子どもの不登校は、親にとって大きな心配事のひとつです。
不登校には色々なタイプがありますが、子どもならではの元気さや積極性が感じられなくなる「無気力型」は特に不安を感じるのではないでしょうか。
無気力型には早めのケアが大切と言われており、無気力になりかけている初期に気付くことができれば、不登校期間をより短くできるかもしれません。
この記事では、無気力型の不登校についての特徴と、親がどう対処すべきかについて解説します。
不登校問題の解決には、まず親や周囲が不登校について正しく知る必要があります。
一緒に無気力型について理解を深めていきましょう!
目次
不登校の無気力型とは?
無気力型とは、その名の通り、学校生活全般や自分の日々の生活にやりがいを感じられず、不登校になってしまうタイプを指します。
明確な理由があるわけではなく、「なんとなく楽しくない」「全部めんどくさい」と感じやすいのが特徴です。
【小学生の不登校原因上位】 無気力・不安 ……46.3% 親子の関わり方 ……14.6% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……14.0% |
【中学生の不登校原因上位】 無気力・不安 ……47.1% いじめを除く友人関係をめぐる問題 ……12.5% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……11.0% |
【高校生の不登校原因上位】 無気力・不安 ……37.7% 生活リズムの乱れ・遊び・非行 ……15.4% 入学・転編入学・進級時の不適応 ……9.2% |
参考:「令和2年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」.文部科学省初等中等教育局児童生徒課.2021-10-13
https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
文部科学省の2020年の調査によると、小学校・中学校・高校のいずれにおいても、不登校の原因として一番多いのは「無気力・不安」という結果が出ています。
すべての年代において、無気力状態に悩まされている親子は多いということがわかります。
学校での人間関係や勉強が問題となっているのではなく、自分自身に関わる要因、ましてや理由がはっきりしない不安の元を取り除くのは容易ではありません。
無気力型のこどもの特徴
不登校は、その特徴ごとに次の6つのタイプに分類されています。
不安など情緒混乱型 | 学校に行く気はあるが、登校時に頭痛や腹痛といった体調不良が出る。真面目な頑張り屋に多く、欠席への罪悪感もある。 |
無気力型 | 明確な理由はないものの、なんとなく行きたくないという状態が続く。 |
学校生活上の影響型 | 先生との相性が悪い、友達とうまくいっていない、いじめを受けている、勉強についていけない、といった学校での問題が原因となっている。クラス替えなど環境が変わることで登校できることも。 |
あそび・非行型 | 学校生活より遊びが優先されたり、非行グループとの付き合いが増えてしまうもの。行動範囲が広がる中高生に多い。 |
意図的な拒否型 | 学校より家で勉強した方がいい、やりたいことのために時間を使いたい、などのはっきりした理由により、登校自体に必要性を感じていない。 |
複合型 | 最初はひとつのきっかけだったが、徐々に気持ちや状況が変化して他の要因とも結びつき、立ち直るのが難しくなってしまったもの。 |
無気力型の不登校は、環境が大きく変わる高校入学後に起こりやすいと言われていますが、精神的に大人びた小中学生にも見られるタイプです。
では、無気力型の子どもに見られる特徴にはどんなものがあるのでしょうか。
順に見ていきましょう。
原因が特定できない
無気力型の不登校になる子どもは、問題なく学校に通っていたものの、徐々に元気がなくなり、学校や部活動を休みがちになります。
勉強に影響を及ぼし、成績も下降していくことが多いです。
ひどく疲れていてやる気がないように周囲からは見えるのが特徴です。
比較的まじめで落ち着いている子どもが多く、「不登校の原因が見当たらないし学校への不安もないが、なんとなく行きたくない」という状態が続きます。
本人も原因がわからないことがほとんどですが、その背景には、自分への自信のなさや、努力しても無意味である、という考えが隠されている場合があります。
積極性がない
もともと学校へは通っていても、学校生活にあまり意欲的ではなく、休みがちな傾向があるのが無気力型です。
子ども本人が積極的に学校へ行きたいとは言わないものの、友達や親が誘えば問題なく登校するというケースが少なくありません。
登校以外でも自分から何かしようとすることが少なく、「遊びに行こう」「勉強しよう」という周囲からの誘いによって自分の行動を決めがちです。
「めんどくさい」が全面に
これまで普段通りの生活を送っていた子どもが徐々に無気力化してくる時期には、ある特徴があります。
学校生活では、ルールや人間関係の中で子ども達は何らかの悩みや不満を抱えているものです。
- 勉強ばかりで学校が面白くない
- 友達と喧嘩した
- ○○先生は怒るから好きじゃない
このように、通常は不満の理由を伴った声を聞くことが多いのではないでしょうか。
しかし、無気力の前兆がある子どもの場合は原因を周囲に訴えることはなく、「めんどくさい」「だるい」ということばかり発する傾向にあります。
自分から積極的に動かないものの、友達の誘いによって学校へ行ける、行きたくない理由を聞いてもはっきりしないことから、親にもなかなか理解されないのが実情です。
不登校の無気力型を克服するには?
