親は誰でも、不登校やひきこもりの子どもが心配で仕方ないものです。
その反面、「早く学校へ復帰させたい」という思いが大きくなり、かえって事態を悪化させてしまうような言動をとっているかもしれません。
この記事では、不登校とひきこもりとの関連性について解説するとともに、子どもへの接し方についてもご紹介します。
不登校とひきこもりを長引かせないよう、できることから一緒に実践していきましょう。
不登校とひきこもりは何が違うの?
不登校とひきこもりは、同じような意味に捉えられていることがあります。
実際は、それぞれどのような状態を指すのでしょうか。
不登校とは
まず、不登校についてですが、文部科学省では以下のように定義されています。
「不登校児童生徒」とは「何らかの心理的、情緒的、心身的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの」と定義しています。
引用:「不登校の現状に関する認識」.文部科学省.
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/03070701/002.pdf
「年間30日以上」は月に3日以上の欠席という計算になります。
不登校は学校に登校しない状態を指しますが、たまに登校していたり、保健室登校していたりというケースも含まれるのです。
長く学校へ来ていないのが不登校だと認識しがちですが、意外と欠席日数が少なくても不登校に該当するという事実に驚かれたのではないでしょうか。
ひきこもりとは
ひきこもりについては、厚生労働省で次のように定義されています。
「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学,非常勤職を含む就労,家庭外での交遊など)を回避し,原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す現象概念」
引用:「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」.厚生労働省.
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0000147786.pdf
「ひきこもり」というと、自室にこもったまま家族ともほとんど顔を合わせない状態をイメージする方が多いのではないでしょうか。
家から出ない人だけではなく、6ヶ月以上にわたって社会との関わりを避けている人もひきこもりに該当します。
ひきこもり状態でも、自分の趣味のためやコンビニなどへは外出しているのが実情です。
ひきこもりは子どもだけにあてはまるものではありません。
学生時代は学校へ毎日通えていて、大人になってからひきこもりになるというケースもあります。
不登校はひきこもりの原因なのか
ひきこもりの原因はおもに不登校であると思われがちですが、それは少し違います。
2016年の内閣府の調査によると、ひきこもりになったきっかけとして次のような結果が得られました。
過去にひきこもりになったきっかけ | 割合 |
不登校(小学校・中学校・高校) | 19.0% |
人間関係がうまくいかなかった | 16.5% |
就職活動がうまくいかなかった | 15.2% |
職場になじめなかった | 12.0% |
病気 | 10.1% |
受験に失敗した(高校・大学) | 3.2% |
大学になじめなかった | 1.9% |
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/hikikomori/h27/pdf-index.html
たしかに不登校がもっとも高い割合を示していますが、全体の2割程度にとどまっています。
他の理由との差も小さいため、不登校がおもな理由とは言えないでしょう。
また、そもそもの不登校の背景にあるのが、2位以下の「人間関係がうまくいかなかった」「就職活動がうまくいかなかった」「職場になじめなかった」という経験による可能性もあるのです。
データによると、ひきこもりも不登校と同様にさまざまな理由によって引き起こされているとわかります。
不登校・ひきこもりの子どもへの親の接し方8選
では、不登校やひきこもりの子どもに対して、親はどう接すればよいのでしょうか。
よかれと思ってやっていたことが実は親自身のためだったり、子どもを精神的に追い詰めてしまっていたりする可能性があります。
間違った対応は、不登校やひきこもりを長期化させているかもしれません。
状況が好転していないと感じたら、親の対応も見直してみましょう。
- 子どもの話を聞く
- 甘えだと決めつけない
- 無理に外出させない
- 登校を強要しない
- 原因を問い詰めない
- プレッシャーを与えない
- 子どものやりたいことを尊重する
- 第三者に相談する
これらの8つのポイントを順に見ていきます。
子どもの話を聞く
不登校・ひきこもりの対応としては、子どもの話を聞くことが最優先です。
子どもが自分から話してくれるタイミングを待ち、話の内容を否定しないようにします。
家族が肯定的であり、本心を話しても認めてくれれば、子どもにとって家庭は居心地が良く落ち着ける場所になります。
不登校とひきこもりのエネルギー回復には、家庭でのサポートが欠かせません。
親が心配や焦りを表に出してしまっているようでは、子どもは安心して親に相談も世間話もできないでしょう。
できる限り心を落ち着かせ、子どもに安心感を与えられるようにします。
甘えだと決めつけない
「不登校は、子どもの甘えだ」と決めつける人がいます。
子どもたちの中には、怠け心によって学校をさぼる子もいますが、不登校が甘えや怠けによるものと勝手に判断するのは違います。
不登校状態になるまでには、自分の中で悩み、葛藤し、どうにもならずにとうとう学校へ行けなくなってしまったという経緯があります。
甘えや怠けだという解釈は、子どもの心を深く傷つけてしまうでしょう。
「家族だけは理解してくれると思っていたのに……」と親子の信頼関係が崩れ、ひきこもりに発展してしまうリスクがあります。
無理に外出させない
