「学校が怖い」そんな気持ちを抱いたことがあるでしょうか。
いじめや人間関係、学業不振など学校に行けなくなる原因は子どもによってさまざまですが、学校が怖いという理由で不登校になることもあるのです。
今回は、学校が怖くなってしまう理由とその対策についてご紹介します。
側で支える親ができる対応にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
「学校が怖い」9つの理由
学校が怖いと感じる背景には、子どもの数だけ理由があると考えられます。
中でもよく挙げられるおもな理由は次の9つです。
- いじめ
- 人間関係
- クラスに馴染めない
- 勉強についていけない
- 先生が苦手
- 学校自体の制度やルールに納得できない
- 親の過干渉
- 親との分離不安
- 発達障害などの可能性
順に説明していきます。
いじめ
過去に学校で経験したいじめの恐怖が、そのまま学校に対しての恐怖となってしまっているケースです。
先生の仲裁で表面上は解決しているようでも、実際は陰口が続いているなど、子どもにとって過ごしにくさが続いている場合があります。
いじめがなくなっていても、「またいじめられたらどうしよう」という思いは付きまといます。
心に負った傷は深いため、怖さを取り除くのは簡単ではないでしょう。
カウンセラーなどとの相談も含めながら環境を整えていく必要があります。
人間関係
思春期における友達との関係は、とても濃厚かつ複雑なものです。
距離感が近くなりすぎたり、グループ化によって過ごしにくさを感じることもあるでしょう。
ささいなきっかけによってこれまでの友達関係に亀裂が入ると、その状況に対応しきれず学校自体が怖いという意識になってしまいがちです。
部活動での先輩・後輩という縦のつながりで、うまくやれずにストレスを溜めてしまうケースもあります。
クラスに馴染めない
これまで小中学校で問題なく過ごしてこれた子でも、進学した先ではクラスや学校の雰囲気がどうしても合わない、ということがあり得ます。
クラスは1年間変わることなく、毎日学校へ通う中では苦痛を感じるかもしれません。
一歩踏み出して気の合う友達を作れるとよいのですが、無理な場合は学校自体がストレスとなってしまうでしょう。
勉強についていけない
学校の授業において、1教科でも強い苦手意識を抱えているようであれば、対応しなくては徐々にストレスが溜まっていきます。
小さな不安は毎日の授業によって幾重にも重なり、いつしか登校自体が怖くなってしまう可能性があるのです。
本来は、勉強についていけなくても問題なく学校生活を楽しめるのですが、一度不安を感じてしまうとなかなか払拭できないということも少なくありません。
塾や通信教育など、早い段階で、苦手教科のサポートを考えることが大切です。
先生が苦手
多くの生徒が集まる学校において、先生は良き指導者であり相談相手でもあります。
しかし、中には少数ながら、高圧的な態度や理不尽なやり方を通す先生がいるのも現実です。
さらに、相性の面で「みんなには好かれている先生だけど、自分とはどうしても合わない」という場合もあります。
学校での先生の存在は大きいため、先生が苦手だから学校へ行けないという思考になるのも無理はないでしょう。
部活動であれば、どうしてもな場合は退部を視野に入れる、担任であれば次の学年になったタイミングで登校を再開するなど、先生と距離を取るための方法はあります。
学校自体の制度やルールに納得できない
学校では先輩に会ったら挨拶が必須、校則がひどく厳しい、部活動の厳しい上下関係がストレス、といった学校特有のルールに徐々に怖さを感じるケースもあります。
さまざまな場面で対応の善悪を比較できる大人と違い、子どもは学校が社会そのものです。
そこでのルールは絶対的だと考えられ、精神的に追い込まれることも少なくありません。
ささいなことでも相談できる逃げ場を作るために、親子のコミュニケーションを日頃から大切にしておくとよいでしょう。
親の過干渉
