不登校には発達障害が関係している場合があります。
発達障害でもそうでなくても、子どもがつらい思いをするのは「周囲に理解してもらえないとき」ではないでしょうか。
子どもの症状と悩んでいる状況を正しく知り、心情に寄り添うことが、不登校回復への鍵です。
この記事では、発達障害について詳しく解説するとともに、子どもとの関わり方や進学の話にも触れていきます。
発達障害について知りたい方も不登校にお悩みの方も、ぜひ今後を前向きに考えるための参考としてくださいね。
目次
- 不登校と発達障害の関係について
- 不登校になるきっかけは?
- 不登校の原因となる発達障害とは
- 不登校の子どもの気持ちとは?
- 保護者による不登校の子どもとの関わり方
- 支援機関を利用して相談しよう
- 不登校の子どもの生活
- 進学について
- まとめ
不登校と発達障害の関係について
不登校はどんな子どもにも起こりうる事象ですが、学校生活の中で苦手なことの多い発達障害を持つ子の方が、不登校になる可能性が高いと言われています。
「知的発達に遅れはないものの学習面または行動面で著しい困難を示す」と 担任が回答した子どもの割合 | |
学習面又は行動面で著しい困難を示す | 約6.5% |
※学習面 ・・・ 「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」の一つあるいは複数で著しい困難を示す場合 ※行動面 ・・・ 「不注意」、「多動性-衝動性」、あるいは「対人関係やこだわり等」について一つか複数で問題を著しく示す場合 |
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/tokubetu/material/__icsFiles/afieldfile/2012/12/10/1328729_01.pdf
文部科学省の調査では、通常学級において「学習面や行動面で著しい困難を示す、と学校の先生が判断した子ども」=「発達障害の傾向がある子ども」の割合は約6.5%でした。
これは、あくまでも先生が認識している数字であり、実際はより多くの子どもが何らかの困難を抱えていると推測できます。
不登校になるきっかけは?
発達障害の子どもが不登校を引き起こしてしまうきっかけとして、具体的に次のような例が挙げられます。
- 授業を理解するのに時間がかかるため、勉強に遅れをとってしまう
- どうしても不得意な教科があり、成績が上がらない
- 興味があることとないことで気分にムラがある
- コミュニケーションがうまく取れず、学校で孤立してしまう
- 課題や苦手なことに直面すると、パニックを起こすことがある
実際、2021年の文部科学省の調査では、学校に行きづらいと感じたきっかけについて、次のような結果が出ています。
小学生が最初に行きづらいと感じたきっかけ(上位3つ)
・先生のこと(合わない・怖い・体罰など) ……29.7%
・身体の不調(腹痛など) ……26.5%
・生活リズムの乱れ ……25.7%
中学生が最初に行きづらいと感じたきっかけ(上位3つ)
・身体の不調(腹痛など) ……32.6%
・勉強がわからない ……27.6%
・先生のこと(合わない・怖い・体罰など) ……27.5%
参考:文部科学省「不登校児童生徒の実態把握に関する 調査報告書」.不登校児童生徒の実態把握に関する調査企画分析会議 .2021-10
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318_03.pdf
「学校へ行きたくない」と登校を渋りだした場合は、原因のひとつとして発達障害の影響が考えられます。
小さなストレスは次第に積み重なり、学校生活への抵抗を生んで不登校へつながります。
他の子と比べられ、時にはいじめに発展してしまう危険性もはらんでいるのです。
発達障害の子どもが充実した学校生活を送るためには、学校のサポートや周囲の配慮が欠かせません。
不登校の原因となる発達障害とは
発達障害は軽度の場合、症状がわかりにくく周囲にも気付いてもらえない場合があります。
不登校になって初めて発達障害と発覚するケースも少なくありません。
「読み」「書き」「計算」といった基本的なことは、通常当たり前にできると認識されていますが、発達障害の子どもにとっては苦手でうまくできないことである可能性があるのです。
学校内と家庭に理解者がいないと、子どもは孤立してしまいます。
発達障害はいくつかの種類に分けられ、その特性の一部を持つ「グレーゾーン」の子どもも多く存在します。
代表的な特性を見ていきましょう。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
空気が読めない、相手の気持ちを考えられないなど、対人場面でのコミュニケーションが苦手です。
クラスでもなかなか打ち解けられずに孤立しやすい傾向があります。
物の配置や自分なりの行動の順番など、こだわりが強いため、からかわれて傷つくことも少なくありません。
また、感覚過敏により、光・音・匂いなどに反応し、パニックを起こすことがあります。
