

みんなはできるのに、自分だけできない…



なんで自分はこんなにダメなんだろう
そんな気持ちになったことはありませんか?
思春期は学校生活や友達関係、SNSなどで比べられる場面が多く、人と比べて落ち込むことは自然なことです。
けれど、その気持ちが強すぎると、毎日がつらく感じてしまうことがあります。
劣等感とは『他人と比べて自分が劣っていると感じる気持ち』です。
コンプレックスのように根深いものではなく、一時的に生まれる感情です。
比べる相手を変えたり、気持ちの持ち方を工夫することで、つらさはやわらぎます。
この記事では、劣等感の意味やコンプレックスとの違い、劣等感が強くなる理由や特徴、感じやすいきっかけ、放置した場合の影響、そして劣等感とうまく付き合うための5つの方法を紹介します。
記事を読むことで「自分だけじゃない」と安心でき、前向きな一歩を踏み出せるはずです。
【この記事でわかること】
劣等感とはどんな気持ちなのか
コンプレックスとの違い
劣等感が強くなる理由と特徴
中高生が劣等感を感じやすい場面
劣等感をやわらげる5つの方法
劣等感とは何?


劣等感とは、『他人と比べて自分が劣っている』と感じる気持ちのことです。
たとえば
テストが返ってきたとき、隣の席の子の点数が自分より高くて「自分ってダメだな…」と思うこと
部活で同級生がレギュラーになったとき、「なんで自分は選ばれないんだろう」と感じること
こうした気持ちが劣等感です。
実は、劣等感は誰もが感じる自然な感情です。
NHKの調査によると、
「自分に満足していない」と答えた中学生は 37.0%、高校生は 41.2%
「自分に自信がない」と答えた中学生は 48.7%、高校生は 55.2%
という結果が出ています。
(NHK放送文化研究所「中学生・高校生の生活と意識調査」)
つまり、あなたが感じている劣等感は、決して『自分だけ』ではないということです。
特に
中高生の時期は、思春期で心が揺れやすく、感情も敏感になりがち
学校では成績や運動能力で順位がつけられる
友人関係では「みんなと同じでいたい」という気持ちが強くなる
SNSでは他の人の輝いている部分が目に入りやすい
比べる機会が多いからこそ、劣等感を感じやすくなるのは、当然のことなのかもしれません。
しかし、『劣等感』そのものが悪いわけではなく、 落ち込むのも自然なことです。
他人との比較が「もっとがんばろう」と思うきっかけになることもあります。
ただし、劣等感が強すぎると心がつらくなることも。



だからこそ、劣等感とどう付き合うかが大切になってきます
次に、劣等感に似た言葉で混同されやすい『コンプレックス』との違いを見てみましょう。
劣等感とコンプレックスの違い
『劣等感』とよく似た言葉に『コンプレックス』があります。
どちらも「自分はダメだ」と感じるネガティブな気持ちですが、実は少し違います。
【劣等感】


劣等感は、『比べることで生まれる感情』です。
比べる対象は大きく分けて2つあります。
① 他人との比較
まわりの人と自分を比べたときに『自分は劣っている』と感じます。
たとえば
「友達よりテストの点が低い」
「あの子は足が速いけど、僕は遅い」
「あの人は歌が上手いのに、私は下手」
②理想の自分との比較
『なりたい自分』と『今の自分』の間にギャップを感じるときも、劣等感は生まれます。
たとえば
「将来はリーダーになりたいのに、人前でうまく話せない」
「モデルみたいにスタイルが良くなりたいのに、全然そうなれない」
「問題をスラスラ解けるようになりたいのに、ミスも多いし応用問題になると手が止まってしまう」
こうした劣等感は一時的な感情であり、誰にでも起こります。



健全な劣等感は「もっと頑張ろう!」という成長のエネルギーになることもあるのです
【コンプレックス】


コンプレックスは、『心の奥にこびりついてしまったネガティブな考え方』です。
たとえば
「話すのが下手だから、友達にどう思われているか不安だ」
「私は太っているから、人に会うのが嫌だ」
「勉強ができないから、将来たいした人間になれない」
このように「自分は○○な人間だから△△できない」と思い込んでしまい、それが原因で行動や考え方が制限されてしまいます。



『劣等感』は一時的な感情ですが、『コンプレックス』は長く心に残り、行動に強い影響を与える状態だと言えます。
劣等感が強くなる4つの理由
劣等感は誰もが感じる自然な感情だとお伝えしました。
でも、なかには劣等感をとても強く感じてしまう人もいます。



