子どもが中学生で不登校というとき、心配になるのが高校受験やその先の将来のこと。
不登校でも高校進学は可能なのでしょうか。
「出席が足りなくても受け入れてくれる学校は?」
「学力は問題なくても、内申点がなければ合格はしない?」
「人と接するのが苦手だけれど、学べる場所はあるの?」
悩みはひとり一人によって変わります。
この記事では、進学先の候補や、学校に行かなくてもできる受験対策方法、親ができることを紹介しています。
目次
- 中学で不登校の生徒の進学率は高まっている
- 不登校で、高校受験は不利になってしまう?
- 不登校の受験生を受け入れている高校について、学校の種類別に紹介
- 学校へ通わずにできる受験対策
- 不登校の子どもと進路を考えるときに親ができること
中学で不登校の生徒の進学率は高まっている
クラス単位や学校単位で見ると、どうしてうちの子だけ学校にいけないのか、と悩んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、中学校で不登校になる生徒の人数は、全国で年々増えています。
文部科学省の調査によると中学校の不登校は以下の通りです。
- 平成28年度は3%
- 令和3年度では5%
不登校児童生徒の増加に伴い、子どもたちやその家族をサポートする環境も整ってきています。
さらに、文部科学省の平成26年の報告によると、中学を卒業した年の4月時点で、高校に進学した不登校の生徒は80.9%。
卒業後すぐには進学しなかったけれど、その後進学した生徒も含めると、高校へ進学した不登校の生徒は87.2%です。
これらの結果は、平成13年度に文部科学省から出された結果から大きく向上しています。
参考:「不登校に関する実態調査」 平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書.文部科学省.平成26年7月9日
不登校で、高校受験は不利になってしまう?
進学率が高いといっても、理想の進学先にはいけないのではないか?そんな不安を持つことも多いでしょう。
不登校が高校進学に不利になると言われる原因は、学校から高校へ送られる調査書にあります。
調査書に記載される、生徒の欠席日数と内申点が合否に関わるのです。
公立高校への受験は不利になる場合が多い
公立高校では、欠席日数が多い場合は「審議の対象とする」として、入試において不利になることが明記されていることが多いです。
同じく内申点が入試の評価に関わる割合も高いとされています。
欠席が続いて定期テストを受けていない、課題を出していない場合は内申点が下がってしまうため、入試は不利になってしまうのです。
私立高校は内申点や欠席日数を重視しない学校が多い
公立高校と比べて、私立高校は入試において、内申点や欠席日数を重視しない学校が多い傾向にあります。
しかし学校によって評価基準は様々。学力試験は行わず、面接や作文のみの入試もあります。
不登校の受験生を受け入れている高校について、学校の種類別に紹介
全日制高校
小中学校と同じように、朝から午後まで通う全日制の高校です。公立高校、私立高校と分けられますが、その中でも特徴があるのでご紹介していきます。
公立高校
公立の全日制高校は、内申点や欠席日数が入試の評価に大きく関わることから、進学が難しくなる場合が多いです。
もちろん、絶対に無理というわけではありません。
ただし公立でも、都立のエンカレッジスクールのように、小学校、中学校で不登校だった児童生徒のために設置された学校もあります。就学度別授業や30分授業が行われ、体験学習や自由選択の授業が多く、支援体制が充実しています。
私立高校
私立の高校は、学校の特色も、入試の形も様々です。
私立の入試の例をご紹介します。
- 試験日のテスト結果のみで判断する
- 内申点よりも入学試験の点数を重視する
- 不登校で内申点が低くても、事情を配慮する
- 面接と作文で合否を決める
等です。
公立と比べて学費は高くなりますが、子供の個性に合った学校を選ぶことができます。
定時制高校
不登校経験者や、働きながら学ぶために通う社会人、全日制高校からの転入生など、様々な生徒が通います。
公立高校が多く、東京にはチャレンジスクールという都立の定時制高校があります。
通う時間は17時から21時の夜間に通わなくてはならずの決められた出席日数は登校しなければなりません。また、通う時間が短いため、4年間で卒業するのが一般的ですが、1日の授業時間を長くして、3年間で卒業することも可能です。
