「発達障害」という言葉が近年では身近となってきました。
通信制高校に対して期待あるいは不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。
通信制高校では発達障害の生徒を積極的に受け入れ、サポート体制も整えている学校が多くあります。
そこで今回は、発達障害の特徴や抱える問題について触れながら、通信制高校のメリット、そして学校選びのポイントを解説していきます。
「中学校時代に苦労した」「全日制でうまくやれなかった」という経験で進学を諦めるのではなく、通信制高校で新たな一歩を踏み出してみませんか?
目次
- 発達障害の生徒が進学しやすい通信制高校
- 発達障害を理解してくれる通信制高校を選ぶポイント
- 発達障害は様々な特徴がある
- 発達障害のグレーゾーンとは
- 発達障害でも全日制の普通級に通うことも可能
- サポート体制がある通信制高校を選ぼう
発達障害の生徒が進学しやすい通信制高校
発達障害と呼ばれる特性を持つ生徒は、以下のような悩みを抱えていることがあります。
- 他者とのコミュニケーションが苦手
- 集団生活が苦手
- 人に合わせられない
- 勉強についていけない
集団で過ごす学校生活は不便に感じる部分が多いのではないでしょうか。
全日制での学校生活は難しいと知りながら、無理に通って心身のバランスを崩してしまったり、高校への進学自体を諦めてしまったりするのはもったいないです。
そこで、発達障害の生徒でも無理なく卒業を目指せる、通信制高校という選択肢をおすすめします。
通信制高校は、発達障害に限らず、さまざまな事情を抱える生徒を受け入れています。
入試の際に学科試験を設けず、書類審査・面接・作文で合否が決まるところがほとんどです。
入学しやすいという点に加え、毎日通学する必要がないというのもメリットです。
人との関わりを最低限に抑えられますし、通学に不安を感じていてもスクーリング以外は通学に縛られず過ごせます。
3年以上の在籍で、74単位以上を修得すれば卒業できるため、発達障害があっても自分のペースで単位を修得していけるのです。
また、好きなものには集中できるという特性を生かし、全日制にはない専門的な分野を積極的に学べるのも通信制ならではでしょう。
発達障害を理解してくれる通信制高校を選ぶポイント
では、数ある通信制高校の中から、自分に適した学校をどのように選べばよいのでしょうか。
発達障害を持つ生徒が学校生活をスムーズに送るには、学校側に理解があり、生徒一人ひとりに対してサポート体制が整っている必要があります。
通信制高校選びの際は、次の3つのポイントに注目するとよいでしょう。
1.学習の個別指導をしてくれるか
通信制高校に通う目的は、単位を修得して高校卒業資格を得ることです。
そのためには日々の授業の理解、レポート作成などは避けられません。
通信制高校の中には、集中力が続かない、思うように通学できないという生徒の特性に合わせて、個人レベルでの学習対応をしてくれる学校があります。
自宅学習が基本ではありますが、「わからない」「ついていけない」と感じてしまうと勉強のモチベーションも一気に低下してしまうものです。
学習計画を立てるところからその進め方に至るまでサポートしてもらえることで、無理のない継続が可能になります。
2.心理カウンセラーによるサポートがあるか
発達障害は本人にとって耐えがたい症状であっても、周囲には理解されなかったり誤解を受けたりすることがあります。
人間関係やコミュニケーションに問題を抱えることで過去に孤立やいじめを経験し、精神的に辛い思いをしている生徒がいるのが実情です。
心の支えが必要な生徒に対し、心理カウンセラーが学校に常駐しているか、心理士やカウンセラーの資格を持った教員がいるかを調べておきましょう。
いつでも相談しやすい環境であれば、自分の気持ちに波がある時の拠り所となるはずです。
生徒が気軽に相談できることはもちろん、同様の悩みを抱える保護者たちが相談可能な学校もあります。
3.勉強の遅れをカバーしてくれるか
発達障害を発端とする不登校などで、これまで学校でうまく授業が受けられなかった生徒もいるでしょう。
高校に入学できたからといって、小中学校の学習範囲を最低限理解できていなければ、残念ながら勉強にはついていけません。
通信制高校によっては、主要教科の中学範囲の学び直し授業をしてくれるところがあるため、単位修得のための授業を受けつつ基礎学力の定着も目指せます。
また、通信制の生活面・学習面ともにケアしてくれる、サポート校という存在もあります。
サポート校は、通信制高校をスムーズに卒業できるように一緒に併走してくれる、塾や予備校に近いものです。
発達障害は様々な特徴がある
発達障害と一口に言っても、その特徴はさまざまであるため、一括りにすべきではありません。
見た目で発達障害を判断できるものではないので、周囲になかなか理解してもらえず、集団の中での生き辛さと苦悩を抱えている生徒もいます。