どうして自分はこんなに他人と比べてしまうんだろう



なんでこんなちょっとしたことで『自分はダメだ』と思ってしまうんだろう
こんなふうに考えてしまうかもしれません。
実は、劣等感が強くなるのには理由があります。
それは『あなたがダメな人間だから』ではありません。
これまでの環境や経験、性格、そして今の年齢が関係しています。
たとえば
小さいころから、きょうだいや友達とよく比べられてきた
頑張っても褒められることが少なかった
真面目すぎて『失敗=ダメ』と思い込んでしまう
思春期で心と体が不安定になり、周りの目が気になる
このような環境や心の状態が重なることで、劣等感は強まりやすくなります。
ここからは、劣等感が強くなる主な4つの理由を詳しく見ていきましょう。
理由① 幼少期に比較されることが多かったから
小さいころから、きょうだいや友達とよく比べられてきた経験はありませんか?



お兄ちゃんはすぐにできたのに、どうしてあなたはできないの



妹は運動が得意なのに、あなたはドンくさいね
こんな言葉を繰り返し聞いていると、「自分は劣っているんだ」と感じる気持ちが心に少しずつ積み重なっていきます。
本当は、一人ひとりに得意なことや成長のスピードの違いがあるはずです。
でも、誰かと比べられてばかりいると「自分は認めてもらえない」と思い込み、劣等感が強まりやすくなります。


つまり、劣等感の背景には 「小さいころからの経験」 が関係している場合もあるのです。
理由② 褒められる経験が少なかったから
誰だって、頑張ったことを認めてもらえたり、褒めてもらえたりすると「自分は大丈夫なんだ」と思えるものです。
けれど、小さいころからあまり褒められることがなかったり、失敗ばかり注意されたりするとどうでしょうか。
たとえば
テストで80点を取っても「なんで100点じゃないの?」と言われた
一生懸命描いた絵を見せても「まあまあだね」で終わった
部活で一生懸命練習したのに、結果が出ないと「努力が足りない」とだけ言われて終わる
そんな経験が続くと、心の中に



どうせ自分はダメなんだ



頑張っても意味がない
という気持ちが積み重なってしまいます。
本当は、小さな努力や工夫でも「よく頑張ったね」と言ってもらえるだけで、自信は少しずつ育ちます。
でも、認められる経験が少ないと、自分の良いところに気づけず、劣等感が強まりやすくなるのです。


つまり、劣等感の背景には 「小さいころからの経験」 が関係している場合もあるのです。
理由③ 完璧主義で『失敗=ダメ』と思いやすいから
真面目で一生懸命な人ほど、完璧を求めてしまうことがあります。



100点じゃないと意味がない



少しでも間違えたら失敗だ
そんなふうに考えてしまうと、小さな成功や努力を認められなくなってしまいます。
たとえば
テストで90点を取っても「あと10点足りなかった」と落ち込む
部活で少し上達しても「まだまだダメだ」と思ってしまう
こうして『できたこと』よりも『できなかったこと』ばかりに目が向きやすくなります。
このような完璧主義の考え方は、劣等感を強めてしまう大きな要因のひとつです。
本当は、失敗も成長の一部。
うまくいかないことがあるからこそ、次の挑戦につながります。


『失敗=自分はダメ』と思い込んでしまうと、劣等感がどんどん積み重なってしまうのです。
理由④ 心と体のバランスが不安定になる『思春期』だから
中学生や高校生の時期は、心と体が大きく変化する『思春期』のまっただ中です。
この時期はホルモンの影響で感情が揺れやすくなり、ちょっとしたことでも気持ちが大きく動いてしまうことがあります。
たとえば
友達とのちょっとしたすれ違いで「嫌われたかも」と不安になる
クラスで自分だけ違う行動をしたときに「浮いている」と感じてしまう
「みんなと同じでいなきゃ」と思う気持ちも強くなりやすいのが思春期の特徴です。
こうした『心の揺れやすさ』や『周りの目を気にしやすくなる特徴』が、劣等感を強くする原因になることがあります。


つまり、劣等感を強く感じやすいのは『自分が弱いから』ではなく、『思春期という特別な時期だから』と言えます。
劣等感が強い人の特徴
劣等感を強く感じる人には、いくつかの共通する考え方や行動のパターンがあります。
もちろん、すべての人が当てはまるわけではありません。
でも「これ、自分にちょっと似ているかも」と思えることがあるかもしれません。
特徴を知ることは、「自分はダメだから劣等感を持っているんだ」と思い込まないためにも大切です。



