不登校のお子さんをお持ちの保護者の皆様、新たな教育の選択肢として「不登校特例校」があるのをご存知でしょうか。
この記事では、不登校特例校の概要や特徴、実際に行われている取り組み、さらに全国の不登校特例校一覧について詳しく解説します。不登校特例校は、平成17年7月の学校教育法施行規則改正によって設立され、不登校の児童生徒に特別な教育課程を提供しています。
文部科学大臣指定のこの学校は、「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」と公式に定められています。本記事を通じて、不登校特例校がどのような場所であるかを理解し、お子さんの教育選択肢を広げる一助となれば幸いです。
不登校特例校とは
冒頭でも説明した通り、不登校特例校とは文部科学省により「不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校」と正式に定められています。
(参考:文部科学省「学びの多様化学校」)
わかりやすく言い換えるのであれば、「不登校の児童生徒への特別な配慮がなされている学校」です。ここでの「配慮」とは、授業形式や進路指導などが挙げられますが、詳しくは後ほど解説します。
不登校特例校の概要
不登校特例は、平成17年に、年々増加する不登校の児童生徒に対応すべく設立された制度で、概要は以下のようになっています。
不登校児童生徒の実態に配慮した特別の教育課程を編成して教育を実施する必要があると認められる場合、文部科学大臣が、学校教育法施行規則第56条に基づき(第79条(中学校)、第79条の6(義務教育学校)、第86条(高等学校)、第108条(中等教育学校)において準用)、学校を指定し、特定の学校において教育課程の基準によらずに特別の教育課程を編成して教育を実施することができます。
(参考:文部科学省「不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の概要」)
簡潔にまとめると、「不登校の児童生徒に配慮した教育が必要だと認められた場合、特別な教育課程を編成して教育を実施することができる」といった内容になります。
特例校ができた背景
不登校特例校は、文部科学大臣によって指定された学校というのは先ほど説明しましたが、実際にどのような経緯があったのかを解説します。
最初は、構造改革特区の一環として規制緩和が進められ、東京都八王子市にある高尾山学園で導入されました。これは平成16年のことで、翌年には学校教育法施行規則が改正され、全国的にこの制度が広がりました。
この特例校は、家から一歩を踏み出しにくい不登校の子どもたちが人と関わりを持ち、基礎学力や社会性を身につけられるよう設立されました。これにより、不登校であっても子どもたちが教育を受けることができるようにすることが目的です。国や地方自治体には、これらの特例校の整備を推進する努力義務が課されています。
日本の特例校の数
令和6年5月現在では、日本の不登校特例校は35校あります。
不登校特例校といっても、それぞれの学校に特徴があるため、お子さんの入学を検討している場合は、各特例校の教育課程を比較検討していく必要があります。
特例校の入学条件
不登校の児童生徒に特別な配慮がされている不登校特例校ですが、誰でも入れるわけではなく、入学する条件がいくつかあるため、それを確認しておきましょう。
文部科学省は、不登校特例校の利用対象を以下のように説明しています。
児童生徒について,不登校状態であるか否かは,小学校又は中学校における不登校児童生徒に関する文部科学省の調査で示された年間30日以上の欠席という定義が一つの参考となり得ると考えられるが,その判断は小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校(以下「小学校等」という)又はその管理機関が行うこととし,例えば,断続的な不登校や不登校の傾向が見られる児童生徒も対象となり得るものであること。他方,不登校児童生徒以外の児童生徒については,特別の教育課程の対象にはなり得ないこと。
(参考:文部科学省「不登校児童生徒の実態に配慮して特別に編成された教育課程に基づく教育を行う学校の概要」)
つまり、児童生徒が不登校であるかどうかは、年間30日以上の欠席があるかが基準となるが、実際の判断は学校や管理機関が行うということです。
児童生徒や保護者だけで判断はできないため、検討されている方は現在通っている学校や、地域の教育委員会に問い合わせることから始めてみましょう。
不登校特例校の3つの特徴
それでは実際に、不登校特例校にはどのような特徴があるのかを見ていきましょう。一般的な学校と異なる点を大きく3つに分けて解説します。
生徒数が少ない
1つ目は、生徒数です。一般的な学校と比べて少ない傾向があります。先ほども紹介した、東京都八王子市にある高尾山学園では、以下のような構成になっています。(https://hachioji-school.ed.jp/swas/index.php?id=takao3g&frame=basic_info)
学年 | 学級数 | 男 | 女 | 計 |
小学45年 | 1 | 1(0) | 2(1) | 3(1) |
小学6年 | 1 | 0(0) | 1(0) | 1(0) |