親自身が不安を感じやすく、子どもに対して手をかけすぎる過干渉であると、子ども自身も不安や怖さに敏感になります。
子どもは本来、自分のことは自分で挑戦・解決して社会性を養っていくものですが、親が先回りして手を出すことで自分で問題解決する力が不足してしまいます。
親の先回り指示は一見子どもを守るように見えますが、実は挑戦するチャンスを潰して失敗に過敏にさせてしまっているのです。
この場合、子どもの不登校が親を不安にさせ、親の不安が子どもの恐怖を増幅させる悪循環になるため、まずは親が考え方を変えて心に余裕を持つ必要があります。
親との分離不安
家から離れたくないことが、学校が怖いという表現になっていることも。
親からの自立が果たせていない場合や、1人だと不安だという心理によって学校に行くのを無意識に嫌がっている状態です。
「自分がいないと親が悲しむのではないか」という心理が隠れている場合もあります。
心が満たされて外でも安心して振る舞えるよう、互いに信頼しつつも依存はしない親子関係を築く必要があります。
発達障害などの可能性
学校を怖いと感じる背景には、発達障害などが隠れている可能性もあります。
ささいなことでも人より敏感に「怖い」と感じ取ってしまったり、他人との関わりが難しく感じてしまったりする傾向があります。
少しでも気になる特徴が見られた場合は、専門家に相談してみましょう。
適切なアドバイスによって、学校生活が過ごしやすくなるかもしれません。
怖い気持ちを緩和するには
では、学校が怖いという気持ちを少しでも和らげるにはどうしたらよいのでしょうか。
1人で抱え込まない
まずは1人で問題を抱え込まないということです。
我慢するだけでは解決にはつながりませんし、何よりいずれ自分が潰されてしまいます。
周囲を見渡すと、自分は多くの人に囲まれて生きているとわかります。
家族・先生・クラスの友達・部活の仲間・習い事やアルバイト仲間・オンライン上の友達など、多くの中から話しやすい相手を選んで悩みを相談してみましょう。
人を頼るのは決して恥ずかしいことではなく、1人でいくら考えても答えが出なかった問題が、誰かに相談したらすぐに解決できたという例もよくあるものです。
自分の居場所を作る
学校が怖いところなのであれば、学校以外に自分が落ち着ける場所を見つけておくのがおすすめです。
家・図書館・習い事の時間など、自分らしくいられる居場所は、心の安定を保つ意味でも重要な役割を果たします。
場所だけでなく、学校の外の友達やアルバイト先の仲間など、学校とは違う関わりを持つ人たちと多く過ごすことが、気持ちを保つ支えとなる場合もあります。
つらいときは無理せず、心と体のエネルギー回復を一番に考えるようにしましょう。
学校が怖い子どもへの対応【OK編】
学校が怖くて行けなくなった子どもに対し、どう接したらよいのか親も迷ってしまうのは当然です。
しかし、不安を抱えてデリケートになっている子どもには、対応の仕方によって良い影響だけでなく悪い影響を与える可能性があるため、注意が必要となります。
まずは目指すべき対応を3つご紹介します。
子どもの話を聞く
学校が怖い理由を子どもが話してくれる場合は、聞き役に徹しましょう。
抱え込んでいる不安な気持ちを口に出すと、心が軽くなります。
理由がはっきりわからなくても、子どもが怖いと言うのであれば「現在はそういう状態なのか」と把握する程度でかまいません。
できる限りそのまま受け入れてあげましょう。
話を聞いて信じてもらえたということで、すぐに快方へ向かう場合もあります。
生活リズムを整える
生活リズムを整えるのは前向きな考え方をするためにも欠かせません。
心の安定をはかるために、一時的に昼夜逆転現象が起きているということもあるでしょう。
多少落ち着いてきたタイミングをみて、就寝時間・起床時間を少しずつ正しいサイクルに戻していけるよう話し合ってみてください。
さらに、3食しっかり栄養を摂り、適度な運動をおこなうことで夜に質のよい睡眠をもたらせます。