こういう傾向があるから、劣等感を感じやすいんだな
と整理できると、少し安心できますよね。
ここからは、劣等感が強い人に見られる主な特徴を3つ紹介します。
他人と比べる癖がある
劣等感が強い人に多いのが、つい周りの人と比べてしまうことです。
テストの点数や成績順位
→自分の点数が悪くなくても、友達より低いと「負けた」と感じて落ち込んでしまう
部活
→仲間と一緒に練習していると、「あの子は上手いのに、自分は全然できていない」と比べてしまう
SNS
→友達の楽しそうな写真や『いいね』の数を見ると、画面の中の“いいところ”と自分の日常を比べてしまう
その結果、「自分はみんなのように充実していない」と感じてモヤモヤし、「自分は劣っている」と思いやすくなるのです。
国立青少年教育振興機構の調査によると、高校生の 29.2%が「SNSで他人に嫉妬することがある」、29.0%が「SNSを見て落ち込むことがある」 と答えています。
(国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター「高校生のSNS の利用に関する調査報告書―日本・米国・中国・韓国の比較―」)
つまり、高校生の約3人に1人が、SNSで自分と他人を比べてネガティブな感情を抱いた経験があると言えます。
もちろん、人と比べるのは自然なことです。


でも、比べることが習慣になると、「自分は劣っている」という思い込みが強くなり、劣等感を抱きやすくなるのです。
短所ばかりに目が行く
劣等感が強い人は、自分の良いところよりも短所ばかりに目が行きやすい傾向があります。
たとえば
テストで90点を取っても『間違えた10点』にばかり気を取られてしまう
友達から「やさしいね」と褒められても、「でも運動は苦手だし…」とすぐに欠点を思い浮かべてしまう
誰にでも長所と短所の両方があります。
でも、短所にばかり注目していると「どうせ自分はダメだ」という思い込みにつながりやすくなります。


大切なのは、短所だけで自分を判断しないこと。
自分の良いところに目を向ける練習を少しずつしていけば、劣等感に振り回されにくくなります。
人の目を気にしすぎる
劣等感が強い人は、周りからどう見られているかを気にしすぎてしまうことがあります。
たとえば
授業中に発表しようとしても「間違えたら笑われるかも」と不安になって声が出ない
友達が褒められているのを見ても「自分は褒められなかったからダメなんだ」と感じてしまい、素直に喜べない
そんなふうに、周りの評価に過敏になって行動が制限されてしまうのです。
国立青少年教育振興機構の調査によると、高校生の65.2%が「他人の意見に影響されやすい」と答えています。
さらに、57.2%が「自分はダメな人間だと思う」と答えており、これは半数を超える高校生が『人からどう見られるか』に大きく影響を受けていることを示しています。
(国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター「高校生のSNS の利用に関する調査報告書―日本・米国・中国・韓国の比較―」)


つまり、人の目を気にしてしまうのは特別なことではなく、同じように感じている高校生が身近にたくさんいるということです。
人の目を気にするのは自然なことですが、必要以上に気にしてしまうと「自分は劣っている」という思い込みにつながり、劣等感を強めてしまうのです。
もし、「人の視線が怖い」と感じるときはこちらを読んでみてください。


