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保健室登校|不登校との違いと教室復帰へのステップ

不登校との違い

不登校と保健室登校の決定的な違いは、その文字からも明らかなとおり、「登校するかしないか」にあります。

不登校(登校拒否)については、学校不適応対策調査研究協力者会議(平成4年)において、 以下のように定義され、学校基本調査でもこの定義が用いられています。

「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童児童・生徒が登 校しないあるいはしたくともできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由に よるものを除く)をいう。」 

保健室登校は、児童・生徒の精神的なフェーズに応じて以下の2パターンが考えられます。

  1. 長期欠席・不登校から、次のステップとして保健室登校を選択する場合
  2. 通常の授業を受けていた状態から、保健室にしかいけなくなる場合

上記のパターンからもわかる通り、一般的に保健室登校は不登校と通常登校の間にあるような登校形態であるとイメージ頂くと良いかと思います。

不登校 ⇔ 保健室登校 ⇔ 通常登校

言い換えれば、保健室登校には、以下の2つの効果があると言えます。

  1. 不登校から教室へ復帰するステップとして機能する
  2. 不登校状態になるのを防ぐためのクッションとしての効果がある

保健室登校の割合

実際に保健室登校の児童・生徒がいる学校の割合は以下のようになっております。

  • 小学校:32.4%
  • 中学校:36.5%
  • 高等学校:36.8%

およそ3校に1校保健室登校の児童・生徒がおり、珍しいことではないことが分かります。

保健室登校児童・生徒の1日の生活例

前提として、保健室登校の児童・生徒の一日の生活は、その児童・生徒の年齢や健康状態によって様々です。

保健室登校の児童・生徒の一日の生活例を2つお示しします。

例①:心身の休息が十分に必要である児童・生徒

  • 保護者と一緒に登校
  • 保健室で養護教諭と雑談し、昼前に帰宅

例②:比較的健康状態が良い児童・生徒

  • 1人で登校
  • 保健室で自主学習に取り組む
  • 給食は他児童・生徒とともに教室で食べる
  • 好きな時間に下校する

比較的自由度が高いことが保健室登校の特徴であるといえます。

保健室登校と類似の登校形態

保健室登校と似た登校形態として、「別室登校」と「放課後登校」があります。具体的な違いを以下にまとめます。

・別室登校:空き教室といった、保健室とは別の場所で過ごす登校形態。教室に入れない児童・生徒のために特別に教室が設けられることもある。保健室登校との一番の違いは、支援員や先生が個別で指導にあたり、学習に重きを置いている点である。児童・生徒が在籍するクラスの時間割に沿って学習を進められるため、教室に復帰するステップとしてより効果的である。

・放課後登校:児童・生徒が在籍するクラスが下校した後の放課後に、保護者と一緒に登校し、短時間で先生と雑談や勉強を進めるような登校形態。保健室登校や別室登校の前ステップとしても効果的である。

別室登校や放課後登校に明確な定義はなく、学校によって対応が異なる点には注意して頂ければと思います。

このような登校形態と比べたときの保健室登校のメリットはどこにあるのか、次章で見ていきましょう。

保健室登校の4つのメリット

「不登校との違い」にて、保健室登校には

  1. 不登校から教室へ復帰するステップとして機能する
  2. 不登校状態になるのを防ぐためのクッションとしての効果がある

といった効果があると説明しました。それ以外にも4つほどメリットが挙げられます。

出席として扱ってもらえる

多くの小中学校では、保健室登校も通常の教室での登校と同様に出席として扱われ、欠席扱いにはなりません。これは、学生が学校施設内にいる限り、教育の機会を確保するためと、義務教育の枠組み内で平等な教育を受ける権利を保障するためです。

特に中学校では、出席日数が生徒の内申点に影響を与えるため、保健室登校が出席日数にカウントされることは、その後の高校受験における選択肢を広げる大きな利点となります。

POINT

しかし、高校になると、各学校の方針によって保健室登校の取り扱いが異なることがあります。たとえば、定期試験を保健室で受けることを許可している学校もあれば、そうでない場合もあるため、具体的な対応は学校に確認が必要です。

個別で指導をしてもらえる

保健室登校では基本的に児童・生徒は支援員や先生と一対一で指導を受けます。不登校状態とは異なり、先生と共に自分のペースで学習を進められる点も大きなメリットと言えるでしょう。

健康面でのサポートを受けられる

児童・生徒のストレスや体調不良に適切に対処できる場所であるため、生徒は安心して学校生活を送ることができます。保護者の方も、児童・生徒の健康面に不安がある場合にも適切なサポートが提供されているため、安心して預けることができるのではないでしょうか。

さらに、保健室登校は学校生活のリズムを維持することが可能です。定時に学校に登校し、授業のチャイムや下校時間など、一定のスケジュールに従うことは、教室への復帰を見据えた生徒にとって重要です。遅刻や早退があったとしても、学校生活の一部として受け入れられ、受験や将来の学業に向けた準備の負担も軽減されます。

