「子どもがよく忘れ物をしてしまう」
「注意しているのに何度も必要な物を忘れるのはなぜ?」
子どもの忘れ物にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
学校には、毎日持って行くべき物とイレギュラーに必要になる物とがありますが、子ども自身も忘れたくて忘れているわけではないはずです。
しかし、忘れ物によって自分が困るだけでなく、周囲の人たちにも迷惑を掛けてしまうこともあり得ます。
そこで今回は、忘れ物が多い原因と対策についてご紹介します。
子どもの忘れ物を目にする度に叱ってしまう親心もわかりますが、忘れ物をした際にはできるだけ避けたい言動があります。
子どもにとって逆効果とならないよう、親の対応についても一緒に学びましょう。
目次
忘れ物が多い原因とは
子どもたちは、小学生の頃から毎日多くの学習道具を持って登校しています。
不注意から時々忘れ物をしてしまうのは誰にでもあり得ることですが、忘れ物が頻繁だったり大切な物を忘れたりすると心配になるものです。
忘れ物をしてしまう原因は1つではなく、複合的な場合があります。
また、子どもによって理由はさまざまで、本人の問題ではなく環境が関係していることも考えられます。
おもな4つの原因を見ていきましょう。
時間に余裕がない
前日に準備する習慣がなかったり、塾や習い事で夜遅くまで帰宅しなかったり、朝時間がなかったりで、荷物をチェックする時間がないという子がいます。
朝の時間を増やすのが難しければ、そのぶん前日の夜に少しだけ時間を作り、準備を徹底するくせをつけなくてはなりません。
持ち物を把握していない
忘れ物が多い子の中には、毎日必要なものがわからない、いつ何を持っていくのかわかっていないというケースがあります。
持ち物を耳で聞いただけでは覚えられなかったり、プリントをあまり見ていなかったりということもあるため、習慣が付くまでは家族のサポートが必要となります。
覚えていても抜けてしまう
持っていくべきものを覚えていても、いざ当日になると忘れてしまっているということもあるでしょう。
大人でも「言われたときは覚えていたのに!」という経験があるはずです。
言われた段階でメモを取る、持っていくまでに日数が空くようであれば早めに用意してしまう、必要な日のカレンダーに目立つようなメモをつけておくなど忘れないための工夫が大切です。
物の定位置が決まっていない
必要な物がわかっていても、それがどこにあるのか探し回るようでは時間ばかりがかかってしまいます。
物をしまう場所が決まっていないと、なくすことも多くなります。
いつも「○○はどこ?」と探している人は注意が必要です。
また、前々から準備していたものもいざというときにどこにいったかわからないという事態を招きかねません。
忘れ物が多いこととADHDとの関連性
忘れ物をしてしまう原因には、発達障害が影響している可能性があります。
ADHDとは
ADHDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの頭文字を取った言葉であり、注意欠如・多動性障害とも呼ばれる発達障害の一種です。
ADHDは親の育て方で引き起こされるものではありませんし、子どもの努力次第でできないことができるようになる、というものでもありません。
病気ではなく特性と捉え、子どもの個性として向き合っていくことが大切です。
ADHDの特性
ADHDの特性としては一般的に次のようなものが挙げられます。
- 忘れ物が多い
- うっかりミスが多い
- 整理整頓ができない
- 注意力散漫
- じっとしているのが苦手
- 待つのが苦手
- 落ち着きがない
家から持っていく物を忘れてしまう、学校から持ち帰るのを忘れてしまう、うまく整理整頓ができない、宿題をするのを忘れてしまうなどの行動は子どもの怠慢や準備不足ではなく、ADHDによるものかもしれません。
当てはまる項目があり、日々の生活で困りごとがある場合は医療機関を受診してみるとよいでしょう。
しかし、ADHDの子どもすべてにこれらの行動がみられるわけではありませんし、不注意であったり落ち着きがなかったりする子が皆ADHDであるということもありません。
忘れ物が多いというだけでADHDだと決めつけることのないよう注意が必要です。
忘れ物対策
忘れ物をしないためには対策が必要です。
- 必要な持ち物を把握する
- チェックリストで持ち物を確認する
- アプリを利用する
- 毎日のルーティンを決める
- 物の住所を決める