中高生が劣等感を感じやすいきっかけ
劣等感は、いつでもどこでも同じように感じるわけではありません。
中高生の生活の中には、『比べられやすい』または『自分と人を比べてしまいやすい』場面がいくつもあります。
たとえば
学校でのテストや部活動、友達との関係、SNSでのやりとり、そして家庭でのきょうだいとの比較
学校や友達との関係
SNSや家庭でのやりとり
これらは、どれも毎日の生活に欠かせません。
だからこそ、その中で人と比べやすく、劣等感を感じやすいのです。
ここからは、中高生が劣等感を感じやすい主なきっかけを3つ紹介していきます。
学校生活で比べられる
学校は毎日通う場所だからこそ、人と比べられる機会がたくさんあります。
たとえば
テストや成績順位
→点数が返ってくると、友達と比べて「自分は頭が悪いのかも」と落ち込んでしまう
授業中
→先生の質問にスラスラ答える子を見て「自分は全然わからない」と感じたり、発表が上手な子と比べて「自分は話すのが下手だ」と落ち込んでしまう
部活動
→同じ練習をしていても上達が早い人や、レギュラーに選ばれる人を見ると「どうして自分は選ばれないんだろう」「自分には才能がない」と感じてしまう
クラスでの立ち位置
→クラスで人気のある子や、文化祭や体育祭で活躍する子と比べて「自分は目立たない」「自分は地味だ」と思ってしまう
このように、学校生活は成績、授業、部活動、人間関係など、あらゆる場面で『比べられる』『比べてしまう』状況が生まれるのです。
友人関係やSNSで比べてしまう
友達との関係やSNSも、劣等感を感じやすいきっかけになります。
友人グループに入れない不安
→仲の良いグループに入れなかったとき、「自分は好かれていないのかも」と不安になる
メッセージのやりとり
→送ったメッセージに反応がないだけで「無視されたのかな」と気持ちが揺れる
SNSの投稿
→友達の楽しそうな写真を見て「自分の生活はつまらない」と感じたり、『いいね』の数を比べて「自分は人気がない」と落ち込んでしまう
友人関係やSNSは楽しい一方で、どうしても『比べるきっかけ』が多い場面です。
仲間に入れなかったり、反応がなくて不安になったり、友達の楽しそうな姿を見て落ち込んだり…。
こうした出来事が積み重なることで、劣等感を強くしやすくなるのです。
家庭できょうだいと比べられる
家庭の中でも、きょうだいや親戚との比較によって劣等感を感じることがあります。
成績の比較
→「お兄ちゃんはもっと良い点を取っていた」「妹の方が成績がいいね」と言われて、『自分はできない子』と感じてしまう
性格や行動の比較
→「お姉ちゃんはしっかりしているのに」「弟の方が素直でいい子」と比べられて、自分の性格を否定されたような気持ちになってしまう
進路や将来の比較
→きょうだいが進学校に合格したり、親の期待する道に進んでいると「自分も同じようにしなければ」とプレッシャーを感じてしまう
親戚からの比較
→お正月や家族の集まりで「いとこは○○高校に合格したんだって」「△△ちゃんは部活で活躍しているらしいね」と言われて、なんとなく肩身が狭いと感じてしまう
家庭は本来安心できる場所ですが、こうした比較が続くと「自分には価値がない」と思い込み、劣等感を強めてしまうことがあります。
劣等感が中高生の心に与える影響
劣等感は誰にでもある自然な感情ですが、強くなりすぎると心や行動にさまざまな影響を与えます。



最近、何をやってもやる気が出ない



友達といても楽しくない



朝起きるのがつらい
もしこんな状態が続いているなら、それは劣等感が心に影響を与えているサインかもしれません。
劣等感を感じるのは自然なことです。
でも、その気持ちをずっと抱え続けたり、「自分はダメだ」という思いが強くなりすぎたりすると、毎日の生活や人間関係に少しずつ悪い影響が出てくることがあるのです。
たとえば
自分の良さが見えなくなり、「どうせ自分はダメだ」と感じてしまう
「どうせできない」と挑戦する気持ちを失ってしまう
人間関係がぎくしゃくしたり、孤立しやすくなる
強いストレスを感じて、心や体に不調があらわれる
このように、劣等感を強く抱え続けると、学校生活や将来への意欲に影響が出ることがあります。
ここからは、劣等感が中高生の心に与える主な4つの影響を順番に見ていきましょう。
自分の良さが見えなくなる
劣等感が強くなると、自分の良さに気づけなくなり、次のような状態に陥りやすくなります。
たとえば
自分を否定する言葉が増える
「どうせ自分なんて」「自分には無理」が口癖になり、何かを始める前から諦めてしまう
褒められても素直に受け取れない
友達や先生から褒められても「お世辞だ」「たまたまだ」と思い、自分の良さを認められない
他人と自分を比べて苦しくなる
SNSを見るたび、友達と会うたびに「みんなはすごいのに自分は…」と落ち込む負のループから抜け出せない
自分の意見が言えなくなる
「こんなこと言ったら笑われる」「自分の考えは間違っている」と思い込み、自分を表現できなくなる
本当は誰にでも良いところや強みがあるのに、劣等感が強くなるとそれが見えなくなり、「自分には価値がない」と感じやすくなるのです。
こうした気持ちは自己嫌悪につながることもあります。
「自分が嫌い」と思い込んでしまうときは、こちらの記事も読んでみてください。