通信制高校
基本的には学校に通わず、自宅での学習・レポート作成が主になります。中には通学コースを用意している学校もあり、通学日数を選べる場合もあります。スクーリングという、対面授業への出席は参加が必要ですが、全日制や定時制のように、毎日学校に通う必要はありません。
最短の在籍年数は3年間です。どの種類の学校よりも自由度が高い分、自主的に課題を進めていくハードルは高くなります。
3年間で卒業に必要な単位を取得するために、学習ペースや内容をサポートする、サポート校もあります。
学習面だけでなく、生活のサポートも受けられるため、通信制高校に通いながら、サポート校を利用する生徒も多いです。
学校へ通わずにできる受験対策
進学先について、ここまで3種類の高校を紹介してきました。
どのような進学先があるのかが分かっても、試験を受けるための準備はどうしたらいいのでしょうか。
不登校で、学校の授業を受けていない場合、学習進度が著しく遅れていることが多いのではないでしょうか。
子どもが「全日制の高校へ進学したい」「高校から頑張ろうという」という気持ちをもっている場合、内申点も必要になってきます。
ここでは、学力と内申点、両方の観点から、学校へ通わずにできる受験対策をご紹介します。
学力を高めたい
ある程度の学力を付けたいけれど、中学の学習内容を家庭でカバーするのは大変です。学力を伸ばすための方法を3つお伝えします。
塾へ通う
子どもが、学校へは行けないけれど、外出はできるという場合、通塾も選択肢のひとつです。
外へ出るきっかけにもなりますし、塾で友達ができれば、同年代の子とコミュニケーションの機会になります。
一斉指導の塾は、わからないことがあってもどんどん進んでいってしまい、行ってもどうせ分からない、とやる気や自信をなくしてしまう可能性が高くなります。
おすすめするのは、理解度に沿って進めてもらうことができる、個別指導塾です。
個別指導塾では、近くの大学に通う学生が講師をしていることも多く、子どもは、学校や塾の先生よりも親しみをもって接することができるかもしれません。
ただし無理強いは禁物です。
子どもとよく話し合って、一緒に見学に行き、通えるかどうか、子どもの意思を尊重しましょう。
家庭教師を呼ぶ
家庭教師を呼び、自宅で勉強をサポートしてもらうことも効果的です。
自宅で学習するため、学んでいるときの様子や学習の進み具合を講師に確認しやすくもあります。
オンラインスクールに通う
映像授業を受講したり、zoomやGoogle Meetなどのサービスを使って、オンライン授業を提供しているスクールもあります。
録画されている教材を見て学習を進める映像授業なら、自分のペースで進められます。
オンラインのリアルタイム授業なら、時間が決まっているため勉強時間のリズムを作りやすく、講師へ質問することも可能です。
NPO法人やボランティア団体のサポートを受ける
塾や家庭教師は費用が高額になりがちですが、NPO法人やボランティア団体など、低単価で授業を提供している場所もあります。
これも対面の授業と、オンラインの授業があります。
出席日数を増やしたり、内申点をあげたい場合
公立学校や、調査書の内容も合否に関わる私立を受験したい場合、出席日数を増やしたり、内申点をあげたりする必要があります。
学校に行かずにできることをご紹介。
フリースクールに通う
フリースクールとは、学校に行けない子どもたちの居場所となる民間施設です。
教科の勉強をしたり、体験学習を行ったり、遊びを通してコミュニケーションを学んだり、様々な教育が提供されています。
中学校の校長先生が認めるとフリースクールに行った日数が出席日数として数えられます。
お子さんに合ったフリースクールがあるかを探し、出席日数として数えてもらえるかどうかも学校に問い合わせましょう。
提出物を提出する
授業やテストを受けていなくても、宿題や課題を提出することで、その部分は評価可能になります。
定期テストを受ける
内申点に一番影響する部分です。
自分の力で行ったかどうかを判断するため家では受けられませんが、別室登校で受けられるか、学校へ確認してみてください。
不登校の子どもと進路を考えるときに親ができること
子どもの進路や将来が気になるあまり、子どもより親が焦ってしまうということはよくあることです。これは、不登校の生徒の親に限らないかもしれません。