子どもが自分から外出しないからといって、親が外出の機会を作るケースも見受けられます。
「外に出るようになれば学校へも行けるようになるだろう」という安易な考え方は避けましょう。
不登校やひきこもりは何らかの要因が子どもの中で積み重なり、学校に行けなくなっている状態です。
学校へ行けない自分に劣等感を感じている子の場合、「外出したら知り合いに会うのではないか」というストレスが押し寄せてくることも想像できます。
本人もできることなら外出したいはずですが、自分の意思とは別のところで親が何度も外に連れ出そうとすると、苦痛に感じてしまうでしょう。
より一層、外の世界への恐怖や嫌悪がつのり、状況を悪化させてしまうかもしれません。
登校を強要しない
不登校もひきこもりも、元の学校への復帰を最終目標としていないでしょうか。
たしかに将来のことを考えると、学習面でも社会性を養うという意味でも、学校へ毎日通うのは重要です。
しかし、行きたくないと言っている子どもに登校を強要することは問題の根本的な解決にはつながりません。
むしろ状態を悪くする可能性の方が高いです。
学校に行けないには理由があります。
子どもが学校へ戻りたい、あるいは他のことがしたいと言うまでは、さまざまな選択肢の提案はしながらも、じっと本人の決断を待ちましょう。
原因を問い詰めない
不登校にもひきこもりにも何らかの原因があるはずですが、それを親のタイミングで問い詰めるのはやめましょう。
もし、子どもがいじめの首謀者や学校に行きたくない理由を話せば、大ごとになるかもしれません。
親を心配させ、悲しませてしまうのも容易に想像できます。
そのため、子どもなりに自分が親に本当のことを話す際の影響を考えて躊躇してしまうものです。
また、不登校やひきこもりの原因はひとつではなく複雑に絡み合っている場合があります。
きっかけとなるものがわかったからといって問題の解決になるとも限りません。
原因に関しては、子どもが自分から話したいと思うタイミングまで、親から問いたださずに待つ姿勢を貫くことが大切です。
プレッシャーを与えない
不登校で必要なのは心の休息です。
少しずつ回復してくると、外出できるようになったり、学校や将来に関しての話ができるようになったりと、子どもの前向きな姿が見られるようになります。
これは、回復を心から願う親にとって、とても嬉しいことです。
しかし、何かができるようになると「もっと!」と欲張ってしまうのが人間の悪いところで、不登校やひきこもりの子どもに対しては、その気持ちにブレーキをかける必要があります。
「今日は目標を達成できたから、明日はもっと増やしてみようか」
「さすが○○!この調子ならもう少し難しくしてもできそうだね」
「お店まで行けたから、次は学校の前まで行こう」
つい、こんな言葉をかけてはいないでしょうか。
褒める気持ちと期待の気持ちで言った言葉が、子どもにとっては大きなプレッシャーとなってのしかかる場合があります。
せっかくの回復傾向が止まってしまう、あるいは減退してしまう恐れがあるため、期待するような言葉がけはしないようにしましょう。
ひとつできたらすぐ次に進むのではなく、間に休憩をはさんであげてください。
そして、またやる気になったときに次の段階へ進みます。
大切なのは、親ではなく子どものタイミングに合わせることです。
親が先回りして何でもやってしまうのも、子どもの自立を妨げてしまいます。
あくまでも決断や行動は本人ができるように、手の出しすぎに注意しましょう。
子どものやりたいことを尊重する
子どものストレスを少しでも和らげていくには、やりたいことをできる限り尊重してあげるようにします。
学校に行きたくない時期なら行かなくてもいい、何か始めたいことがあるならやってみたらいい。
わがまま放題させるのとは少し違いますが、学校を離れて好きなことに没頭できた結果、学校復帰できるというケースも少なくありません。
結果を焦らずにほんの少しずつ進んでいけば大丈夫です。
第三者に相談する
不登校・ひきこもりの問題を親だけで解決しようとするのは危険です。
「事態を他人に知られたくない」「家庭内で解決しなくては」という心理がはたらくのは理解できますが、親だけの解釈では子どもをかえって追い詰めてしまうことにもなりかねません。
不登校やひきこもりには、専門知識と経験が豊富な相談窓口や支援施設があります。
学校とも密な連携を取っておくと、お互いの状況把握や早期の学校復帰につながります。
できる限り第三者に相談して、客観的なアドバイスをもらい、家庭内での対応に活かしていくようにしましょう。
不登校・ひきこもりには通信制高校という選択肢もある!
不登校・ひきこもりからの復帰は、元いた学校へ戻ることだけではありません。
本人に他の学校で学びを続けたいという気持ちがあれば、通信制高校への転入という選択肢があります。
毎日通学する必要がないため、不登校だとしても無理なく勉強を進められます。
通信制で得られる高校卒業資格は全日制や定時制と同じものです。
通信制高校では不登校の子を積極的に受け入れており、学校によっては学習や進路のサポートも充実しています。
やる気次第では通信制から大学進学も可能で、気持ちを新たに高校生活を再スタートさせるにはよい環境だといえるでしょう。
早い時期から大学進学を視野に入れている場合は、進学コースを設けている学校を選ぶと受験勉強もスムーズです。
親の正しい理解で不登校・ひきこもりとうまく付き合おう
不登校・ひきこもりの問題は、短期で解決するものではありません。
そのため、一番近くで見守る親はどうしても心配で焦りも感じてしまうことでしょう。
親の接し方について読み進める中で、もしかしたら耳が痛い内容があったかもしれません。
もし、子どもに対して「すでにやってしまった……」という言動があっても、まだやり直すことができます。
今この時点で正しい対応を知れて良かったと思いましょう。
不登校・ひきこもりである今は永遠ほど長く感じられますが、子どもの長い人生にとってはほんの短い時期です。
親の焦りは子どもにも伝わり、親の余裕は子どもの心にも余裕を生みます。
ぜひ、焦らずに長い目でみて、おおらかな対応を心がけましょう。