子どもの不登校で悩まれている方は多いのではないでしょうか。
不登校になった場合、早く子どもが学校に行けるよう、大人は原因を突き止めようとします。
不登校には必ず原因がありますが、それは1つとは限らず、複数の要因が重なり合って不登校状態となっていることの方が一般的です。
また、子ども本人にも不登校の原因がわからず悩んでいるかもしれません。
今回は、小学生・中学生・高校生の不登校の主な原因と、原因がわからない際の親の対応方法について解説します。
目次
不登校の主な原因3つ
不登校の原因にはどのようなものがあるのでしょうか。
文部科学省によると不登校の主な原因を3分類しており、それら下記のいつの状況によるものと分類しています。
- 学校に係る状況
- 家庭に係る状況
- 本人に係る状況
文部科学省の調査によると、年代によって原因の順位に変動はあるものの、不登校には次のような要因が多いとされています。
- 無気力・不安
- いじめを除く友人関係をめぐる問題
- 親子の関わり方
- 生活リズムの乱れ・遊び・非行 など
原因として挙げられている一つひとつの項目を「学校」「家庭」「本人」の3つに分けて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
学校に係る状況
「学校に係る状況」とは、不登校の原因が学校にある場合を指します。
- いじめを含めた、友達との関係
- 先生との関係
- 勉強についていけない など
学校に通う子どもたちは、誰でも少なからず人間関係や勉強での問題を抱えているものです。
いじめは大きな問題として取り上げられ、もちろん許される行為ではありませんが、いじめに至らないような些細な人間関係のトラブルが不登校の原因となっていることも多くあります。
中学生・高校生になると、進学や将来についての選択を迫られ、受験に伴って勉強に関するストレスが増えてきます。
度重なるテストや、同級生と比較されるなど、勉強が原因で不登校となるケースも少なくありません。
家庭に係る状況
家庭環境が不登校の原因となることもあります。
- 親の離婚・リストラなどによる環境の大きな変化
- 経済状況の変化
- 依存による親との離別不安
- 家庭内不和 など
本来子どもが落ち着ける場所であるはずの家庭で、夫婦が常に言い争っていたり子どもにつらく当たったりすると、強いストレスをかけてしまいます。
また、親子ともに互いがいなくては何もできないというような依存状態にあると、親と離れて学校で過ごすことに強い不安を感じてしまう恐れがあります。
本人に係る状況
学校や家庭での問題ではなく、子ども本人に係る理由で不登校となる場合もあります。
- 低血圧・起立性障害などの体質
- 発達障害
- 遊びや非行 など
学校に行きたい気持ちがあっても、朝どうしても起きられなくて行けない、クラスのみんなと同じように黙って授業を聞くことが難しい、読み書きの一部に苦手があって勉強が遅れてしまう、などは本人の意思に反して起こり得る問題です。
はっきり診断がついていない場合、家族や周囲の人にはこの症状が伝わりにくく、「怠けているだけだ」と捉えられがちです。
それが追い打ちとなって心に傷を負い、不登校になってしまうケースもあります。
不登校の原因:小学生
不登校の原因は、年齢によっても異なります。
【小学生の原因】 いじめ ……0.3% いじめを除く友人関係をめぐる問題 ……6.7% 教職員との関係をめぐる問題 ……1.9% 学業の不振 ……3.2% 進路に係る不安 ……0.2% クラブ活動・部活動等への不適応 ……0.0% 学校の決まり等をめぐる問題 ……0.7% 入学・転編入学・進級時の不適応 ……1.8% 家庭の生活環境の急激な変化 ……3.8% 親子の関わり方 ……14.6% 家庭内の不和 ……1.6% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……14.0% 無気力・不安 ……46.3% |
https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
まずは小学生の原因上位3つを見ていきましょう。
1位 無気力・不安
「無気力・不安」とは、学校生活に対して、楽しさややりがいなどを感じられずに不登校になってしまうというものです。
小学生は、ストレス耐性がまだできていない年代です。
学校や家庭での嫌なことや悩みが積み重なって無気力となり、不登校につながってしまうケースは少なくありません。