挑戦意欲がなくなる
劣等感が強いと、「どうせ自分にはできない」と思い込み、挑戦する気持ちが弱くなってしまいます。
たとえば
勉強への意欲が下がる
「どうせ勉強してもできるようにならない」と思い込み、テスト勉強も宿題も手につかなくなる。わからない問題があっても、質問する気力もわいてこない
部活や趣味を諦める
「自分には才能がない」と決めつけて、好きだったはずの部活を辞めたり、興味があることにも「自分には向いていない」と手を出さなくなる
進路の選択肢を狭める
「この高校は自分には無理」「大学なんて行けるわけない」と、挑戦する前から可能性を閉じてしまう。本当はやりたい夢があっても「自分にはできない」と諦めてしまう
人間関係で消極的になる
「自分なんかと友達になりたい人はいない」と思い込み、新しい友達を作ることを避けたり、好きな人ができても「自分なんか相手にされない」と何もできなくなる
挑戦をあきらめるクセがつくと、『やればできたかもしれないチャンス』を逃してしまうことがあります。
その積み重ねがさらに劣等感を強めてしまい、悪循環になってしまうのです。
人間関係が悪くなる
劣等感が強いと、人との関わり方にも影響が出てしまいます。
たとえば
人を避けるようになる
「自分なんかといても楽しくないだろう」と思い込み、友達からの誘いを断ったり、休み時間も一人で過ごすようになる。クラスのグループ活動でも「迷惑をかける」と思って積極的に参加できなくなる
素直になれない
友達の成功を「おめでとう」と言えなかったり、心の中で「ずるい」「自分だけいい思いをして」と嫉妬してしまう。その結果、友達との間に壁ができてしまう
攻撃的になってしまう
劣等感を隠すために、他の人の欠点を指摘したり、悪口を言ったりしてしまう。「あの子も○○ができない」と他人を下げることで、自分を保とうとしてしまう
自慢や嘘で自分を大きく見せる
本当の自分に自信がないため、話を大げさにしたり、実際よりもできるふうに見せてしまう。でも、そんなふうに背伸びを続けていると、「本当の自分じゃない」と感じて苦しくなってしまうことがある
このように、人間関係の中で劣等感が強く働くと、友達との距離が広がったり、関係がぎくしゃくしてしまうことがあります。
心や体にストレスがかかる
劣等感を強く抱えたままでいると、心や体にさまざまな不調が出てくることがあります。
たとえば
心の不調
不安や緊張が強くなり、いつもソワソワして落ち着かない。ちょっとしたことでイライラしたり、急に悲しくなって涙が出たりする。何をしても楽しくない、やる気が出ない状態が続く
体の不調
夜なかなか眠れなかったり、朝起きられなくなる。頭痛や腹痛が頻繁に起こる。食欲がなくなったり、逆に食べすぎてしまう。疲れやすく、いつもだるい感じがする
学校に行くのがつらくなる
朝になると体調が悪くなり、学校を休みがちになる。教室に入ると息苦しくなったりする。ひどくなると、不登校につながることもある
集中力が続かない
授業中ぼーっとしてしまったり、勉強しても頭に入らない。好きだったゲームや趣味にも集中できなくなる
こうした心や体の症状は、心が「もう限界だよ」とSOSを出しているサインだと言えます。
無理をせず、信頼できる人に相談したり、環境を整えるようにしましょう。
劣等感は『悪者』じゃない?成長のサインでもある
劣等感を感じると、すごくつらい気持ちになりますよね。
まるで劣等感が、自分をいじめる『悪者』みたいに思えるかもしれません。
でも、ちょっとだけ見方を変えると、心のどこかに「こうなりたい!」という理想の自分がいる証拠なんです。
テストで友達に負けて悔しい
→「もっと良い点をとりたい」と思っているから
部活で上手な人を見て落ち込む
→「自分もあんな風に活躍したい」と願っているから
SNSで楽しそうな投稿を見てモヤモヤする
→「自分ももっと毎日を楽しみたい」という気持ちがあるから



この『理想』と『今』のギャップが、劣等感の正体ということもあります
心理学者のアルフレッド・アドラーも、劣等感は「理想の自分」と「今の自分」の間にギャップを感じたときに生まれる感覚だと述べています。
そして、劣等感があるからこそ「もっと成長したい」と思い、新しいことに挑戦したり、人の役に立つことをしたりといった行動につながる―つまり「前に進むエネルギー」になると考えています。
(参考:向後 千春「幸せな劣等感~アドラー心理学〈実践編〉~」小学館新書)
だから、劣等感でつらくなったら、こう考えてみてください。



自分は今、成長したがっているのかも
その悔しさや焦りは、あなたが次の一歩を踏み出すための、エネルギーになるかもしれません。
劣等感をやわらげるための5つの対処法
劣等感はなくそうとしても、完全に消えるものではありません。


