近年増加し続けている不登校。クラスに1人以上、不登校の児童生徒がいることも珍しくはありません。
不登校はどの年代でもですが、特に中学校では高校進学にも影響を及ぼすため、早急な対応が望まれます。
この記事では、文部科学省のデータをもとに、どのくらいの子どもたちが不登校状態にあるのかを分析していきます。
数字を通して不登校の実態を知り、子どもにとって最善な対応を見つけるためのヒントにしましょう。
不登校生徒数の推移:文部科学省の統計データ
2021年10月に文部科学省が発表した「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、小学校・中学校での不登校児童生徒数は196,127人で過去最多の人数となりました。
2020年度 | 不登校児童生徒数 |
小学校 | 63,350人 |
中学校 | 132,777人 |
計 | 196,127人 |
2020年度 | 不登校児童生徒数 |
高校 | 43,051人 |
https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
不登校の定義では、年間30日以上の欠席が対象とされているため、なかなか登校できていなくても、厳密には不登校に含まれていない子どもが多くいるはずです。
それを考慮すると、実際の不登校人数は調査結果の数字よりもかなり多いと推測できます。
不登校生徒数は年々増加傾向にある
不登校は今や珍しいことではなく、その数は年々増加傾向にあります。
年度ごとの推移を見てみると、2012年度以降8年連続で不登校児童生徒数が増えているのがわかります。
少子化によって子どもの総数は減少している一方で、不登校の児童生徒数は増加しているため、不登校がいかに増えているか想像できるかと思います。
不登校の子どもに対して登校を強要すると、精神的に追い詰めることとなり、状況を悪化させてしまうという考え方もあります。
そのため、無理に学校に行かせない方が良いとする近年の方針が、不登校数増加の一因となっているのかもしれません。
「子どもが辛い状況を我慢しながら無理に学校へ行かずに、休養に充てられるようになっている」と肯定的に捉えることもできます。
不登校生徒数と割合:文部科学省の統計データ
生徒数に対して不登校が占める割合は、小学校で1.0%、中学校で4.1%、高校で1.4%といずれも大きな数字ではありません。
しかし、前年度と比較すると小中学校においては増加傾向にあるとわかります。
2020年度 | 不登校の割合 | 前年度 |
小学校 | 1.0% | 0.8% |
中学校 | 1.0% | 0.8% |
高校 | 1.4% | 1.6% |
https://www.mext.go.jp/content/20211007-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
中学より高校での割合が減少することに関しては、不登校だった中学生が進学しなかったり、通信制高校など不登校でも学びやすい学校への進学が増えたりしたことが影響しているようです。
小中学校では退学にならないため、学校に在籍したまま不登校が長期化するケースが多いのが特徴です。
一方、高校の場合は、一定期間の不登校が続くと退学につながってしまいます。
そのため、進学も就職もせず長期的な引きこもりとなって社会と分断されることが懸念されます。
学年別の不登校の生徒数
では、不登校の状況を学年別に見ていきましょう。
小学校では学年が上がるにつれて不登校の人数が増加し、特に小6から中1にかけて大きく跳ね上がっています。
中学校で不登校児童生徒が多いのは、小学校からの大きな環境変化によって、人間関係や勉強面での問題に直面することが増えたからだと考えられます。
中1〜中3では増加傾向が続くものの、高校では学年が上がるにつれ不登校生徒数が減少傾向にあります。
背景には、留年や中退によって次の学年へ上がっていないことが一因として挙げられるでしょう。
不登校になったきっかけ
子どもが学校に行きたくない理由は実にさまざまで、いじめや人間関係、学業不振や発達障害など多岐にわたります。
また、言葉でうまく説明できないような些細なきっかけが、いくつも複雑に発展してしまっている場合もあります。
不登校は「学校に行きたくても行けない」と悩む子どもが多い印象かもしれませんが、近年では受験勉強のためや、感染症への不安から集団生活を控えるなど、自らの意思で登校しないという不登校も増えています。