きっちり守る必要はありませんが、適度に声をかけながら毎日の生活をサポートしていきましょう。
自己肯定感を高める
不登校になっているときは、心がひどく疲れてしまっている状況です。
他人の目が気になり、自信をなくし、自分の価値を見失っているかもしれません。そこで必要になるのが、肯定的な声かけと成功体験の提供です。子どもの話はそのまま受け入れ、肯定的な声かけを心がけます。
家庭内で役割を与え、できたら褒めて自己肯定感を高めていきましょう。自分の存在価値が見出せると、考え方も前向きに変化してきます。
学校が怖い子どもへの対応【NG編】
次に、親の対応として避けるべきものを4つご紹介します。
子どもの一番近くにいる親の言動は、子どもにとって大きな影響力を持ちます。
責めたり後ろ向きな発言ばかりしたりしないよう、日頃から意識しましょう。
登校を強要する
学校へ行くことは子どもの将来のためになるという思いが強いからこそ、ついつい子どもに登校を強要しがちではないでしょうか。
学校にいかなくてはならないと、子どもは頭で理解しています。
そのうえで、さまざまな理由によって学校が怖くなってしまっているのです。
親が登校を勧めることで、子どもは「行かないと親に迷惑をかけるだろう」「悲しませてしまうのではないか」と更なる不安を増やしてしまうことになりかねません。
本人に登校の意思がないまま学校へ戻っても、逃げ場を失って状況を悪化させるだけです。
子どもが不登校になりかけている状況では、学校に継続して行かせることが正しい道ではなく、登校とは一旦切り離して「子どもが今何を思っているか」「どういったケアが必要か」を考えることが解決への近道です。
怖い理由を問い詰める
「学校が怖い」というのはワードとして印象的ですが、怖さはなかなか言葉で的確に説明できない場合もあり、親としては対応に困ってしまうかもしれません。
そのため、具体的な理由を問いただしてしまいがちです。
最初はささいなことが怖さのきっかけだったとしても、徐々に恐怖が増幅してしまい、登校できなくなっているケースも多いです。
親が理由を問い詰めることで、より子どもの恐怖心を強めてしまう可能性があります。
ひと呼吸置いて、子どもの方から話してくれるタイミングを待ちましょう。
子どもを否定し、親が行動を決める
子どもは誰しも不登校になりたくてなっているのではありません。
友達や先生には言いにくい気持ちも、親には言えることがあります。
しかし、頭ごなしに欠席や不登校を批判するようでは、せっかくの親子の対話の時間を棒に振ってしまうでしょう。
「いくら気持ちを話してもわかってもらえないだろう」
「親も先生と同じで正論を言うんだ」
「家族は助けてくれると思ったのに」
このように子どもが心を塞いでしまわないためにも、親はいつでも味方であると伝え、子どもの意見を尊重する姿勢を見せることが大切です。
子どもが怖いと訴えているにもかかわらず気のせいだと否定したり、考えも聞かずに「甘えていないで行きなさい」あるいは「学校を休みなさい」と行動を指示したりするのは、子どもをどんどん追い詰めてしまうこととなります。
放っておく
家庭が子どもにとって落ち着ける場所であることはとても重要です。
味方でいてくれる家族と安心できる空間は、心の回復にも大きな力を与えてくれるでしょう。
学校に行けなくなって間もなくは、生活リズムが崩れたり、現実逃避のためにゲームなどに没頭したりするのはある程度仕方がありません。
しかし、何でも子どものやりたいようにさせておく、親が子どもの言いなりになるほど好き放題させるのは放置と同じです。
学校や不登校の相談窓口と連携を取りながら、子どもに合った対応を見つけ、少しずつでも試していきましょう。
学校以外の選択肢とは
学校が怖くて行けなくなってしまった際は、無理に復帰を考えなくてもいくつかの学校以外の選択肢があります。
「学校に行けなくても大丈夫なんだ」と思えることは、子どもにとって明るい道筋となるはずです。
- 適応指導教室
- 通信制高校
- 家庭教師や塾