これら5つの方法は、どれもすぐに真似できるものばかりです。
取り組みやすいものから順にやってみてください。
必要な持ち物を把握する
まずは、学校生活で必要な持ち物を知りましょう。
毎日必要なのは何か、特定の曜日に必要なのは何か。
最低限それだけ把握しておくだけでも意識が変わります。
チェックリストで持ち物を確認する
毎日の学校への持ち物や、習い事に行く際に必要な持ち物をチェックリストにして記載しておくのも効果的です。
登校前にすべての持ち物がかばんに入っているかを見直し、OKであればチェックをつけたりマグネットを置いたりして視覚でも確認できるような体制をつくります。
財布・鍵・学習用具など基本的なものはもちろん、細かなものまで書き出しておくと、うっかりミスを防げるようになります。
「頭で覚えておかなくてもリストを見て準備すれば大丈夫」という安心感が心の余裕にもつながるでしょう。
繰り返し使えるようにホワイトボード等を使い、リビングや玄関といった出かける前に必ず目に入る場所に置いておくのがポイントです。
イレギュラーな物については、メモに書いてチェックリストに貼っておくなど、仮に忘れていても目に付くような工夫で乗り越えられます。
慣れるまでは親子でチェックするようにすれば忘れ物は少しずつ減らせるようになるはずです。
アプリを利用する
手書きのメモやリストももちろん良いですが、忘れ物対策に使えるアプリも存在します。
アプリだと、項目の追加や削除、そして復元が簡単で毎日使うリストとしては時短できるというメリットがあります。
リマインダーやシンプルなTODOリストも各種ありますので、自分に合ったアプリを使ってみてください。
翌日の準備をする時間になったらアラームが鳴るという設定にしておくのもおすすめです。
毎日のルーティンを決める
荷物の準備やチェックに時間がないということであれば、いくら体制を整えても機能しない可能性があります。
まずは、毎日の大まかなルーティンを決めましょう。
帰宅後、どのタイミングで明日の準備をするのか、朝の最終チェックはいつするのか。
もし、足りないものや忘れているものが発覚した際、出発ギリギリだとどうにもならないかもしれません。
焦らないためにも荷物は前日のうちに用意し、当日しか入れられない物と持ち物の最終チェックは朝起きてから余裕をもっておこなうようにしましょう。
ルーティンに慣れてくると自分のリズムができ、準備にかかる時間も徐々に短縮できます。
物の住所を決める
「明日はボンドが必要だった」と手を伸ばしたら、思っていたところにボンドがなかった、という経験はありませんか?
それがごく稀なことならよいのですが、物の定位置が決まっていないと毎回違う場所に物をしまっている=適当に物を置いているという状態になります。
準備のたびにいくつもの物を探すところから始まるようでは、スムーズな準備はできません。
まずは物の1つひとつに住所を決めてあげましょう。
使ったら戻す、簡単なようで難しいかもしれませんが、決まった位置に物があれば整理整頓も荷物の準備もしやすくなり、結果として忘れ物を減らすことにもつながります。
忘れ物が多い子に対して親がやってしまいがちなNG言動
忘れ物をなくすには、親の指導と助けが必要だと考えるのはごく自然なことです。
しかし、よくやってしまいがちな次の4つの言動は、かえって子どもを追い詰めて逆効果となってしまう可能性があります。
- 忘れ物したことを責める
- 親が忘れ物を毎回届ける
- 罰を与える
- 準備に手を貸しすぎる
なぜ避けた方がよいのか、それぞれ見ていきましょう。
忘れ物したことを責める
「どうして忘れ物をしたの」「なんでいつもそうなの」などと子どもを責めてはいけません。
忘れ物をする我が子に対して親が焦るのと同様に、子ども自身も困っているものです。
忘れ物をしたくてしているわけではないため、責めても解決にはなりません。
やってしまったことを責めて追い詰めるのではなく、解決に繋がるような話し合いができるといいでしょう。
親が忘れ物を毎回届ける
子どもの忘れ物に気付いたとき、急いで学校へ届けてあげるという親もいることでしょう。
子どもは学校で困ることもなく大変助かるのですが、忘れ物のたびに届けてくれるのであれば、子どもは「忘れても届けてもらえる」と感じてしまいます。
その結果「次は忘れないようにしなくては」という強い思いが生まれにくくなってしまうのです。
罰を与える
「今度忘れ物をしたらゲームは禁止にするよ!」
こんな罰を与えてはいませんか?