一つのことに集中できるのは、このタイプのよい特性です。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHDには3つの特性があります。
- 不注意
集中することが苦手で、忘れ物やなくし物が多い
- 多動性
落ち着きがなく、静かにしていることが苦手。
- 衝動性
我慢ができなかったり、よく考えず衝動的に動いたりしてしまう。
これらの特性は、学校生活でも困難を感じることが多いと考えられます。
叱責されることが多いため、徐々に自分に自信をなくしてしまう恐れがあります。
学習障害(LD)
知的な遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」のどれか、あるいは複数が著しく苦手という特性です。
授業についていけず、自己肯定感や学習意欲が低下してしまいます。
「話す」「聞く」という部分が苦手だと、集団で会話ができなかったり、相手の言っていることがわからなかったり、自分の気持ちを伝えられなかったりという問題が生じます。
結果として勉強だけでなくコミュニケーションでも困難を抱えてしまうのです。
発達障害のグレーゾーン
発達障害には、特性の一部が見られるものの、はっきり診断がつかない「グレーゾーン」が存在します。
グレーゾーンの子どもは、発達障害の子と同様に学校生活で何らかのトラブルや悩みを抱えている可能性が高いものの、周囲にはなかなか気付いてもらえません。
理解者がいること、サポートしてもらえることで生活しやすくなるため、家族の協力が不可欠です。
発達障害のこどもに合わせた対応が必要
苦手に合わせたサポートができれば、子どもの精神的な負担は減らせます。
一方で、発達障害だとはわかりにくい細かな症状も多いため、周囲に理解されず対応が遅れる場合もあるでしょう。
不登校が長期化すると、引きこもりになってしまう恐れがあるため、子ども一人ひとりの特性を理解し、適切な対応を見つけていくことが大切です。
不登校の子どもの気持ちとは?
不登校になったばかりの子どもは、長く続いたつらい日々に疲れ果てている状態です。
まずは休息が必要です。
少し時間が経って体調が落ち着いてくると、不登校をどう乗り越えていくかを考える段階になります。
- 休みたかったけれど、いざ休むと罪悪感が強い
- 心がスッキリしている
- 休んでもつらいまま
不登校についての感じ方は子どもによってそれぞれですが、少なからず心境も変化してくるはずです。
学校を休んでいる間のこどもの気持ち
学校を休んでいる間は、安心感が大きいのでしょうか。それとも不安感が拭いきれないのでしょうか。
ここでは、文部科学省の調査結果を元に、小学校・中学校それぞれの場合に分けてご紹介します。
小学校
小学生は、学校を休んでいることの安心や不安について、「ほっとした・楽な気持ちだった」が69.7%、「自由な時間が増えてうれしかった」が65.9%(「あてはまる」「少しあてはまる」を合わせた割合)で、まずは安心感が勝っているとわかります。
【学校を休んでいることの安心や不安について(小学校)】
安心感に続いて、「勉強の遅れに対する不安があった」が63.8%と高い割合であり、心が安まる反面、勉強の遅れは不安要素として強く残っているようです。
中学校
では、中学生ではどうでしょうか。
最も割合の高い心境が「勉強の遅れに対する不安があった」で74.2%。
「ほっとした・楽な気持ちだった」、「進路・進学に対する不安があった」がそれぞれ69.2%で続きます。
【学校を休んでいることの安心や不安について(中学校)】
高校受験を控えた中学生は、勉強や進学に対する不安感が7割を超え、学校生活から離れた安心感と進学への不安が同じくらい入り交じっている状態と言えます。
保護者による不登校の子どもとの関わり方
不登校の子どもとの関わりで必要なのは、困っている、あるいは悩んでいる状況を理解して丁寧に対応していくことです。
発達障害かどうかグレーな場合は、診断がついたからといって悲観的になる必要はありません。
発達障害でも学校への復帰は可能ですし、何より子ども本人にとって何が合った道かを一緒に見つけていく姿勢が大切です。
小学校
小学生に対しては、家庭内で一緒にルール作りをし、頑張る・成功する・褒めるのサイクルができると、トラブルは少なくなるでしょう。
集団の中で問題が起きてしまった際は、親が子どもの気持ちを認め、相手の状況や考えていることを伝えていきます。
また、苦手なことにばかり目が行きがちですが、頑張ったことを褒めるようにしていくと、子どもの自信につながります。
中学校
中学生になると、学校でも社会でも求められることが多くなります。
苦手なことについて考えすぎず、得意なことを見つけて子どもが自信を増やしていけるようにしましょう。
スケジュール管理やTODOリスト、お金の使い方などは、サポートしながら丁寧に教えていくと将来に役立ちます。
学習面では、どんな勉強の仕方が合うかは子どもの特性によって異なります。
自宅学習が難しいようであれば、発達障害に理解と実績のあるフリースクールなどの利用を検討するとよいでしょう。
支援機関を利用して相談しよう
子どもが学校に適応できなくなっている、発達障害によって不登校となってしまったという際は、支援機関を積極的に利用しましょう。