大切なのは『感じないようにすること』ではなく、『劣等感とどう付き合うか』です。
ここでは、中高生でも今日から試せるシンプルな方法を5つ紹介します。
ただし、全部を一度にやる必要はありません。
「これならできそう」と思ったものから、少しずつ取り入れてみてください。
また、『気持ちを切り替える』小さな工夫から始めるのもおすすめです。
具体的なヒントはこちらにまとめています。


① 比べる相手を『他人』ではなく『昨日の自分』にする
劣等感を強める大きな原因のひとつは、他人と自分を比べることです。
テストの点数やSNSの『いいね』の数など、他人と比べ始めるとキリがありません。
そこで大切なのは、比べる相手を『他人』から『昨日の自分』に変えることです。
たとえば
勉強の場合
「クラスで何位か」ではなく、「先月より5点上がった」「昨日解けなかった問題が今日は解けた」という自分の成長に目を向ける
部活の場合
「あの子より下手」ではなく、「先週より早く走れるようになった」「1か月前にはできなかった技ができた」という自分の進歩を見つける
日常生活の場合
「朝、自分から挨拶できた」「今日は宿題を忘れなかった」など、小さな『できた』を積み重ねる
こうした小さな変化に気づけると、『前に進めている』という実感が持てるようになります。



大切なのは、自分のペースで、一歩ずつ前に進んでいくこと
比べ方を変えるだけで、落ち込む原因だった劣等感を小さな成長に変えていけるのです
できたこと日記をつける
どんなに小さなことでもいいから、今日できたことを3つ書き出してみるのもおすすめです。
朝、時間通りに起きられた
授業で一度手を挙げられた
友達にありがとうと言えた
昨日よりも一回だけ多く腕立て伏せした
など、自分の『できた』を可視化することで、少しずつ自信が育っていきます。
② 自分の『得意』や『好きなこと』を見つけてみる
劣等感が強いと『自分には何もない』と思いがちですが、誰にでも必ず『得意』や『好き』があります。
それを見つけて大切にすることで、自信を取り戻せるようになります。
『得意』は、成績や運動だけではありません。
たとえば
小さな得意を見つける
『人の話を聞くのが上手』『片付けが得意』『動物となかよくなれる』『ゲームの攻略法を見つけるのが早い』など、日常の中にある自分の強みを探してみる
好きなことに注目する
『音楽を聴くのが好き』『絵を描くのが楽しい』『料理が好き』『マンガに詳しい』など、好きなことは立派な個性。好きなことに時間を使うと、自然と心が元気になる
人から言われたことを思い出す
「優しいね」「面白いね」「センスがいいね」など、今まで人から言われた褒め言葉を思い出してみる。自分では気づかない良さを、他の人は見つけてくれているかもしれない
新しいことに挑戦してみる
今まで興味があったけどやってこなかったことに挑戦してみる。意外な才能や、新しい『好き』が見つかることもある
学校の勉強や部活だけが『価値あるもの』ではありません。
あなたにとっては普通のことでも、他の人から見れば『すごい!』と思われることがあります。



大切なのは、他人と比べるのではなく、自分の『得意』や『好き』を大切にすること
それを伸ばしていくことで、「自分にもできることがある」という感覚が育ち、劣等感に振り回されなくなっていきます。
③ 信頼できる人に気持ちを話してみる
劣等感を一人で抱え込んでいると、どんどん苦しくなってしまいます。
信頼できる人に話すだけで、心がスッと軽くなることがあります。
話を聞いてもらえる人は、たとえばこんな人たちです。
家族
親に話しづらければ、兄弟姉妹や祖父母、親戚でもOK。「最近、学校でちょっと悩んでて…」と切り出してみる。
学校の先生
担任の先生だけでなく、保健室の先生、部活の顧問、話しやすい教科の先生など。先生は多くの生徒を見てきているので、あなたの悩みを理解してくれるはず。
スクールカウンセラー
悩みを聞くプロ。秘密は守ってくれるし、否定せずに話を聞いてもらえる。
友達
同じように悩んでいる友達がいるかも。「実は自分も…」と共感してもらえる場合もある。ただし、相手も悩んでいそうなときは無理に話さないように。
完璧に説明しなくていい
「なんかモヤモヤする」「最近つらい」という感じでOK。話しているうちに、自分の気持ちが整理されていきます
泣いてもいい
感情があふれて泣いてしまっても大丈夫。むしろ、泣くことで心がスッキリすることもあります