発達障害は大きく「広汎性発達障害」「学習障害(LD)」「注意欠陥・多動性障害(AD/HD)」の3つに分けられ、どれか1つではなく複数の特性を持つこともあり得ます。
どんな症状が出るかは個人差が大きいということを念頭に、あくまでも一般的な特徴としてそれぞれを見ていきましょう。
広汎性発達障害
その場に適した言動がとれない、曖昧な表現が理解できないなど、他者とのコミュニケーションを苦手とする傾向があります。
広汎性発達障害には、自閉症やアスペルガー症候群なども含まれます。
急な予定の変更や、初めての場所などではパニックになることも。
こだわりが強く現れたり行動がパターン化したりすることで、集団の中での生活が困難になりやすいです。
学習障害(LD)
学習障害は、知的な発達には遅れがなく、周囲にも特に気付かれにくい発達障害です。
「話す」「聞く」「書く」「読む」「計算する」のうち1つ以上の能力が困難になるもので、それにより学校でも他の生徒と同じように勉強を進めることができない場合があります。
注意欠陥・多動性障害(AD/HD)
その名の通り、集中力が続かない、じっとしていられない、考えるより先に行動してしまうといった特徴を持ちます。
好きなことに対しては集中力が持続しますが、集中しすぎて周囲の声が聞こえなくなり、話しかけた人が「無視された」と誤解してしまうことも。
注意力・集中力が続かないために、ケアレスミスが多かったり、忘れ物が多くなったりしてしまいます。
動いていないと落ち着かないという特性から、授業中に立ち歩いてしまうなど集団の中では落ち着きのなさを指摘されることが多いです。
発達障害のグレーゾーンとは
発達障害かどうか、はっきり診断がつかない場合「グレーゾーン」という言葉が使われます。
発達障害の診断には基準がありますが、それを満たしていなくても、特徴的な症状によって日常生活に困難が生じているという状態がグレーゾーンに該当するというわけです。
症状はいつも出るわけではなく、場所や状況、本人の体調によっても大きく違いが出てきます。
そのため、周囲から理解されずにいじめに発展してしまうケースもないとは言えません。
家族や学校、地域全体に発達障害が広く認知されていれば小さな変化にも気付いてもらえるのですが、残念ながらそうではないのが現状です。
そして「周りと違う行動を取ってしまう子は、普通学級ではなく支援学級へ行くべきである」と大人が決めつけてしまうことで本人に負担を与え、不登校などを引き起こさないよう注意が必要です。
発達障害でも全日制の普通級に通うことも可能
もちろん、発達障害でも全日制の普通学級に通うことはできます。
発達障害といっても、知的な遅れがなければ他の生徒と同様に高校を受験し、合格をもらうことは無理ではありません。
しかし、全日制の場合、小中学校のような手厚いサポートを受けることは難しく、他者とコミュニケーションをとる回数も必然的に増えると考えられます。
学校側も発達障害について理解があることが理想的ですが、実際は生徒本人にかかる精神的負担が大きくなるでしょう。
また、公立の全日制高校へ進学するには、中学校で普通学級にいないと内申点が低くなってしまい、受験に不利に働きます。
中学校にも特別支援学級があり、学校生活を送りやすいよう生徒の特性に見合ったサポートをしてくれる環境ですが、受験時の内申点には反映されないという面を覚えておきましょう。
サポート体制がある通信制高校を選ぼう
発達障害、あるいはグレーゾーンの生徒が進学を諦めることなく過ごすためには、サポート体制が整った通信制高校を選ぶことが大切です。
まずは、発達障害に対して知識と理解がある学校であること。
サポート体制の例としては次のようなものが挙げられます。
- 心理カウンセラーが常駐している
- ソーシャルワーカーが常駐している
- 少人数制や個別指導を取り入れている
- 医療機関と連携が取れている
- 学習計画を個別対応してもらえる
- 社会性を学ぶ「ソーシャルスキルトレーニング(SST)」の授業がある
発達障害の特性によって、学習の進め方、人間関係、通学頻度、集団との関わりなど苦手に感じることは一人ひとり異なります。
気になる通信制高校に自分に合ったサポートがあるかを事前に確認しておくと、安心して入学できるはずです。
特別支援コースなどを設けている学校もあるため、サポートの内容を含め、選択肢の一つとして調べてみるのもよいでしょう。
ネット検索するだけで多くの通信制高校について情報を得られますが、どんなサポートがある学校かを知るには、実際に体験するのがおすすめです。
オープンキャンパスなどに積極的に参加して、その学校の雰囲気をぜひ体感してみましょう。
教師や生徒達に直接質問すると、普段は知り得ない生の声を知ることができます。
自分が入学したあとの姿もイメージできるようになるのではないでしょうか。