その縛り付けを意識することで本当に忘れ物がなくなればよいのですが、残念ながら罰がプラスに働いたという例はあまり耳にしません。
それどころか、罰を受けることを怖がるあまり、忘れ物をした事実を親に隠すようになる危険性もあります。
準備に手を貸しすぎる
子どもの忘れ物が心配なあまり、親が準備に手を貸しすぎていないでしょうか。
親がやってくれるのであれば、子どもにとって心強いのは間違いありません。
しかし、忘れ物があったら親のせいにしたり、いざ自分1人で準備をしなくてはならないときに何から手をつければいいかわからなくなったりする可能性があります。
子どもの成長を考えると手を出しすぎず、一緒に荷物の見直しをする程度がよいのではないでしょうか。
親が心がけるべき言動
では、親はどんな言動をとるべきなのでしょうか。
- ポジティブな声掛けをする
- 子どもと一緒に対策を考える
- 特別な持ち物は一緒に準備をする
試しやすい3つの方法をご紹介します。
ポジティブな声掛けをする
忘れ物をしたことを問い詰める、起きてしまったことを責めて落ち込ませるというネガティブな声かけではなく、どうしたら忘れ物をなくせるかにつながるポジティブな声かけを目指しましょう。
子どもと一緒に対策を考える
まず、忘れ物をしたことによってどう乗り切ったのか、どんな気持ちだったのかを子どもに尋ねます。
責めるような口調ではなく、何気ない会話をするときのような自然なやりとりを心がけてください。
次に、忘れ物をしてしまった原因について振り返ってみます。
登校前に持ち物を書いたプリントを見なかったのかもしれませんし、いつもと違う場所に物が置かれていて気付かなかったのかもしれません。
理由は何であれ、思い当たることは子ども本人にもあるはずです。
「どうすれば忘れ物をしなくなるか」という対策は親子で一緒に考え、実践します。
親が一方的に決めるより自ら考えたことは意識としても強く残りますし、親としてもその後の声かけやサポートがしやすくなります。
子どもも今後の生活で「まず自分で考える」という成長につながるでしょう。
特別な持ち物は一緒に準備をする
学校では時々、特別な持ち物が必要になります。
授業で使う道具だったり提出期限の短いプリントだったりとさまざまなケースがありますが、その場合は親も一緒に準備をすることで忘れ物を回避できるでしょう。
週始めや週の終わりのタイミングで「今週(来週)は特別な持ち物はない?」と声かけをして一緒にチェックするだけでも効果が期待できます。
忘れ物をしてしまう原因に合わせて最善の対策を
誰しも忘れ物をしてしまうことはあります。
それがたまにであれば気にする必要はありませんが、頻繁にあるようなら原因の解明と対策が必要となるでしょう。
適切な対策は子ども1人ひとりによって異なります。
親の対応として大切なのは、全部やってあげることでも責めることではなく、子どもと一緒に考えてサポートすることです。
忘れ物は「完璧にゼロにする」のではなく「できるだけ減らしていく」という目標で毎日取り組んでいくと、気持ちの上でも負担にならないのではないでしょうか。