ここでは、親ができる具体的なことをご紹介します。
お子さんと話す機会を増やす
進路や勉強のことだけではなく、雑談の時間も増やしましょう。
お子さんの好きなゲームやアニメ、マンガのことでも構いません。お子さんが自分から話さない場合、親が自分の趣味や好きなことを話すのもいいでしょう。
何を話せばいいか分からなければ、出かけたときに見聞きしたことや、テレビの話からでもいいのです。
話しやすい関係をつくることで、子どもが自分の考えていることを話しやすくなります。
文部科学省が実施した不登校児童生徒の実態調査によると、どうして学校へ行けないのか、「自分でもよくわからない」と答えた割合は、小学生で25.5%、中学生で22.9%に上ります。
子どもは、自分の気持ちや考えを言語化できないことがあるのです。
さらに同調査で、「学校を休んでいる間の気持ち」については、「勉強の遅れに対する不安があった」と答えた割合は、小学校で63.8%、中学校で74.2%。
「進路・進学に対する不安があった」と回答したのは小学校で47%、中学校では69.2%という結果が出ています。(いずれもあてはまる・少しあてはまると回答した児童生徒の合計)
話しやすい関係を作った上で、子どもの不安や気持ちを聞いていきましょう。
参考:令和2年度不登校児童生徒の実態調査 結果の概要.文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318-2.pdf
担任の先生やスクールカウンセラーに相談する
全国の不登校生徒の割合は年々増加しています。
学校の先生や、スクールカウンセラーは様々な不登校の児童・生徒と関わってきていて、支援ができる機関についても詳しく知っています。
子どもの家での様子を伝えた上で、適切な支援方法を相談しましょう。
支援機関からアドバイスをもらう
担任の先生やスクールカウンセラーから、支援機関を紹介されたら、その支援機関の担当者からアドバイスをもらうことができます。
親の会で情報収集する
不登校の子どもをもつ親のためのコミュニティは全国各地にあります。不登校の支援をしているフリースクールが主催していることも。
専門家からのアドバイスも聞けて、同じ悩みを持つ親同士で話すこともできる場所です。親同士のつながりをもつことで、相談しやすい関係も増えます。
自分の息抜きもする
子どもの将来のために、自分のことは後回しにしている親も多いかもしれません。しかし、お子さんの受験も、その先の人生も長期戦です。ずっと緊張し続けることはできません。自分がリラックスしている姿をお子さんにも見せることが、お子さんの肩の力を抜くきっかけにもなります。
子ども自身も不安があったり、焦っていたりすることがあるのです。
文部科学省の追跡調査では、中学生の時点で不登校であっても、85%以上が就学・就職して社会生活を送っている結果が出ています。
悲観的にならず、子どもに寄り添うことのできる心の余裕を持てるように、息抜きもしましょう。
参考:「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書.文部科学省.平成26年7月9日
まとめ
不登校が進学に不利になるのか、受験対策としてできることをご紹介してきました。
前提
- 不登校は年々増えていて、中学校では20人に1人が不登校を経験している
- 不登校の生徒も、8割以上が高校へ進学できている
不登校は受験において不利になるか
- 公立高校は、出席日数や内申点が合否に大きく関わるため、不利になることが多い
- 私立高校は、公立高校に比べて出席日数や内申点にされにくい
- 定時制高校、通信高校、チャレンジスクールやエンカレッジスクールなど、不登校の生徒の支援体制が充実した高校がある
受験対策
- 学力を高めるために、塾やオンラインスクールに通う、家庭教師を呼ぶという選択肢がある
- 内申点をあげるために、提出物を出す、テストだけでも受けられるようにする
- フリースクールに通うことで、出席日数を計上できる
親ができること
- 子どもと話す機会を増やす
- 学校や各支援機関に相談し、アドバイスをもらう
- 親の会で情報収集をする
- 息抜きも大事
不登校は決して珍しいことではなく、支援機関が数多くあります。
個人や家庭で抱え込まず、子どもの将来や進学先を考えていきましょう。