完全な社会からの孤立を防ぐことができる

最後に紹介するメリットは、児童・生徒が教室復帰をするために非常に重要な、「孤立の防止」です。

特に社会から孤立しがちな児童・生徒にとって、保健室は安全で心地よい場所となり得ます。ここで、養護教諭や他の教職員との関わりを持つことが、彼らの自信を取り戻す手助けをします。たとえ教室には入れなくても、学校の日常生活の一部に触れることができ、完全な社会からの孤立を防ぐことができます。

また、保護者にとっても、子どもが保健室登校を利用することは大きな安心材料です。学校との継続的な関係が保たれることで、子どもが完全に孤立することを防ぎますし、自宅で親子だけになることの不安からも解放されます。さらに、学校のスタッフと定期的にコミュニケーションを取ることで、その子の現状や進歩を理解する助けにもなります。

POINT

保健室登校は単に学校への身体的な出席を超え、子どもたちの心の健康や社会的なつながりを支える重要な役割を果たしています。子どもたちが学校とのつながりを持ち続けることができれば、孤立を防ぎ、心理的なサポートを受けながら徐々に通常の学校生活に戻ることが可能になるでしょう。

保健室登校の2つデメリット

多くのメリットがある保健室登校ですが、その反面デメリットも存在します。

保健室登校の大きなデメリットは以下の2つだと言えます。

人目が気になり、ストレスを感じることがある

保健室登校を続けると、他の生徒や先生の視線が気になり、児童・生徒にとってストレスになる場合があります。

保護者や先生は、児童・生徒がストレスを抱えていないか常に気を配り、登校しやすい環境を醸成してあげることが必要といえます。

学習状況が遅れる

保健室登校では、十分な時間を取って養護教諭や他の教員が指導できるとは限りません。ゆえに、進級や進学のための学習サポートが十分受けられる確証はありません。

特に、すぐに疑問を解決できない状況が続くと、授業の進行についていけなくなり、学業への不安が増えて、教室への復帰がさらに困難になってしまうケースもあります。

また、保健室登校中は、定期テストの受験が可能かどうかが成績に大きな影響を及ぼします。多くの学校では保健室でのテスト受験が認められていますが、テストを受けられない場合や、学習意欲や提出物の状況によっては成績が下がることもあります。成績評価の基準は学校によって異なるため、具体的な状況に応じた対応が求められます。

POINT

学校側や保護者の努力によって解決できることもあるため、保護者や教職員は、生徒の学びや健康を最大限サポートするために、適切な環境と支援を提供することが重要です。

教室復帰へ重要な5つのステップ

さいごに、児童・生徒が今後教室復帰を目指すために、具体的にどのような行動をとればよいのかを解説していきます。

結論、小さなステップ、成功体験を積み上げていくことが何よりも重要です。

以下のようなステップを積み上げていくことを目標にしましょう。

  1. 保健室登校で学校に行くことを習慣化する
  2. 空き教室(相談室など)に通い、支援員や先生と雑談したり、勉強を進めたりする
  3. 給食や、学活の時間など好きな時間割のときだけ教室に戻り、友達と過ごす機会を増やす
  4. 参加する授業を徐々に増やしていく
  5. 通常登校・教室復帰を実現する

保健室登校の習慣化

これまでの説明にもあったように、保健室登校は教室復帰へのはじめのステップとして大変効果的です。児童・生徒がプレッシャーを感じることなく、少しずつ学校生活に再適応するために、安心できるスペースから徐々に学校生活を再開しましょう。

空き教室に通う

空き教室などの安心のできる環境で、支援員や先生とコミュニケーションをとり、社交的なスキルを獲得、さらに学習も進めて自信をつけます。

好きな授業だけ教室で受ける

生徒が楽しんで参加できる活動や時間帯を選び、友達との交流を増やしていきましょう。一気に教室復帰を目指すのではなく、段階を踏むことで児童・生徒の精神的な不安を和らげることができるはずです。

参加する授業を徐々に増やす

児童・生徒が授業への参加を少しずつ増やすことで、学習に対するモチベーションと能力を段階的に向上させていきましょう。重要なのは、「彼らの意思を尊重し、彼ら自身のペースで」進めることです。

通常登校・教室復帰を実現する

参加する授業が増えると、気軽に話せる友達も増えてくることかと思います。無理のない範囲で継続し、完全復帰を目指しましょう。

このように、教室復帰にいたるまでは細かなステップを踏むことが重要です。焦らず、児童・生徒に寄り添い、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

まとめ

保健室登校は、児童・生徒が学校に通うことができるものの、様々な理由で普通の教室で授業を受けることが難しく、保健室で一日の大部分の時間を過ごす状態のことです。

保健室登校の効果としては、

  1. 不登校から教室へ復帰するステップとして機能する
  2. 不登校状態になるのを防ぐためのクッションとしての効果がある

の2つが挙げられます。

教室復帰を目指す手段として、保健室登校は非常に有効となるため、今回紹介したステップを是非実践してみてください。

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