話すことで「自分だけじゃないんだ」「そんな見方もあるんだ」という発見があります
アドバイスをもらえなくても、「聞いてもらえた」「わかってもらえた」という安心感が、劣等感をやわらげてくれるのです。
④ SNSとの付き合い方を工夫する
SNSは楽しいものですが、他人と比べて落ち込む原因にもなりやすいもの。
だからこそ、SNSとの付き合い方を工夫することが大切です。
無理なくできる工夫を試してみましょう。
利用時間を決める
『寝る前の1時間はSNSを見ない』『1日30分まで』など、自分でルールを作る。スマホの設定で利用時間を制限することもできる
見て落ち込む投稿からは距離を置く
いつも比べて落ち込んでしまうアカウントは、ミュートやフォロー解除をしてもOK。『見ない』という選択も、自分を守る大切な方法
『いいね』の数を気にしない工夫
投稿したらすぐにアプリを閉じる。通知をオフにする。『いいね』の数を非表示にする設定を使うのも効果的
SNSの『裏側』を想像する
キラキラした投稿の裏には、見せていない日常があるはず。「この写真、何枚も撮り直したんだろうな」「楽しそうだけど、準備は大変だったかも」と想像してみる
SNS以外の時間を充実させる
本を読む、運動する、趣味に打ち込むなど、SNS以外の楽しみを見つける。リアルな体験の方が、心に残る思い出になる
“SNS断ち”をしてみる
思い切って1日、1週間など期間を決めてSNSを見ない日を作る。最初は不安かもしれませんが、意外と平気だと気づくはず



SNSを人と比べる道具にするのではなく、自分にとって心地よい使い方を意識することが大切です
『SNSに振り回されない』『自分のペースを大切にする』ことを意識して、上手に付き合っていきましょう。
⑤ 思い切って環境を変えてみる
どうしても劣等感が強くなり、毎日がつらいと感じるときは、環境を変えてみるのも一つの方法です。
環境を変えることは『逃げ』ではありません。
『自分を大切にする』ための前向きな選択です。
部活を変える・辞める
部活で比較されることがつらいなら、別の部活に移ったり、部活以外の活動を見つけるのもあり。「3年間続けなきゃ」という決まりはない
クラスや学校を変える
高校生の場合、今の学校がどうしても合わないなら、転校という選択肢もある。通信制高校やフリースクール、定時制高校など、学び方は一つではない
新しい居場所を見つける
学校以外の居場所を探してみる。習い事、ボランティア、地域のサークルなど。学校とは違う人間関係の中で、新しい自分を発見できるかもしれない
席替えや班替えをお願いする
小さな変化でも効果がある。席を変えてもらう、グループ活動の班を変えてもらうなど、先生に相談してみる価値はある
つらい場所から少し距離を置く
完全に環境を変えなくても、一時的に距離を置くだけでも楽になることがある。保健室登校、別室登校など、自分のペースで学校と関わる方法もある
学校生活では、「同じ場所でがんばらなければならない」と思い込みがちですが、実は多くの選択肢があります。
転校や別の居場所を見つけることで、「ここなら自分らしくいられる」と感じられることもあるのです。
無理を続けて心や体を壊してしまうよりも、環境を変える勇気を持つことが、あなたにとって一番の力になるかもしれません。
もし「人と関わること自体がつらい」と感じるときは、こちらをご覧ください。


