感受性が強く繊細な気質である「HSC(Highly Sensitive Child)」。
「人一倍敏感な子ども」を意味し、近年少しずつ認知度が高まってきた言葉ですが、耳にしたことがあるでしょうか。
子どもたちは5人に1人の割合で、生まれつきこの特性を持っているといわれています。今回は、HSCの特徴を正しく知り、子どもに合わせた対応ができるようポイントを解説します。
目次
不登校に多いHSCとは?
HSC気質の子は、周囲の人の感情に人一倍敏感であり、新しい環境に馴染むのが得意ではありません。
ささいなことで傷つきやすいため、学校生活にストレスを感じる場合が多く、不登校の原因のひとつとも考えられています。
HSCの特徴4つ
「傷つきやすくてすぐに泣いてしまう」、「ささいなことで落ち込みやすい」
そんな子どもの繊細さに頭を悩ませている親も多いのではないでしょうか。
HSCには「DOES」と呼ばれる4つの特徴があります。
- D(Depth of processing/プロセスの処理が深い)
- O(easily Overstimulated/刺激を強く受けやすい)
- E(Emotional responsiveness/感情的な反応が強い)
- S(empathy and sensitive to Subtle stimuli/微妙な刺激に対する共感と敏感さを持っている)
これらは、生活環境などに左右されることなく、HSC気質のほとんどの子どもに見られる特徴です。
HSCを理解して子どもに寄り添うため、まずは4つの特徴をひとつずつ見ていきましょう。
D(プロセスの処理が深い)
まずは「プロセスの処理が深い」、すなわち少ない情報から多くのことを察する能力を指します。
HSCの子は周囲の空気を敏感に感じ取るため、場の空気を読み過ぎて物事に慎重になりすぎる傾向があります。
先のことまで考えを膨らませ、間違いや失敗を恐れてしまうのです。学校や幼稚園になじめず苦労することもあるでしょう。
O(刺激を強く受けやすい)
次に、あらゆる刺激の受け方が人より強いことが挙げられます。
- 音
- におい
- 味覚
- 空腹
- 肌触り
- 暑さや寒さ
- 痛み
さまざまな刺激を敏感に感じ取ってはストレスを抱え、環境の変化にも対応するのが苦手です。
また、刺激の強い場所にいるとすぐに疲れてしまいます。寝ているときもちょっとした物音で起きてしまうため、赤ちゃんの頃は親にとって育てにくい一面があったかもしれません。
E(感情的な反応が強い)
感情的な反応が強いことも特徴のひとつです。
誰かが怒られているときにそばにいられなかったり、平常心でいられなくなってしまったりするのは、大声や叱責を自分が怒られているかのように捉えてしまうためです。
学校という刺激の多い場所では、先生の声や生徒同士のちょっとした言い合いでもHSCの子にとっては強い刺激となってしまいます。
ただし、この反応はネガティブな感情だけでなく、嬉しい・楽しいといったポジティブな感情でも見られるため、悪いものではないと覚えておきましょう。
S(微妙な刺激に対する共感と敏感さを持っている)
最後は、他の人がなかなか気付かないような微妙な刺激に対しての敏感さです。
例えば、他人の髪型や身の回りのささいな環境の変化に気付けたり、機嫌の微妙な変化を感じ取ったりすることができます。
敏感に気付けることで役に立つ場合もありますが、気を張りすぎて疲れてしまうことも少なくありません。
HSCにはさまざまなタイプがありますが、学校生活においては先生の感情の変化を瞬時に察することができるため、内向的で優等生タイプの子が多い傾向があります。
HSCは生まれ持った性質
HSCは気質であり、病気や障害ではありません。
そのため、環境によってあとからHSCになることはなく、成長とともに何かのきっかけでHSCでなくなるということもないのが一般的です。
病院で診断されるものでもありません。子どもがHSC気質だからといって、悲観的になる必要はないのです。
HSCは、自閉スペクトラム症と特徴が似ていて混同されることがありますが、他人の変化に気付けたり感情移入できたりする面で違いが見られます。
親の育て方が悪いなどと自分を責めることなく、ひとつの個性として付き合っていきましょう。
HSCの子どもとの接し方
「そんなこといちいち気にしないで」
「どうしてすぐ落ち込んだり泣いたりするの」
つい、このような声かけをしてしまっていないでしょうか。大人の無知と誤解は、時に子どもを深く傷つけてしまいます。
