オンライン授業が一般化し、学校だけではなく塾などの教育機関で採用されているのも珍しくなくなりました。では、オンライン授業はメリットばかりなのかと言えば、そうでもないのが現状です。
今回は、オンライン授業のメリット・デメリットと、オンライン授業で成績を上げる方法を解説します。オンライン授業で成績が上がるのかは、気になる人も少なくないでしょう。論文をみながら、オンライン授業の学習効果についても詳しく見ていきます。
目次
オンライン授業でも成績は上がる?
オンライン授業は、新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに導入が進んだ授業形態のひとつです。現在でこそ一般的になったものの、それでも従来の授業と比較したメリット・デメリットが議論されています。
その中でも気になっている人が多いであろう項目が「成績が上がるかどうか」です。これに関しては論文が書かれるほど多くの議論がされており、明確な結論がない状況です。
では、成績や学習効果に変わりはないという主張とその反対意見はどのような内容なのでしょうか。詳しく解説します。
成績・学習効果に変わりはない
まずはオンライン授業と従来のオフライン授業で成績や学習効果に違いがないとする意見です。検証は大学の授業で実施されたものですが、論文内で示されているアンケート結果によると、受講生の半数以上が「オンライン授業のほうが受講のやり方としては自分に合っている」と回答しています。
(引用:城西大学 学生アンケートの回答と成績との関係から推察される「適性処遇交互作用」):libir.josai.ac.jp/il/user_contents/02/G0000284repository/pdf/JOS-2433541X-0502.pdf
両者を正確に比較したわけではないため、実際の成績の比較はできません。特筆すべきは学習効果に関する効果の実感の項目で、オフライン授業への支持が集まりつつも、全体の2割以上は「どちらも変わらない」と回答しています。
個人差はあるかもしれませんが、動画文化が発展している昨今、オンライン授業への抵抗感はあまりないと考えられます。一方で、生徒の体感ではありますが、学習効果に関しては従来型の授業と大きな差はないと考えられるでしょう。
アメリカでは下がったというデータも
一方、アメリカでは従来型の授業よりもオンライン授業の方が、学習結果にマイナスの影響が生じたという論文が発表されています。全米学力調査(NAEP)の最新データによって判明したものです。
対象は9歳児童の数学のスコアに対するもので、2020~2022年にかけて上位・中位・下位を問わず、2~12ポイントの低下が見られました。特に落ち込みが激しかったのは下位であり、教育環境が整っていない貧困層の児童に見られたようです。
一方で教育環境の整っている児童も、数ポイント程度ですが成績が下がっている事が分かりました。新型コロナウイルスの感染拡大によりロックダウンが実施された関係で、急速なオンライン授業への切り替えが今回の成績低下に繋がっているのではないかと考えられています。
授業の受け方次第でどちらともいえる状況
学習効果に変わりはないとする論文と、低下したという論文の2種類を紹介してきました。どちらも対象年齢や地域が異なるため、全てが同じ結果になるとは言い切れないものの、どちらの可能性も考えられるということがわかります。
結論を言えばオンライン授業で成績が上がるかどうかに関しては、授業の受け方次第で変わるとしか言いようがありません。従来型のオフライン授業でも同じことが言えますが、ただ授業を受けているだけの生徒と、授業を受けた後にきちんと復習をしている生徒では成績に差が出るのは当たり前です。
授業の方法が成績に直結しているのではなく、授業をどのように受けるか、受けた後どのようなことをしているのかが成績に関係すると考えましょう。もちろん授業する側の問題もあるかもしれませんが、大前提として受ける側の姿勢が成績に影響することを忘れてはいけません。
オンライン授業の種類
ひと口にオンライン授業と言ってもその種類はさまざまです。現在行われているオンライン授業は、大きく分けて以下の3つに分類できます。
- ライブ形式
- オンデマンド形式
- ハイブリッド型式
それぞれに向いている環境や、やり方に違いがあります。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。なお、ここでは授業する側を配信者、受ける側を視聴者と表現します。
ライブ形式
ライブ形式は配信者と視聴者が同じ時間に、パソコンやタブレットを介して授業を受ける方法です。授業の時間に視聴者が指定されたサイトにアクセスし、時間が来れば配信者が授業を行うというスタイルです。
学校の授業をそのままオンラインにした形式と考えるといいでしょう。ライブ配信の場合は配信者と視聴者が双方向でコミュニケーションをとることも可能です。また教室と教室同士を結ぶことができるほか、他の地域や海外との接続もできます。