周りに自分が思っていることを表現できない子も多く、不登校になるまで周囲が気付いてあげられない可能性もあります。
2位 親子の関わり方
小学生は家族と過ごす時間が多く、生活全般において家庭の影響を大きく受けています。
低学年は特に、家族間の問題が子どもの学校生活にまで影響してしまったり、親と離れたくないという不安から登校できなくなったりする可能性があります。
また、親が過干渉すぎて縛り付けてしまうと、子どもの自立を妨げてしまうということも知っておくべきでしょう。
3位 生活リズムの乱れ・遊び・非行(データより)
生活リズムの乱れから登校できないという子どもも多くいます。
学校へ行かなくても規則正しい生活を送るというのは大切ですが、朝起きられない、あるいは昼夜逆転してしまっている子どもに「早く起きなさい!」と言っても、起きる必要性を見いだせない子もいるでしょう。
次第に親と対立するようになり状況が悪化する可能性もあります。
朝にこだわらず、子ども本人が決めた時間に起きる・食べる・寝るといったリズムを続けられるようになることが大切です。
不登校の原因:中学生
中学生は、小学生よりも行動範囲が広がり、勉強にも力が入り始める時期です。
【中学生の原因】 いじめ ……0.2% いじめを除く友人関係をめぐる問題 ……12.5% 教職員との関係をめぐる問題 ……0.9% 学業の不振 ……6.5% 進路に係る不安 ……1.1% クラブ活動・部活動等への不適応 ……0.6% 学校の決まり等をめぐる問題 ……0.8% 入学・転編入学・進級時の不適応 ……4.1% 家庭の生活環境の急激な変化 ……2.5% 親子の関わり方 ……6.2% 家庭内の不和 ……1.8% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……11.0% 無気力・不安 ……47.1% |
友達との関係や、勉強といった要素が不登校の原因として増えてきます。
思春期を迎える年代でもあるため、明確な不登校の原因が突き止めにくいという特徴があります。
1位 無気力・不安
中学生の不登校の原因として最も多いのは「無気力・不安」で、学校に行きたくない明確な理由がない場合も多いです。
「特に理由もないけど、なんとなく行きたくない」という無気力状態の根本には、「自分なんて……」「自信がない」「行っても無駄なだけじゃない?」などの何らかの小さな不安要素があるはずです。
面倒くさがるのを怠けと決めつけて親子の溝を作ってしまわないよう、子どもの話を否定せずにいつでも聞ける準備が親側にも必要です。
2位 いじめを除く友人関係をめぐる問題
クラス内や横のつながりが主であった小学生時代と異なり、中学生では部活動による学年を超えた縦のつながりも出てきます。
そのため、先輩・後輩との人間関係にも気を配らなくてはいけなくなり、人付き合いに悩む生徒が多いのが実情です。
3位 生活リズムの乱れ・遊び・非行
睡眠不足で朝起きられずに休みがちとなり、不登校に。その結果、生活リズムをなかなか直せずに悩む生徒も少なくありません。
部活や塾、習い事と学校の両立で忙しかったり、夜遅くまでSNSやゲームに没頭していたりと、生活リズムが乱れてしまうきっかけはさまざまです。
思春期・反抗期の中学生時期は、親や先生に対する反抗心から非行に走り、不登校を引き起こしている場合もあります。
不登校の原因:高校生
高校生になると、将来について考える場面が多くなります。
【高校生の原因】 いじめ ……0.2% いじめを除く友人関係をめぐる問題 ……8.8% 教職員との関係をめぐる問題 ……0.5% 学業の不振 ……6.1% 進路に係る不安 ……4.9% クラブ活動・部活動等への不適応 ……0.9% 学校の決まり等をめぐる問題 ……0.8% 入学・転編入学・進級時の不適応 ……9.2% 家庭の生活環境の急激な変化 ……1.9% 親子の関わり方 ……3.5% 家庭内の不和 ……1.7% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……15.4% 無気力・不安 ……37.7% |
大学や専門学校へ進学するのか、就職するのか、そのために何をしなくてはいけないのか、こんなはずじゃなかったなど、自分自身と向き合えば向き合うほど追い詰められていく可能性もあります。
1位 無気力・不安
小中学生と同様、もっとも多い原因が、この「無気力・不安」です。
- 目指す高校に入学したけれど、理想と違った