中学1年 | 1 | 6(2) | 6(3) | 12(5) |
中学2年 | 1(2) | 12(0) | 11(2) | 23(2) |
中学3年 | 1(3) | 15(0) | 13(0) | 28(0) |
計 | 5(8) | 34(2) | 33(6) | 67(8) |
一般的な学校の”1クラス”の平均人数が、小学校で26~35人、中学校で26~40人(https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d3f5b079ac58778e9aeed971573d048f6fa16b66)であることを踏まえると、不登校特例校の生徒数がかなり少ないということがお分かりになるかと思います。
生徒数が少ない一方で、教員数が絞られているということはなく、1教員あたりの生徒数が少ないことも特徴です。つまり、児童生徒の1人1人に合ったサポートができるということが最大の特徴になるかと思います。
授業形態がユニーク
2つ目の特徴は授業形態です。授業形態を、指導形態・授業時間・授業内容の3つに細分化して説明します。
指導形態
まずは1つ目の指導形態についてです。不登校特例校では、個別指導や少人数で授業が行われることが一般的です。一般的に不登校特例校では、個別指導や少人数授業が行われます。
生徒一人一人の特性や状況に合わせてカリキュラムが組まれることが多いため、一般的な学校の授業スピードについていけず、不登校になってしまった児童生徒には大きな安心感を与えることができるポイントです。
授業時間
2つ目は授業時間です。一般的な学校では、授業の時間や内容が国や自治体によって決まっていますが、不登校特例校は、自分たちで授業の時間を決めることもできます。基本的には一般的な学校より短い時間で授業を行うことが多く、不登校の生徒など特別な配慮が必要な生徒に合わせたカリキュラムを提供しています。
そのため、通常の学校とは違ったユニークな授業が行われることがあります。(詳しくは次の授業内容で説明します)特例校に入学を考えている場合は、事前にその学校の授業時間や授業内容について調べておくことが大切です。そうすることで、お子さんにとって最適な学校を選ぶことができるでしょう。
授業内容
最後はなんといってもその授業内容のユニークさです。不登校の児童生徒が必要とするさまざまな内容が取り入れられています。以下に、その一例を紹介します。
自然や生命、芸術に触れる体験
- アウトドアやスポーツ:自然の中で過ごす時間や、さまざまなスポーツを楽しむことができます。
- 芸術鑑賞と楽器演奏:美術品を鑑賞したり、楽器を演奏することで芸術的な感受性を育てます。
- ものづくり:手作りの工芸品やアート作品を作ることで、創造力を養うことが可能です。
職業体験と社会科見学
- 農業体験:農業の基本を学び、作物の栽培から収穫までを体験します。
- 工場見学:製造業の現場を訪れ、実際の生産過程を見学することができます。
- パソコン講座:基本的なコンピュータスキルを学び、情報技術の理解を深めます。
ソーシャルスキルトレーニング
- ワークショップ:特定のテーマについて学び、実践的な技術や知識を身につける機会を提供します。
- ディスカッション:生徒同士で話し合いを行うことで、コミュニケーション能力を高めることができます。
これらの体験型授業を通じて、一般の学校では得られないような学びや、興味を引く活動、将来に役立つ経験を提供することが可能です。これにより、生徒は新しいことに挑戦する楽しさを知り、自己成長を促すことができます。
まとめ
お子さんが不登校の場合、保護者の皆さんは多くの悩みや不安を抱えていることでしょう。また、「早く学校に復帰させなければ」という焦りもあるかもしれません。しかし、元の学校への復帰だけが解決策ではありません。不登校の子どもたちに合った教育を提供する特例校も、一つの選択肢です。
特例校では、生徒一人ひとりの学びや生活面でのニーズに応じて、個別に支援を行っています。一部の私立中学校では、高等学校と連携し、進学に向けたサポートを強化しているため、進学に不安を感じる生徒にとって心強い選択肢となり得ます。
不登校特例校の教育現場では、教師やカウンセラー、ソーシャルワーカーが一丸となり、生徒たちが早期に必要な支援を受けられる体制が整えられています。子どもたち一人一人としっかり向き合うことができる環境が整っており、保護者にとっても安心して任せられる場所です。また、こども家庭庁との連携も行われており、より幅広い支援が可能となっています。
インターネット上の情報はまだ少ないものの、不登校特例校についての口コミは大変ポジティブなものが多いです。先生たちの手厚いサポート、生徒が嫌がらずに学校に通っている様子、明確なルールと行事の豊富さなど、多くの親御さんから感謝の声が上がっています。
不登校の子どもたちが増えている現状を鑑みると、今後、国や地方自治体による不登校対策も強化されることが期待されます。これにより、フリースクールなど他の教育の選択肢と比較しながら、最適な学びの場を選ぶことがより容易になるでしょう。
今回の情報が、お子さんの「次の一歩」を踏み出すきっかけとなり、保護者の方々の不安や焦りを和らげる助けとなることを願っています。