従来の授業よりも様々なことが出来るのがライブ配信の強みですが、場所は違えど同時刻に同じ場所にアクセスする必要があるのがデメリットです。特に海外と接続する場合は、時差の問題を考慮しなければなりません。
オンデマンド形式
オンデマンド形式とは、配信者が配信した授業の動画を視聴者が自分の都合のいいタイミングで視聴できる授業形態のことです。アクセス方法はライブ形式と同じですが、必要な授業を選択して受けられるというのがライブ形式との違いになります。これにより繰り返し同じ授業を受けることもできます。
また、配信者側が動画を編集して提供することも可能です。ライブ配信ではできないような編集や合成はオンデマンド形式だからこそ出来る強みです。
一方で、配信者側の手間や負担が増えるほか、双方向でのコミュニケーションが出来ないのがデメリットとなります。授業の進度が視聴者の理解度に依存するため、生徒によって個別対応が必要になる場合もある点にも注意しましょう。
ハイブリッド形式
ハイブリッド形式は、その名の通り対面授業とオンライン授業を組み合わせた授業形態のことです。組み合わせるのはライブ形式でもオンデマンド形式でも問題ありません。
具体的にはディスカッションがハイブリッド形式で採用される対面授業の内容です。オンラインでもできないことはありませんが、あえて知識を得る場をオンラインに移行することで、対面とオンラインのメリットを生かすことができます。
両者の良いとこどりをしている形式ではありますが、配信者・視聴者ともに両方の形式で授業を受ける準備が必要です。また、それぞれの役割を明確にしておかなければ、授業を受ける側である視聴者が混乱してしまう可能性も考えられます。
オンライン授業のメリット
新型コロナウイルスの感染拡大で急速に普及したオンライン授業ですが、感染拡大防止以外にもさまざまなメリットが享受できる仕組みとして注目を浴びています。代表的なメリットは以下の通りです。
- 好きな場所・時間で授業が受けられる
- 不登校でも授業に参加できる
- オフラインでは受けられない授業が受けられる
- 個別形式だと質問しやすい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
好きな場所・時間で授業が受けられる
オンライン授業の最大のメリットであり、オンライン移行後に強く支持されているのが時間や場所を問わず授業が受けられる点です。
従来の授業であれば特定の場所に足を運んで、特定の時間に授業を受けなければなりませんでした。しかし、オンライン授業はインターネット環境さえあれば、どこでもいつでも授業を受けられるのです。
またオンデマンド形式の場合は、時間にかかわらず授業を受けることができます。アルバイトや家の手伝いなどで特定の時間を空けることが難しい場合に重宝するでしょう。
不登校でも授業に参加できる
さまざまな事情で不登校になってしまい、学校に行けなくなったとしても授業に参加できるのがオンライン授業のメリットでもあります。
「好きな場所・時間で授業が受けられる」でも触れましたが、場所を問わずに授業が受けられるため、わざわざ学校に登校する必要がありません。病気などで朝起きられないといった事情がある人も、オンデマンド形式であれば自分のタイミングで授業を受けることが可能です。
繰り返し同じ単元を勉強したい場合も、オンデマンド形式であれば勉強ができます。不登校になってしまっている、学校の勉強に追いつけないと思っている人も、オンライン授業であれば解決策が見つかるかもしれません。
オフラインでは受けられない授業が受けられる
オフライン形式の授業では受けられない特別な授業が受けられるのも、オンライン授業、特にオンデマンド形式のメリットです。先述のとおりオンデマンド形式の動画は、配信者が編集や合成を施して公開できます。そのためぶっつけ本番のライブ形式よりも、より詳細な資料やイメージ図を用いての授業を受けられます。
また海外と接続してネイティブの英語発音を学んだり、遠い地方と結んで文化交流をしたりと、その使い方はさまざまです。教室だけで完結するオフライン授業よりも、興味深い授業が受けられる可能性があるのがメリットです。
個別形式だと質問しやすい
ライブ形式の場合、一対複数での授業が受けられるのはもちろん、個別形式で授業を受けることも可能です。「全体の前では恥ずかしくて質問ができない」「こんな質問をして笑われないか」と気にしている人にとって、個別形式のオンライン授業は非常にメリットがある形式といえるでしょう。
リアルタイムでつながる必要があるものの、授業の間は他の人が参加できない環境です。普段は恥ずかしかったり気が引けたりして質問ができない人でも、先生に直接質問できるような環境になります。ぜひこの機会を活かして、分からないところを質問してみましょう。
オンライン授業のデメリット
メリットが注目されるオンライン授業ですが、一方でデメリットがあることも忘れてはいけません。具体的には、次のようなデメリットがあると考えられています。