- 期待に応えるべく頑張ってきたけれど、もう疲れてしまった
- 何のために学校に行くのかわからない
環境が大きく変わる高校入学後に無気力さを感じることが多く、これまで真面目に勉強などに取り組んできた子によく見られるとも言われています。
「自分は何をやっても認められない」「頑張っても挫折ばかり」「何もかも無意味」などという感情が隠れているため、自己肯定感を高めたり小さな成功体験を増やしたりすることで、状況の改善をはかるのが望ましいでしょう。
2位 生活リズムの乱れ・遊び・非行
遊びや非行が増えるのは、家庭環境が影響している場合があります。
家庭内に居場所がなく、家に帰りたくないため悪い友達と遊び歩くようになったり、縛り付けの強い親に反発したかったり、反対に親の気を引きたかったりという背景から、非行に走る子もいるのです。
3位 入学・転編入学・進級時の不適応
入学や進級という環境変化では、適応するために大きなエネルギーを消費します。
- 思っていた学校生活と違った
- 友達ができない
- 苦手な生徒あるいは先生がいる
- 知り合いのいない地域であるため孤立している
小中学校と違い、高校は退学が可能です。
理想とかけ離れた学校生活だった際、不登校とあわせて学校を辞めるという選択肢が選ばれており、退学者も1年生が多い傾向にあります。
不登校の原因がわからない時の親の対応方法
不登校の原因は、明確になるものばかりではありません。
状況を良くしたいと焦る気持ちも理解できますが、まずは焦らず子どもを追い詰めないことが大切です。
- 原因を問い詰めない
- 子どもがやってきたことを認める
- 子どもの気持ちを尊重する
- これまでと態度を変えない
- 子どもが安心して話せる環境作りをする
子ども本人にも原因がわからないことがあるため、問い詰められると状況が悪化しかねません。
不登校を悪いものとして登校を強要したり、子どもの意見を否定するような対応は極力避けるようにしましょう。
子どもは一人で長い時間思い悩んだ上で、不登校状態にまでなってしまっています。
その状態で登校を強いるのは、子どもにとってさらに大きなストレスとなり、「親も理解してくれない」と壁を厚くしてしまうきっかけになりかねません。
まずは、学校に行きたくないという子どもの意見を認めて尊重し、心身ともに休養させてあげましょう。
そして、子どもが何でも話してくれるような安心できる環境を作る必要があります。
常に寄り添う姿勢を見せ、家族は味方であると伝えることで、子どもの心も軽くなります。
不登校の相談機関について
不登校は、家庭内だけで解決できる問題ではありません。
原因が何であれ、抱え込まずに相談することで適切なアドバイスを受けられることがあります。
中高生にもなると、親と密なコミュニケーションを取るのは難しいかもしれません。
なかなか悩みの原因が聞けずに、親としても不安が大きくなるのではないでしょうか。
その場合は、学校や相談機関に頼ることで解決の糸口が見つかることもあるはずです。
学校外の相談窓口としては、次のような機関が挙げられます。
教育支援センター(適応指導教室)
主に小中学校を長く休んでいる子どものために、都道府県や市町村の教育委員会等に設置された公的機関です。
教員免許、あるいは臨床心理士や社会福祉士等の資格を持つ職員が多く、相談・指導をおこなっています。
高校生も受け入れていたり、スクールカウンセラーを派遣しカウンセリングを受けられたりする教育支援センターもあります。
不登校支援センター
小学生から高校生まで、16万件ものカウンセリング実績を持つ不登校専門機関です。
札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・大阪・福岡の全国7都市に拠点を持っているため、幅広い地域の方を対象に不登校への支援とサポートを行っています。
カウンセリングでは、子どもだけでなく親のことをケアしてくれるのも魅力。
カウンセリングは初回無料です(最大100分)。
これまでに数々の不登校家庭をサポートしてきた専門機関であれば、相談によって子どもはもちろん家族の心のケアにもつながります。
解決への一歩として、勇気を出して学校へ、そして専門機関へ相談してみてはいかがでしょうか。
不登校の原因は子どもの数だけあり、すべてをパターン分けすることはできません。
それでも、不登校に多い原因や対応の仕方を知っておくことで、親が焦らずに済む場面はきっと出てくるはずです。
子どもを信じ、寄り添える環境を作りながら、一歩ずつ前へと進んでいきましょう。