Q&A|劣等感についてよくある質問
- 劣等感は誰にでもありますか?
-
はい、劣等感は誰にでもあります。
テストの点数、運動の得意・不得意、見た目や性格など、人は日常の中で自然に『比べる場面』に出会います。NHKの調査によると、「自分に自信がない」と答えた中学生は48.7%、高校生は55.2% でした。
(NHK放送文化研究所「中学生・高校生の生活と意識調査」)
つまり、中高生の半分近くが「自分は人より劣っている」と感じた経験を持っているのです。劣等感は特別な人だけが抱えるものではありません。
むしろ、『誰にでもある自然な気持ち』だからこそ、上手に付き合っていくことが大切なのです。 - 劣等感とコンプレックスはどう違いますか?
-
劣等感は一時的に「自分は劣っている」と感じる気持ち、コンプレックスはその思い込みが長く残り、行動を制限してしまう状態を指します。
劣等感 → 「今回のテスト、友達より点数が低かった」(一時的)
コンプレックス → 「自分は頭が悪い人間だ」(ずっと続く思い込み)劣等感とコンプレックスの違いはこちらで詳しく説明しています。
劣等感とコンプレックスの違い - 劣等感を感じるのはよくないことですか?
-
いいえ、劣等感を感じること自体は悪いことではありません。
「もっと成長したい」「今の自分を変えたい」という気持ちの裏側にある自然な感情だからです。ただし、劣等感が強すぎて「どうせ自分はダメだ」と思い込み続けると、行動できなくなったり心がつらくなることがあります。
大切なのは劣等感を否定するのではなく、前向きなエネルギーに変えていくことです。そのためのヒントはこちらで紹介しています。
劣等感をやわらげるための5つの対処法 - 「他人と比べるな」と言われても、どうしても比べてしまいます
-
人と自分を比べてしまうのは、自然なことです。
特に思春期は『周りからどう見られているか』が気になりやすく、比べる気持ちが強くなるのは当たり前です。大切なのは『比べることをゼロにする』のではなく、比べ方を工夫すること。
たとえば、他人ではなく『昨日の自分』と比べると、小さな成長に気づけて前向きになれます。具体的な工夫はこちらで紹介しています。
劣等感をやわらげるための5つの対処法 - 劣等感を克服する方法はありますか?
-
完全になくすことは難しいですが、劣等感とうまく付き合う方法はあります。
比べる相手を『他人』ではなく『昨日の自分』にする
自分の得意や好きなことを見つける
信頼できる人に気持ちを話す
SNSとの付き合い方を工夫する
思い切って環境を変えるこうした工夫を少しずつ取り入れることで、『劣等感に振り回される自分』から『劣等感を前向きに活かせる自分』へ近づいていけます。
詳しい方法はこちらで紹介しています。
劣等感をやわらげるための5つの対処法 - 劣等感がつらいときは誰に相談すればいいですか?
-
一人で抱え込むより、信頼できる人に話すことが大切です。
家族や身近な大人
親や兄弟姉妹、祖父母など。話しやすい人を選べばOKです。学校の先生やスクールカウンセラー
担任の先生、保健室の先生、カウンセラーは生徒の相談に慣れていて秘密も守ってくれます。友達
同じように悩んでいる仲間がいるかもしれません。「わかる」と共感してもらえるだけで気持ちが軽くなることもあります。もし「とてもつらい」「誰にも話せない」と感じるときは、電話やチャットで相談できる外部窓口もあります。
子ども家庭庁|子どもの相談窓口一覧
まとめ|劣等感と上手に付き合っていこう
劣等感は誰にでもある自然な感情です。
中高生の時期は特に『比べられる場面』が多く、強く感じやすいものですが、それは決して『弱さ』ではありません。
この記事で紹介したように
劣等感には理由や特徴がある
学校・友人関係・SNS・家庭など、きっかけもさまざま
強すぎると心や体に影響することがある
でも、和らげるための具体的な方法がある
と整理して考えることで、「自分だけじゃない」と安心できるはずです。
大切なのは「劣等感をなくす」ことではなく、自分らしく生きるためにうまく付き合うこと。
今日からできる小さな工夫を一つでも試してみれば、それが前向きな一歩になります。
もし「どうしてもつらい」と感じたら、一人で抱え込まず、信頼できる人や相談窓口を頼ってくださいね。
あなたの価値は、誰かと比べて決まるものではありません。
この記事が、あなたが自分だけの『ものさし』を見つけ、自分らしさを大切にするきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
【ID学園】自分らしさを見つけられる『夢活』
劣等感が強いと「どうせ自分にはできない」「夢なんて持てない」と感じてしまうことがあります。
でも、いきなり「夢を持とう」と言われても難しいですよね。
大切なのは、まず“自分らしさ”を見つけることです。
ID学園では、生徒一人ひとりが自分の可能性を見つけられるように、ID型オリジナル探究活動『夢活(ゆめかつ)』を行っています。
【STEP1】自分らしさを知る
【STEP2】夢を見つける
【STEP3】夢を育てる
【STEP4】夢のキャリアを積む
STEP1の『自分らしさを知る』では、先生との1対1の面談を通じて、“好き・得意”を一緒に探していきます。
劣等感で自信を失っている中高生にとって、『比べられる』のではなく『認めてもらえる』経験になるのが大きな特徴です。
自分の強みを発見できたという経験は、「自分にもできることがある」「夢に向かって進んでみよう」という前向きな気持ちにつながります。その気持ちをベースに、自分の好きなことや得意なことをテーマに探究活動を進めることで、他人との比較ではなく自分自身と向き合う時間が増え、自己肯定感を養うことができます。
劣等感を抱えやすい時期だからこそ、自分らしさを大切にできる学びの場は大きな支えになります。