- 機材やインターネット環境が必要になる
- 通信や音声のトラブルに対処できる知識がいる
- 参加しなければついていけなくなる
機材やインターネット環境が必須になる
オンライン授業を受けるには、パソコンやスマートフォン、タブレットなどの機材が必要です。これらがなければ、当然授業は受けられません。
同時に、インターネット環境も必要になります。オンライン授業のメリットは好きな場所で授業が受けられることではありますが、常時インターネット環境がなければそのメリットを受けられません。通信費として一定のお金がかかるため、そのための費用を捻出しなければならない点もデメリットと言えるでしょう。
通信や音声のトラブルに対処できる知識がいる
オフライン授業では絶対にありえないシチュエーションとして、通信機器や音声のトラブルが発生することが挙げられます。万が一トラブルが起きた場合は、その問題を解決するための適切な処置が必要です。
このトラブルに対処するための知識がある程度ないと、オンライン授業を満足に受けられなくなるかもしれません。高度な知識までは必要ないものの、不測の事態に備えて機器の扱い方やよくあるトラブルについて対処法も含めて知っておく必要があります。
参加しなければついていけなくなる
オンライン・オフラインに関係なく、授業に参加しなければ勉強についていけなくなるのは当たり前です。特にオンデマンド形式の場合、受講生のタイミングで授業を受けることができます。裏を返せば、受けないという選択もできますが、これが重なると授業に追いつけなくなるでしょう。
好きなタイミングで授業を受けられるというのは、メリットでもありデメリットでもあります。いかに自由といえども、自分の中で勉強する時間や習慣を身につけておくことが重要です。
オンライン授業を受ける際に必要なもの
オンライン授業を受けるのに必要なアイテムがいくつかあります。使用する機器によって異なりますが、絶対に必要になるものは以下の4つです。
- パソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末
- インターネット回線
- Webカメラ
- マイク付きヘッドフォンもしくはイヤホン
上記のうち、Webカメラとヘッドフォン・イヤホンは、使用する端末にカメラとマイクが内蔵されていれば特に準備する必要はありません。絶対に必要なのは端末とインターネット回線です。オンライン授業を受ける際は、必ずこれらを準備する必要があります。
オンライン授業で成績を上げる方法
この記事の冒頭でも触れた通り、オンライン授業で成績を上げるには授業を受ける側の姿勢が重要です。オフライン授業と共通するところはありますが、オンライン授業で良い成績を獲得するにはどのようなことに気をつければいいのかを解説します。
授業には積極的に参加する
大前提として、授業には積極的に参加するようにしてください。出席を意識するのはもちろんのこと、発表の機会があれば積極的に発言するなどしましょう。
オンラインで手元が見えないからと言って別のことをする、いわゆる内職は良くありません。オフラインの授業と同様、同じ教室内で授業を受けているという意識で授業に参加するようにしてください。
復習予習を徹底する
授業を受けた後は出来る限り復習を、授業を受ける前にも予習をしておくと成績アップにつながります。特に高校生の場合は予習と復習のバランスが重要で、スピードの速い授業に追いつくためにはどちらもおろそかにはできません。
オフライン(対面)の授業と同じですが、授業に追いつけるようになることが成績アップへの近道です。時間の都合や体調の問題などがあるかもしれませんが、可能な範囲でいいので予習も復習も取り組むようにしましょう。
わからないところを質問する
自力で予習や復習をしても、どうしてもわからない箇所というのが出てきてしまいます。そんな時は積極的に質問するようにしましょう。
一番やってはいけないのは、分からない問題を放置することです。人によっては恥ずかしいと思ってしまうかもしれませんが、分からないままにしているとそこから派生して他の場所もわからなくなってしまう可能性があります。
分からないことは恥ずかしいことではありません。質問できる環境が整っているのであれば、積極的に活用するのをおすすめします。
まとめ
オンライン授業はメリットが多い反面、デメリットもそれなりに存在します。自由に参加できる形式もあるため、ついつい甘えてしまう人も少なくありません。
しかし本気で成績を上げたいのであれば、対面授業と同様、積極的に授業に参加する必要があるでしょう。オンラインの授業だから成績が下がったというのは、今のところ実証されていません。
オンライン授業は自由度が高い反面、自分をコントロールしないといけないことを忘れないようにしましょう。このコントロールができるようになることも自立につながるため、メリットのひとつと考えられるかもしれませんね。