無気力型の不登校をそのままにしておくと、長期的な引きこもりに発展する危険性があります。
小中学生であれば不登校でも進級・進学の道はありますが、高校生の場合は留年して学校に籍を置き続けるか、最悪の場合は中退して進学も就職もしないという状況が考えられます。
では、親はどのように対応したらよいのでしょうか。
原因を掘り下げすぎない
無気力の原因としては次のようなものが挙げられます。
- これまでの失敗や挫折が心の傷となり、頑張っても無駄だと感じている
- 家庭内不和などにより、明るい人生を想像できない
- 親の厳しいしつけや束縛により、自分で何かしようと思えない
親がその原因や背景を察知できる場合は、できる限り環境を変えていきましょう。
しかし、子ども本人が原因を把握しているとは限りません。
やる気が出ない理由を無理に問いただしても、心の壁は厚くなるばかり。
追求したり登校を強要したりせず、少しでも子どもの不安を取り除けるよう寄り添うのが一番です。
子供の気持ちを理解する努力をする
無気力状態を「この子は甘えているだけ」「怠けている」と親が決めつけてしまうと、状況は良くなりません。
子どもの気持ちを理解することが大切であるため、不登校を認めた上で話を聞く姿勢を持ち続けましょう。
なかなか核心について話してくれることは難しいかもしれません。
こまめにコミュニケーションを取るために、子どもが興味を持っていること、好きなことなど意欲的になれる話をしてみてください。
話をしようとしても「ほっといてほしい」という子どももいます。その場合は深入りせず、時期を待ちましょう。
ただし、放置とは違います。「いつでも話を聞くよ」と伝えることが大切です。そして、好きなことにはどんどんチャレンジさせ、応援し、褒める機会を作ります。
学校に行くことだけをゴールにせず、興味のある分野での小さな成功体験を重ねていけるようにするとよいでしょう。状況が少し好転してきたら、お手伝いを頼んだり役割を与えたりして、家庭内での居場所を感じられるようにします。
自分でできたという自信や自己肯定感が高まると、生活に対する考え方も少しずつ前向きに変わるはずです。
カウンセリングを利用する
家庭内だけで不登校問題を解決するのは限界があります。
学校にスクールカウンセラーがいる場合は、相談してみましょう。学校の外にも心理カウンセラーや不登校の専門機関があります。
いきなりカウンセリングを進めても子どもは乗り気ではないかもしれませんが、頼れるところがあると知っておくだけでも、親の心が軽くなるのではないでしょうか。
学校側とよく話をする
すべての子どもに当てはまるわけではありませんが、先生との関係性が良好になると、無気力状態が緩和されることがあります。
学校生活において、子どもにとっての先生の存在は大きなものです。
積極的に子どもに働きかけてくれる、話を聞いてくれる、興味あることを共有できるなど、「先生がいるから学校に行きたい」と思える環境であれば前向きになれる可能性もあります。
担任を変えるといった対応は難しいですが、保健室登校や別室登校の可能性、子どもが話しやすい先生とのコミュケーションなど、学校との接点をなくさずに前進していく話し合いはできるのではないでしょうか。
通信制高校への転入
高校生の無気力型不登校には、通信制高校への転入という選択肢があります。
毎日登校する必要がないため、不登校の子どもでも無理なく学べる環境です。
通信制高校は不登校の生徒も数多く受け入れており、学校生活や進路について相談できるサポート体制が整った学校が多くあります。
登校が必要なスクーリングは、週に1~5日といった全日制に近いところから、年に1回数日のみという学校までさまざまです。
学校によっては、美容・音楽・芸能・調理・デザインなど専門的な授業を行っているところもあります。
自分の興味がある分野の勉強に取り組むことで、将来についても前向きに考えられるのではないでしょうか。
まとめ
無気力型の不登校は、小学校・中学校・高校を通して最も多い不登校の原因です。
自己肯定感の低さや自信のなさから無気力になってしまうと言われていますが、はっきりした原因が子ども自身にもわからないという特徴があります。
無気力型への対応としては、問い詰めたり、登校を強要しても状況は良くなりません。親は焦ることなく、子どもとのコミュニケーションを大切にしながら、時間をかけて解決策を見つけていきましょう。
高校生は不登校が続くと留年あるいは中退へとつながってしまいます。今の学校へ復帰すること、無理なら辞めること、それだけが道ではありません。
進学も就職もしないという社会からの孤立を防ぐためにも、通信制高校へ転入して自分のペースで高校卒業を目指すという選択肢をおすすめします。
通信制高校の特色はさまざまなので、少しでも興味のある学校があれば、オープンキャンパスなどを利用して、ぜひ実際の雰囲気を体感してみてください。