子どもが成長過程の中で生きづらさを感じないよう、干渉や押しつけのない環境を築くことが大切です。
HSCについてよく知り理解する
子どもがHSCかもしれない、という場合はどうすればよいのでしょうか。
まずは専門家の発信する情報や本を参考に、親がHSCを深く正しく知ることから始めましょう。HSCに関するチェックリストなどで、どの程度該当するのか確認してみるのもおすすめです。
病院で診断が下されるものではないため、「こういう体質なんだ」「こういう傾向があるんだ」と親子で共有しておくとよいでしょう。
学校やスクールカウンセラーに相談してアドバイスを求めることも有効ですが、HSCについて認知度が低い場合があるという点は注意が必要です。
親だけでなく、子どもを取り巻くすべての大人がHSCの特性を理解すると、子どもを否定する言動は減らせるはずです。
疲れやすい子が多いので休息を与えるようにする
HSC気質の子は、敏感ゆえにとても疲れやすい特徴があります。
- 人の多い場所で過ごすと疲れる
- 叱責の声を聞くのが苦手
- 些細なことで傷ついてしまう
周囲へのアンテナが常に張り巡らされている状態であるため、ストレスを溜め込みやすくなっています。進学や進級で新しい環境に変わる際は、特に不安を感じることが増え、不登校へつながるケースが多いです。
文化祭や修学旅行といった行事でさえ、楽しい反面、刺激の多さにひどく疲れてしまいます。体の疲れはわかっても、心の疲れは目に見えないもの。
不登校にならずとも、学校生活は人一倍疲弊するものだと周囲が理解して、無理をしすぎないようにフォローすることが大切です。日常生活でもスケジュールを詰め込みすぎず、何も考えずにいられる時間を適度に作ってあげるとよいでしょう。
鍵となるワード「自己肯定感」
HSCの子どもは自己肯定感が低いといわれています。
感情の起伏を注意されたり敏感であることを押さえつけられると、自己肯定感がさらに下がってしまいます。
親が子どもに寄り添うと、「甘やかしすぎ」などと心ない言葉を浴びることもあるでしょう。それによって親の自己肯定感も下がることが少なくありません。
しかし、一番に寄り添って話を聞ける親の存在は間違いなく子どもにとってプラスになります。まずは親が自分を認め、自己肯定感を高められるよう意識しましょう。
みんなと同じでありたいと願う一方で、思い通りにいかない心身のバランスに悩んでいるのは子ども本人です。
「あなたはそのままでいい」と周囲が認めてあげると、子どもは安心感を得られます。それが自己肯定感につながり、学校生活へのモチベーションも向上していきます。
子どもが自分らしく伸び伸び過ごせるよう、前向きな声かけを心がけたいものです。
HSCは病気ではありません
本人も周囲の大人もその特徴を個性のひとつとして受け止め、前向きな関わりとしていくことが求められます。
クラスでの話し声や先生とのやりとりが過度な刺激となり、気になって授業に集中できない場合もあるでしょう。
授業に参加できなければ、どうしても勉強に遅れが出てしまいます。特に中学・高校では、進学のためにも勉強をおろそかにはできません。
そのため、親はHSCについてよく理解した上で、子どもにとって適切な教育環境を選ぶことが重要です。
ひとつの選択肢として「通信制高校」が挙げられます。
通信制高校では不登校の子どもや他校からの転入・編入を積極的に受け入れており、子どもが抱えるさまざまな悩みにも理解を示してくれる場所です。
感受性の強いHSC気質の子にとって嬉しいのは、毎日登校する必要がないということ。スクーリングの日数は学校によって異なり、年に数日でよいというところもあります。
オンラインの授業とレポートは自分のペースで進められるため、他人のことを気にせずにじっくり取り組めるのが魅力です。
中学生は進学先として、高校生は転入先として検討してみてはどうでしょうか。
普段学校で抱えている不安がひとつ減るだけでも心身ともにストレスが減り、学校生活が楽しみなものへと変化していくかもしれません。
ID学園高等学校での対応について
ID学園は多くの個性や価値観を大切に夢や希望を育む教育を基本理念としておりますが個別対応が難しいことも多くあります。
症状の程度によっては、本人・保護者様・当校各教員との相談の上、入学辞退や転学されている方もいらっしゃいます。
HSC症状に関連するご心配をお持ちの方は、本人にとってご家庭にとってより良い学校生活となるよう出願の前に一度ご相談されることをおすすめします。