不登校への対応について
登校の強要は、子どもを追い詰めて最悪の場合は自殺へ向かわせてしまう危険性も潜んでいるため、現在では登校を無理強いしない対応が一般的です。
学校への登校だけをゴールにするのではなく、さまざまな学び方を取り入れながら、子どもに合った将来を選択していくことが大切だと意識しておきましょう。
不登校の子どもに必要なのは、我慢して学校へ行くことではなく、不登校でも変わらずに学べる環境があること。
実際に、地域や各学校では不登校に対し、どのような対応が取られているのでしょうか。
そして進学を諦めないためには、どのようなことができるのでしょうか。
スクールカウンセラーの配置
全国の学校にはスクールカウンセラーが配置されており、いじめや不登校をはじめとした、子どもと親が抱えるさまざまな悩みを気軽に相談できる場所となっています。
しかし、どの程度活用されているか、カウンセリングを必要とする子どもにとって十分なサポート体制がとれているかどうかは各自治体によって差がある部分です。
子どもが不登校になってしまったとき、家庭がまず頼るべきは学校ですが、クラス全員を1人で受け持つ担任ができることには限界があります。
その点、スクールカウンセラーは、先生と生徒という関係性から離れた第三者的な立ち位置をとることで、「親や先生に言いにくい悩みでも相談しやすい」という雰囲気を作ることが可能です。
スクールソーシャルワーカーの配置
スクールソーシャルワーカーは、子ども個人と学校や家庭環境とずれが生じることで起きた問題に対し、個人へのサポートだけでなく環境側にも働きかけて調整をおこなっていく立場を指します。
小中学校を中心に徐々に配置されてきており、関係機関と連携を取りながら、子どもの置かれている状況を改善させていくのが役割です。
いじめ、不登校、暴力行為、子どもの貧困、虐待といった問題に対し、福祉の専門家であるスクールソーシャルワーカーの今後の活躍が期待されています。
別室登校の導入
不登校の子どもの中には、クラスという集団には入っていけないものの、保健室や図書室、あるいはカウンセリングルームなどの別室であれば登校が可能な場合があります。
この「別室登校」では、自習や先生との会話、時にはクラスでの授業の内容を教えてもらえることもあり、教室以外の場所に通えるようになることは、不登校からの復帰の大きな一歩となり得ます。
ただし、別室登校を積極的に導入しているかは学校単位で異なるため、希望する際は事前に学校側へ確認が必要です。
通信制高校への転入・進学
通信制高校への進学や転入は選択肢としておすすめです。
不登校の子どもにとってオンラインでの学習が効率的とはいえ、現段階ですべての小中学校、高校でオンライン授業が整っているとは言えません。
自治体あるいは学校単位での差が大きいのが現実です。
そこで既にシステムとしてオンラインと対面とのバランスよい学習が確立されている通信制高校であれば、不登校でも比較的抵抗なくスムーズに高校生活を送ることが可能です。
次のような通信制高校ならではのメリットが、進学・高校卒業への後押しとなってくれるはずです。
- スクーリングが年に数回の学校を選べば、登校はほぼ必要ない
- 学習の遅れを取り戻すための授業・サポートがある
- 集団が苦手な子どもでも不安なく過ごせる
- 自分のペースで単位を取得すれば卒業可能
通信制高校にも学校ごとにさまざまな特性があるため、自分に合ったところを選ぶのが重要です。
興味のある分野や進学についてのモチベーション維持は、将来への明るい希望となることでしょう。
まとめ
少子化が進む近年でも、不登校の数、割合ともに増加傾向というのが学校現場の実態です。
そして、数に含まれない、実質不登校状態の子どもも多くいると考えられます。
学校へ行きたくないと訴えたとき、子どもの環境が大きく変化したとき、どうか焦らず子どもに寄り添う姿勢を心がけましょう。
不登校の原因は子どもの数だけ存在し、いくつもの要因が複雑に絡み合っていることも稀ではありません。
原因究明にこだわるよりも今の話に耳を傾けてあげてください。
親が学生だった頃とは異なり、通信制高校はどんな子でも選択できる魅力的な場所に進化しています。新しい高校選びの選択肢とも言えるでしょう。
学校への復学だけをゴールとせずに、自宅で学習を進められる方法、そして自分のペースで卒業を目指せる進学先も視野に入れてはどうでしょうか。