親としては思い悩んでしまいますが、考えて答えが出る問題ではありません。
一人で抱え込まず、勇気を出して相談することが、結果として子どものためにもなります。
子供の不登校について相談できる支援機関
不登校について相談できる支援機関は主に次の通りです。
学校 | ・担任・スクールカウンセラー |
公的機関 | ・教育支援センター・ひきこもり地域支援センター・発達障害支援センター・子育て相談窓口・児童相談所・医療機関(小児科・発達外来・心療内科など) |
民間施設 | ・カウンセリング施設・フリースクール・不登校対応の塾や家庭教師 |
経験豊富なカウンセラーや相談員のアドバイスは、親の心も軽くしてくれるものです。
相談しやすいところから連絡してみましょう。
不登校時に利用した支援機関
では、実際どのくらいの子どもが支援機関を利用しているのでしょうか。
【小学校】支援機関の利用率 | |
教育支援センター(適応指導教室)等の公的な支援機関 | 40.1% |
フリースクール等の民間施設 | 11.9% |
オンラインを活用した自宅学習 | 17.9% |
障害があるまたは 障害がある可能性がある場合、 その相談機関・医療機関 | 34.1% |
【中学校】支援機関の利用率 | |
教育支援センター(適応指導教室)等の公的な支援機関 | 36.4% |
フリースクール等の民間施設 | 11.0% |
オンラインを活用した自宅学習 | 12.4% |
障害があるまたは 障害がある可能性がある場合、 その相談機関・医療機関 | 25.3% |
https://www.mext.go.jp/content/20211006-mxt_jidou02-000018318_03.pdf
学校外の支援機関を利用したかの調査では、不登校の小学生は「教育支援センター(適応指導教室)等の公的な支援機関」の利用が40.1%、「障害があるまたは 障害がある可能性がある場合、その相談機関・医療機関」も34.1%にとどまっています。
中学生は、「教育支援センター(適応指導教室)等の公的な支援機関」の利用が36.4%、「障害があるまたは 障害がある可能性がある場合、その相談機関・医療機関」が25.3%で、小学生よりもさらに利用率が下がっています。
決して高い利用率ではない背景には、相談できる場所があることを知らないといった周知の問題もあるようです。
不登校の子どもの生活
毎日学校へ通っていると、時間割通りに授業を受けることで「嫌な授業でもやるべきことはやる」「時間を守る」というルールを自然と身につけています。
不登校だと、一日を自由に過ごせるため、必然的にネット・テレビ・ゲーム・動画などに費やす時間が増えることでしょう。
昼夜逆転を起こすほどでは将来的に学校生活へ戻る際のネックとなるため、親による時間のコントロールが必要です。
ただし、自分に自信をなくしてつらさを抱える状況では、まずは学校から離れて穏やかに過ごすことが優先となります。
家での勉強
学校へ行けないからといって、勉強がしたくないとは限りません。
教科書や学校からもらったプリントを使えば、自宅で自分のペースで勉強を進められます。
しかし、授業を受けていないことで内容を理解できない可能性があるため、少し遡って復習しながら進めるとよいでしょう。
より学力アップを目指したいのであれば、子どもと相性がよい先生を選べる家庭教師がおすすめです。
子どもの習熟度に合わせたマンツーマン指導で、不登校の子どもも無理なく勉強できます。
家、学校以外での過ごし方とは?
学校に行かず、家にこもるわけでもない過ごし方として、フリースクールの利用が挙げられます。
フリースクールは民間の教育機関であるため、教育理念も方針もさまざまで、費用にもばらつきがあるのが特徴です。
地域の小中学校と連携している場合があり、フリースクールに登校すると学校の出席扱いとなることも。
自宅の外で家族以外の人と繋がれる環境は社会との接点となり、子どもにとってもプラスに働くはずです。
進学について
発達障害による不登校だからといって、進学は無理だと諦める必要はありません。
周りと比べることなく、子どもが生き生きと卒業を目指せる環境を探すことが大切です。
通信制高校という選択もある
高校進学を考えたとき、全日制ではなく通信制という選択肢があります。
通信制高校であれば状況に合わせて転入・編入ができ、自宅学習が基本となるため、不登校生徒でも自分のペースで勉強できるのが大きな魅力です。
他者との関わりが少ない点は、コミュニケーションが苦手な子どもでもストレスなく過ごせるでしょう。
個別でのサポート体制が充実した学校を選択すれば、勉強での不明点はもちろん、進路や就職についても気軽に相談できます。
まとめ
不登校の原因として発達障害が隠されている場合があります。
発達障害による不登校では、診断名に縛られるのではなく、子ども自身の特性と向き合うことが最も重要です。
苦手なこと、できないことがあるのは仕方ありません。
家族は抱え込まずに支援機関にも相談し、苦手な部分を周囲がサポートしながら笑顔で生活していけるよう、前向きに捉えていきましょう。
毎日の小さな成功体験の積み重ねが、いずれ社会で自立するための糧となります。