「中卒」となるのです。
ただし、最終学歴が中卒であっても、高卒認定を持っていれば就職時の応募資格に「高校卒業以上」と記載されている求人は応募ができます。人事担当者の理解不足で高卒者とは違った扱いを受けてしまうケースもあるようですが、応募は高卒資格を有する人と同じように応募できることを覚えておきましょう。
大学進学も同じですが、そもそも大学の受験資格は18歳以上であることが決められています。高卒認定を取得しても、いわゆる「飛び級」で大学に進学することはできないことを覚えておきましょう。
高卒認定を取得するまでの流れ
高卒認定を取得するには、毎年8月と11月に実施される試験に合格しなければなりません。受験するためには事前に勉強しなければならないのはもちろん、各種手続きなども進めておく必要があります。
受験までの大まかな流れは、以下の通りです。
- 願書を手に入れる
- 出願手続きを行う
- 試験本番を迎える
それぞれの過程で注意すべきポイントもあります。詳しく見ていきましょう。なお、試験の流れは文部科学省の方針で変更になる可能性があります。最新情報に関しては、文部科学省が公表している「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」のWebページを確認するようにしてください。
願書を手に入れる
高卒認定試験を受験するには、受験案内と願書をそれぞれ手に入れなければなりません。願書の入手方法は、大きく分けて次の2つです。
- 直接取りに行く
- インターネットで請求する
直接取りに行く場合は、文部科学省の2階にあるエントランスで行われている配布をもらいに行くか、各都道府県の教育委員会に取りに行く必要があります。教育委員会のどこで配布されているかに関しては、文部科学省のホームページで公開されているので参考にしましょう。
インターネットで請求する場合は、定められた期限内に請求をしなければなりません。文部科学省が公開している「高等学校卒業程度認定試験」のパンフレットにもQRコードが記載されています。
いずれにしても、一般的な受験と同じように願書を請求しなければ話は進みません。いつ受験するのかから逆算して、願書を手に入れられるように手配しましょう。
出願手続きを行う
続いて、出願手続きを行います。願書に必要事項を記入して提出すれば問題ありませんが、次のような注意点があります。
項目 | 注意点 |
受験願書と履歴書 | 記入の際はH・FもしくはHBの黒の鉛筆で記入すること(ボールペンは不可) |
受験料 | 収入印紙で納付 |
写真 | 4cm×3cmを2枚 |
住民票もしくは戸籍抄本 | 原本のみ受付 |
科目合格通知書 | 原本のみ受付 |
試験科目の免除に必要な書類 | 厳封された状態でなければ受付不可 |
個人情報の提供にかかる同意書 | 記入漏れが内容に記載 |
その他 | 氏名や本籍地の変更、身体上の理由による特別措置の希望は別途書類が必要 |
提出は郵送になりますが、一般郵便で出してはいけません。郵便局の窓口が受け付けている時間に、簡易書留で郵送するようにしましょう。受け取った書留郵便物等受領書は大切に保管しておいてください。
提出書類に不備がなければ、文部科学省から受験票一式が郵送されてきます。内容を確認して間違いがないかを見ておいてください。もし受験票に間違いがあれば、文部科学省に問い合わせて訂正してもらうようにしましょう。
試験本番を迎える
試験会場は、受験票と一緒に送られてくる地図に記載されている場所になります。令和5年度の試験の時間割は次の通りです。
引用:文部科学省「令和5年度 高等学校を卒業程度認定試験パンフレット(一般用)」
2日間にわたって行われるため、受験日の2日間は必ず開けておくようにしてください。科目の選び方によって、合格に必要な科目数が変わります。
試験後約1週間程度で、結果通知が郵送されてきます。インターネット上では合否が発表されないため、注意しましょう。
出題範囲は中学~高校1年生程度
「高卒」という名前がついているため、共通テストと同じような内容だと思っている人もいますが、内容は全く異なります。出題範囲も中学校で学んだ範囲から高校1年生で履修する領域までとそれほど範囲が広くないため、個人の努力次第で独学でも合格できる可能性は十分にあるでしょう。
ただし、最低でも8科目と受験する科目数が多いことから、無理をして自学自習で対策する必要はありません。塾や予備校などに通って、合格できるように対策を打つことも重要です。
合格率は40%程度と高くない
高卒認定の合格率は、全受験者の40%程度と決して高いとは言えない数字となっています。では試験内容が難しいのかと言われれば、そういうわけではありません。
色々な理由が言われていますが、最も大きいものとして、試験範囲が広く途中で断念してしまう人が一定数いる点です。後述しますが、高卒認定は一発合格しなければならないわけではなく、合格した科目数が8~10科目に到達すれば与えられるものです。1回での合格が難しかったとして、次回の試験で合格できなかった科目だけ受験できるため、無理をして一発合格にこだわる必要はないでしょう。
一度合格した科目は次回以降免除になる
高卒認定試験で一度合格点に到達した科目は、以降の試験で免除となります。免除を受けるには出願時に提出する「試験科目の免除に必要な書類」が必要ですが、累積して8~10科目で合格できれば、高卒認定を受けられるのです。
また、高校を中退してしまった人や不登校の生徒が高卒認定を受ける場合、通っていた学校の先生に申し出ることで一部科目を免除してもらえる書類を書いてもらえる可能性があります。学校長の判断によるため断定はできませんが、高卒認定を受験する場合は事前に学校に確認しておくといいでしょう。
他にも英検や数検などの資格を有していると、受験科目が免除になるケースもあります。詳しくは文部科学省のホームページか電話で確認するようにしてください。
高卒認定は進学や就職に不利?