- フリースクール
- 高卒認定試験
どれも、学ぶ意思があれば将来へ向けての勉強を続けることが可能です。
ひとつずつ見ていきましょう。
適応指導教室
適応指導教室は、学校への復帰を前提として学習面でのサポートをおこなってくれる機関です。
不登校での勉強の遅れを取り戻し、復帰後の勉強の不安を減らしておけます。
現在通っている学校との連携が取れるため、適応指導教室への参加が学校への出席にカウントされるというメリットもあります。
ただし、学校復帰の意思がない状態にはおすすめできません。
通信制高校
同じ「学校」でも、通信制高校に転入するという方法があります。
- 授業はオンラインで受けられる
- 決められた日数のスクーリング以外は毎日登校する必要がない
- 他の生徒との人間関係を気にしなくてよい
- 学年の概念がなく、必要単位を取れれば高卒資格が得られる
- 進学や就職に関してのサポートが受けられる
- 中学時代の学び直しをしてくれる通信制高校もある
以上のように、通信制高校には無理なく自分のペースで高校を卒業できる体制が整っています。
時間割や学習時間は自分で整えなくてはなりませんが、やる気さえあれば自宅にいながら上を目指せる環境です。
もちろん、通信制の卒業資格は全日制と何の違いもありません。
通信制の中でも特に私立の学校の場合、学習や進路について手厚いサポートが受けられる傾向にあります。
通信制高校は学校ごとに特色が大きく異なるため、興味がある学校には実際に足を運んでみるとよいでしょう。
家庭教師や塾
学校に行かなくても、塾へ通ったり自宅で家庭教師をつけたりして勉強を勧めていくことができます。
たとえ学校で勉強についていけなかったとしても、家庭教師であれば自分の習熟度と弱点に合わせた指導をしてもらえます。
周囲に気を遣うことなく、自分の勉強に集中できるでしょう。
その結果、理解度も格段に上がり、苦手の克服にもつながるはずです。
フリースクール
フリースクールは、不登校の生徒のために開放されている学びの場です。
自分と同じ悩みを持つ仲間と出会えるため、心の通じ合う友達ができることも少なくありません。
学習サポートを中心に、施設によって活動内容は異なりますが、多くの子どもたちにとって家と学校以外の社会性を養う場所となっています。
高卒認定試験
高卒認定試験は、学力試験に合格することで高校卒業と同等の学力を持つと認められるものであり、高校を卒業しなくても大学や短大、専門学校の受験資格が得られます。
試験は年に2回チャンスがあり、一度ですべて合格できなくても、次の機会に不合格科目のみ再挑戦できるというシステムです。
「学校が怖い」を長期の不登校につなげないために
「学校が怖い」という思いにはさまざまな理由が潜んでいます。
不安を払拭して学校へ復帰できるのが一番ですが、我慢して登校させればよいというわけではありません。
つらいときに登校を強要することは正義ではなく、結果として学校の怖さを増幅させて不登校へつなげる危険性があります。
親が意識すべきポイントとしては次の通りです。
【OKな対応】
- 子どもの話を受け入れ、どんなときも味方になる
- 生活リズムを整えて復帰準備を
- 自己肯定感を高めて心を充電
【NGな対応】
- 登校を強要する、理由を問い詰めると状況が悪化
- 子どもを否定すると追い詰めてしまう
- 放置すると不登校長期化も
また、学校に復帰できなくても将来につながる選択肢があります。
- 適応指導教室で、学校復帰を目指す
- 通信制高校で、自分のペースで高校卒業を目指す
- 家庭教師や塾で、自分に合った勉強を進める
- フリースクールで、学びながら自分の居場所を作る
- 高卒認定試験で、次のステップに挑戦する
大切なのは、子ども自身がどうしたいと思っているかです。
不登校は学校へ戻るだけがゴールではありません。
今は「学校が怖い」という思いが強くても、どこかに必ず突破口があります。
焦らず子どもの声に耳を傾け、親子で一緒に最善策を見つけていきましょう。