結論から言えば、高卒資格を有している人と高卒認定を受けた人の間で進学や就職に優劣はありません。一昔前までは高卒認定を有している中卒者に対して不利な条件を提示する企業もありましたが、国が高卒と同等と呼びかけるようになったことで、改善にむかっている状況です。
大学も同様で、高卒認定を有している人物を足切りすることは少なくなりました。しかし、最終学歴が中卒である事実は変わらないため、就職後に差別を受けたり、受験の際に推薦が受けられなかったりすることもあるようです。
基本的に、企業は採用基準としての学歴を採用することが認められています。しかしながら就職活動においては書類の時点でそのような「フィルター」を突破することさえできれば、面接においてきちんと背景や事情を説明することができます。
例えば、何不自由なく高校を卒業したけれど不真面目で成績が悪い場合と、高校は卒業できなかったけれど努力して「高認」を取得した場合とでは、どちらを採用したいかは明白です。
高卒資格と高卒認定のどちらを取るべきなのか?
高卒資格と高卒認定に優劣はありませんが、この記事を書いている段階では、高卒資格の方が有利に見えます。最大のネックはやはり履歴書上に記載する学歴であり、高卒と中卒では勉強ができる方という理由で高卒者を採用する企業もまだまだ少なくありません。
では高卒認定が圧倒的に不利なのかと言われると、そういうわけでもないのも事実です。特に就職試験においては、面接でどれだけアピールできるかというところがポイントになるでしょう。
近年の企業の新卒採用では、学歴よりも人柄やスキルを重視する風潮が高まっています。国が高卒認定に対する見解を示したことも大きなきっかけになってはいますが、学歴重視の企業は圧倒的に減っているのも事実です。
とはいえ、高卒と中卒では、まだまだ比較されてしまう事実は拭えません。そこで活用したいのが通信制高校です。ID学園高等学校は通信制高校に含まれるため、必要な単位数を取得すれば履歴書に高卒と書くことができます。さらに、大学受験に備えるためにクラスも用意されており、独学で受験勉強をするよりも優れた環境が整っています。
何らかの事情で高校に通えていない、途中で辞めてしまった人は、ぜひ通信制高校への転入や編入を検討してみてください。
通信制高校のメリット
高卒資格の取得
繰り返しにはなりますが、通信制高校の最大のメリットはやはり高卒資格が取得できる点にあるでしょう。特に、全日制の学校に通うことが難しい生徒にとっては非常に大きなメリットとなります。
高卒認定では、決して簡単ではない試験にモチベーションを保ち続ける困難さもありますが、通信制高校では希望の通学や学習スケジュール通りに、学習の支援を受けることができます。
家庭の事情、健康上の問題、仕事との両立など、様々な理由で通学が困難な学生に対しても、進学や就職といった進路に向けたサポートが受けられます。
多様な生徒への対応
通信制高校は、多様な背景を持つ生徒に対応しています。
例えば、プロスポーツ選手や芸能活動を行っている学生、または特定の学問や技術に特化している学生など、様々なニーズに合わせた教育が可能なため、生徒一人ひとりの個性や目標に合わせた学習が実現できます。
上記以外にも不登校や病気などで全日制高校に通うことが難しくなった生徒も多く通信制高校を利用しています。そのような生徒それぞれの事業に合わせた受け入れ体制が整っている点も高卒資格と同じくらいのメリットと言えるでしょう。
何らかの事情で高校に通えていない、途中で辞めてしまった人は、ぜひ通信制高校への転入や編入を検討してみてください。
まとめ
国は高卒認定を受けた人を高校卒業と同程度であるとして、現在も残っている差別に対して解決しようと動いています。社会も徐々にそれを受け入れつつあるものの、最終的には学歴が足を引っ張ってしまい、細かなところで足かせになってしまうこともあるでしょう。
通信制高校は、自分の時間で自分の好きな場所で授業を受けられるため、何らかの事情で学校に行けていない人や中退してしまった人にも適しています。何よりも、高卒の学歴が履歴書に書けるのは大きなメリットです。高卒認定が悪いというわけではありませんが、今後の活躍の幅を広げるためにも、是非高卒資格を取得するために動いてみてはいかがでしょうか。